建築設計の職務経歴書は「プロジェクト経歴」で差をつける。採用されるフォーマットと書き方の鉄則
建築設計職(意匠・構造・設備)の転職活動において、職務経歴書はポートフォリオ(作品集)と同じくらい重要な役割を果たします。ポートフォリオが「デザインセンスや表現力」を伝えるものであるのに対し、職務経歴書は「実務能力、プロジェクトの規模感、マネジメント能力」を客観的に証明する書類だからです。
一般的なビジネス職向けのフォーマットをそのまま使うと、設計者としての実力が正しく伝わらない恐れがあります。ここでは、建築設計職の実力を最大限にアピールするためのフォーマット選びと、採用担当者が重視する記載項目について解説します。
建築設計に最適なのは「キャリア式(プロジェクト形式)」
建築設計の職務経歴書では、単に時系列で在籍企業を並べるだけの「編年体式」は不向きです。設計者のスキルは、どのような会社にいたかよりも、「どのような建物を、どのフェーズまで担当したか」によって判断されるからです。
そのため、携わった案件ごとに詳細を記載できる**「キャリア式(プロジェクト形式)」**のフォーマットを選ぶのが鉄則です。具体的には、職務経歴書のメイン部分を「主な担当プロジェクト一覧」として表形式にし、そこに物件ごとのスペックや役割を落とし込んでいくスタイルが最も評価されやすくなります。
採用担当者が必ずチェックする5つの必須項目
設計事務所やゼネコン、ハウスメーカーの採用担当者は、即戦力かどうかを判断するために、以下の5つの情報を必ずチェックします。これらが曖昧だとスキルの判定ができず、書類選考で弾かれるリスクが高まります。
1. 建物用途と工事種別
「共同住宅」「オフィスビル」「商業施設」「個人住宅」「公共施設(学校・図書館など)」といった用途を明記します。また、新築か、改修(リノベーション)・増築かも記載します。
2. 構造・規模・階数
建物のスペックは、設計難易度を示す重要な指標です。
- 構造:RC造、S造、SRC造、木造(在来・2×4)、CLTなど
- 規模:延床面積(㎡)、敷地面積(㎡)、総戸数
- 階数:地上〇階・地下〇階
3. 具体的な担当フェーズ
「設計担当」とひとくくりにするのではなく、どの工程をメインで担当したかを細分化します。
- 企画・ボリューム検討
- 基本設計
- 実施設計(確認申請業務含む)
- 詳細設計(施工図チェック含む)
- 工事監理(現場対応)
- アフターフォロー
4. 使用ツール(CAD・BIM・レンダリング)
そのプロジェクトで使用したソフトウェアを記載します。「AutoCAD」「Vectorworks」「Jw_cad」といった2次元CADだけでなく、「Revit」「ArchiCAD」などのBIMソフト、「Rhinoceros」「SketchUp」などのモデリングソフト、「Lumion」「Twinmotion」などのレンダリングソフトの使用経験は、現在の転職市場において強力なアピール材料になります。
5. 役割とチーム体制
「チーフアーキテクト(主担当)」として全体を統括したのか、「メンバー」として部分的な図面作成を担当したのかを明確にします。また、社内メンバー数や協力事務所との連携有無についても触れることで、コミュニケーション能力やマネジメント経験を伝えることができます。
ポートフォリオとの連携を意識する
建築設計職の選考では、職務経歴書とポートフォリオはセットで評価されます。職務経歴書の各プロジェクト欄に「※詳細はポートフォリオP.〇〇参照」と記載しておくと、採用担当者はスペック(文字情報)とデザイン(視覚情報)をリンクさせて理解することができ、非常に親切です。
また、Webポートフォリオを持っている場合は、職務経歴書のヘッダー部分や氏名の近くにURLとパスワードを記載し、クリック一つで作品を見に行けるように設定しておくのが基本マナーです。
資格欄で「即戦力」を証明する
建築業界において資格は実力の証明書です。以下の資格は必ず正式名称で記載してください。
- 一級建築士・二級建築士・木造建築士(登録番号まで書くと丁寧です)
- 建築設備士
- 構造設計一級建築士・設備設計一級建築士
- インテリアプランナー・インテリアコーディネーター
現在資格取得に向けて勉強中の場合でも、「一級建築士 学科試験合格(製図試験 20xx年受験予定)」と記載することで、知識レベルと向上心をアピールできます。
自己PRで伝えるべき「設計者としてのスタンス」
フォーマットの最後にある自己PR欄では、図面だけでは伝わらない「仕事への姿勢」を記述します。
- クライアントとの対話力施主の要望をどのように引き出し、それをどう設計に反映させたかというプロセス。
- コスト・工程管理能力デザインだけでなく、予算内・工期内に収めるために行った調整や工夫(VE/CD提案など)。
- 法適合と行政協議複雑な法規制や条例をクリアするために、行政とどのように協議を進めたかという実務処理能力。
まとめ:Wordで作成しPDFで提出する
建築設計の職務経歴書は、Wordで作成するのが一般的です。レイアウトの自由度が高く、文章で補足説明を入れるのにも適しているからです。ただし、画像や表を多用してファイルが重くならないよう注意してください。
完成後は必ずPDF形式に変換して提出します。CADソフトがインストールされていないPCでも閲覧でき、レイアウト崩れを防ぐためです。建築設計のプロとして、「相手にとっての見やすさ」を追求した図面を描くように、職務経歴書も「読み手への配慮」が行き届いたフォーマットで作成してください。





