履歴書の「ブランク(空白期間)」。主婦(主夫)の経験を強みに変える書き方
転職(中途採用)と、主婦(主夫)のブランク(空白期間)
転職活動で履歴書を作成する際、出産、育児、介護、あるいは家事専念(せんねん)といった理由で、職歴に「ブランク(空白期間)」があることを不安に思う主婦(主夫)の方は少なくありません。
「ブランクがあると、それだけで書類選考に落ちるのではないか」
「『何もしていなかった』と見なされ、不利になるのでは」
こうした不安は当然のことです。しかし、採用担当者が履歴書で最も懸念(けねん)するのは、ブランクが「ある」ことそのものではなく、そのブランクが**「説明されていない(=何をしていたか分からない)」**ことです。
ここでは、主婦(主夫)の方が持つブランク期間を、採用担当者に「空白」ではなく「価値ある経験」として正しく伝えるための、履歴書の書き方を詳しく解説します。
【NG】絶対にやってはいけない「ブランク」の書き方
まず、最もマイナスの印象を与えてしまう、NGな書き方を知っておく必要があります。
NG1:「空欄」のまま提出する
これが最もやってはいけないNG例です。
例えば、「2019年にA社を退社」し、次の職歴が「2025年」であった場合、その5年間の「空欄」を採用担当者は絶対に見逃しません。
「この期間、何をしていたのだろうか?」「働く意欲がなかったのでは?」といった、ネガティブな憶測(おくそく)を呼んでしまいます。
NG2:職歴を隠す・在籍期間を偽る
ブランクを隠すために、前職の在籍期間を実際よりも長く書いたり、短期間の職歴を意図的に書かなかったりする行為は、**「経歴詐称(けいれきさしょう)」**にあたります。
入社手続き(雇用保険の履歴確認など)で必ず発覚するため、信頼を完全に失う、最も重いNG行為です。
ブランク(空白期間)の「正しい」書き方
ブランク期間は、隠すのではなく、「なぜ、その期間があったのか」を**「誠実」かつ「前向き」に説明する**ことが鉄則です。
1. 「職歴」欄への書き方(ブランクの説明)
ブランクの理由は、職歴欄に、時系列に沿って「事実」を記載するのが最も分かりやすいです。
「入社」や「退社」ではないため、以下のような言葉を使います。
【書き方 例文1:出産・育児の場合】
(前職の退職理由の次の行に)
2019年 4月 出産・育児のため、〇年間休職しておりました。
(現在は子育ても一段落し、週〇日、〇時までの勤務が可能です)
【書き方 例文2:家事専念の場合】
2020年 5月 家事(または、家族の介護)に専念しておりました。
(現在は(状況)、業務に支障はありません)
2. 「本人希望欄」への書き方(補足)
職歴欄に書ききれない場合は、「本人希望欄」や「特記事項」欄を活用して補足するのも有効な方法です。
【本人希望欄 例文】
「2019年4月より出産・育児のため休職しておりましたが、現在は子どもの保育園入園も決まり、業務に支障なく勤務可能です。週〇日(〇時〜〇時)の勤務を希望します。」
【最重要】ブランクを「強み」に変えるアピール術
採用担当者に「ブランクがあっても、この人を採用したい」と思わせる鍵は、主婦(主夫)としての経験を「ビジネススキル」に「翻訳」してアピールすることです。
家事や育児は、無給ですが「仕事」です。その経験は、履歴書の**「自己PR」欄**で強力な武器となります。
主婦(主夫)経験から得られる「強み」一覧
- マルチタスク能力・段取り力→ (翻訳):「掃除」「洗濯」「料理」「育児」「買い出し」といった複数のタスクを、毎日、同時並行で効率よくこなしてきた「計画性」と「段取り力」。
- 予算管理能力(コスト意識)→ (翻訳):限られた「家計(予算)」の中で、食費や光熱費をやりくりしてきた「コスト管理意識」。
- 課題解決能力・柔軟な対応力→ (翻訳):子どもの急な発熱、予期せぬトラブル(例:家電の故障)など、マニュアルのない問題に「臨機応変に対応」してきた「課題解決能力」。
- 調整力・コミュニケーション能力→ (翻訳):家族間のスケジュール調整、保育園や学校の先生との連携、地域のコミュニティ(PTAなど)での「調整力」。
履歴書「自己PR」欄での書き方(例文)
例文1:(事務職・バックオフィス 応募)
「私の強みは、高い『タスク管理能力』と『計画性』です。
〇年間の主婦(主夫)業では、家事・育児・家計管理といった複数のタスクを、常に優先順位をつけ、効率的にこなす『段取り力』を磨いてきました。
貴社の〇〇(事務・管理)業務においても、この『計画性』と『正確性』を活かし、チームをサポートできると確信しております。」
例文2:(接客・販売職 応募)
「私の強みは『柔軟な対応力』と『調整力』です。
育児中は、子どもの急な体調不良や、マニュアル通りにいかない状況の連続でした。その中で、常に冷静に状況を判断し、対応する『柔軟性』が身につきました。
また、PTA活動では、多様な意見を持つ保護者間の『調整役』も経験しました。
貴社の〇〇(接客・販売)業務においても、この『対応力』を活かし、お客様やチームの状況に合わせた貢献ができると考えます。」
結論。「ブランク」を恐れず、「経験」として語ろう
転職(中途採用)において、主婦(主夫)であった「ブランク(空白期間)」は、決してマイナスではありません。
採用担当者が不安に思うのは「空白」そのものではなく、「何をしていたか分からない」という「不透明さ」です。
履歴書には、「育児」や「家事」といったブランクの理由を「誠実」に記載すること。
そして、その期間に培(つちか)った「マルチタスク能力」や「調整力」を、自信を持って「ビジネススキル」としてアピールすること。
その「誠実さ」と「前向きな姿勢」が、採用担当者からの信頼を得るための鍵となります。





