履歴書の「自己紹介」欄。転職(中途採用)で響く書き方と自己PRとの違い
転職活動(中途採用)で履歴書を作成する際、応募者の人柄や熱意を伝える項目として「自己PR」欄などがあります。しかし、人によっては「自己紹介(じこしょうかい)」の欄とどう違うのか、あるいは「自己紹介」として何を書けばよいのか、悩むことがあります。
まず、日本の一般的な履歴書フォーマット(様式)には、「自己紹介」という専門の欄は、設けられていないことがほとんどです。採用担当者が履歴書で確認したいのは、面接の冒頭で聞くような「概要(サマリー)」としての自己紹介ではなく、あなたの「強み」や「貢献できること」を示す**「自己PR」**です。
ここでは、応募者が「自己紹介」と混同しがちな「自己PR」欄について、転職(中途採用)で採用担当者に響く正しい書き方を詳しく解説します。
1. 履歴書における「自己紹介」と「自己PR」の違い
この二つの言葉は、転職活動において明確に役割が異なります。
- 自己紹介(じこしょうかい)主に**面接(話し言葉)**で使われます。(例:「1分間で自己紹介をお願いします」)これは、あなたが「誰であるか(何者か)」を簡潔に伝えるための「概要(サマリー)」です。(例:「〇〇と申します。現職では〇〇をしています。本日はよろしくお願いいたします。」)
- 自己PR(じこピーアール)主に**履歴書(書き言葉)**で使われます。これは、あなたが「なぜ採用されるべきか」をアピールするための「プレゼンテーション」です。「あなたの強みは何か」「それをどう仕事で活かしてきたか」「入社後にどう貢献できるか」を、論理的に記載する場所です。
つまり、履歴書作成で悩む「自己紹介」とは、多くの場合**「自己PR」**のことなのです。
2. 転職(中途採用)で採用担当者が見ている「強み」
新卒の就職活動とは異なり、中途採用の採用担当者は、あなたの「人柄」や「熱意」だけでなく、「これまでの経験に裏付けされた、入社後に再現性のある強み(スキル)」を厳しくチェックしています。
NGな自己PR(抽象的)
- 「私の強みは、コミュニケーション能力です。」(→ 「どのレベルで?」「どう仕事に活きるの?」が全く伝わりません)
- 「長所は忍耐力です。何事も最後まで頑張ります。」(→ 「頑張る」のは当たり前であり、具体的な強みではありません)
- 「リーダーシップがあります。」(→ 役職がなければ、信憑性(しんぴょうせい)がありません)
OKな自己PR(「強み」を「ビジネススキル」に翻訳する)
ご自身の「特徴」を、仕事でどう活かせるかという「ビジネススキル」に「翻訳」することが重要です。
- (例)特徴:「心配性だ」→ (翻訳) → 「ミスを防ぐため、計画的に準備し確認を怠らない正確性がある」
- (例)特徴:「気が利く」→ (翻訳) → 「周囲の状況を先読みし、サポートできる協調性・調整力がある」
3. 履歴書と「職務経歴書」。自己PRの役割分担
転職(中途採用)の応募者が、履歴書の自己PR欄で悩むもう一つの理由が、「職務経歴書」との書き分けです。この「役割分担」を理解することが、書類選考を通過する鍵となります。
- 履歴書の「自己PR」欄→ スペースが限られています。ここには、あなたの強みの**「見出し」であり「要約(結論)」**を記載します。(目安:200〜300文字程度)
- 職務経歴書(しょくむけいれきしょ)→ こちらが「本番」です。履歴書で示した「強み(結論)」が、いかに本物であるかを**「具体的なエピソード」や「実績(数字)」**で裏付けし、詳細にアピールします。
履歴書の自己PRは、採用担当者に「お、この人の経験をもっと詳しく知りたい」と思わせ、職務経歴書へと誘導する**「フック(掴み)」**の役割を担っているのです。
4. 採用担当者に響く「自己PR」の構成(3ステップ)
履歴書の限られたスペースで、あなたの強みを論理的に伝えるには、以下の3つの要素で構成するのが鉄則です。
- 【結論】あなたの「強み」「私の強みは〇〇です。」と、アピールしたい「強み(ビジネススキル)」を断定的に述べます。
- 【根拠】強みを裏付ける「簡潔なエピソード(実績)」その強みが、前職(現職)で「どのように発揮されたか」を、簡潔なエピソード(可能であれば数字)で示します。
- 【貢献】入社後の「活かし方」その強みを、応募先企業で「どう活かして貢献できるか」という未来への意欲で締めくくります。
5. 履歴書「自己PR」欄の書き方(例文)
上記の3ステップ構成に基づいた、具体的な「例文」を紹介します。
例文1:(営業職・企画職 応募)「課題解決力」をアピール
私の強みは「課題解決力」です。現職の営業活動では、単に商品を売るのではなく、顧客の潜在的な課題をヒアリングすることを徹底しました。その結果、顧客のニーズに即した〇〇(商品・企画)を提案し、担当エリアの売上を前年比120%に引き上げることに貢献しました。この「課題を発見し、解決する力」は、貴社の〇〇業務においても必ず活かせると確信しております。
例文2:(事務職・管理部門 応募)「正確性・効率化」をアピール
私の強みは「業務の正確性」と「効率化への意識」です。前職の営業事務では、月間〇〇件の受発注管理を担当し、ダブルチェックの徹底で3年間ミスゼロを継続しました。また、Excelの関数(VLOOKUPなど)を活用した管理表を独自に作成し、従来の入力作業時間を月間〇時間削減しました。この正確性と改善意識を活かし、貴社の業務をサポートします。
例文3:(未経験職種 応募)「学習意欲・順応性」をアピール
〇〇(応募職種)は未経験ですが、私の強みは「目標達成に向けた学習意欲」です。貴社の業務に活かせると考え、独学で〇〇(資格名、またはプログラミング言語など)の学習を開始し、〇ヶ月で〇〇(資格取得、ポートフォリオ作成など)を達成しました。前職で培った〇〇(ポータブルスキル)と、この学習意欲を活かし、一日も早く貴社の戦力として貢献します。
6. 結論。履歴書では「自己PR」で「貢献できる強み」の“要約”を
履歴書に「自己紹介」欄が求められることは稀(まれ)です。採用担当者が知りたいのは、あなたの「自己紹介」ではなく、**「あなたが、入社後にどう貢献できるか」**を示す「自己PR」です。
- 強み(結論)
- 簡潔なエピソード(根拠)
- 入社後の貢献(未来)
この構成を守り、履歴書にはその「要約」を記載すること。
そして、その「詳細」を職務経歴書で展開する。
この「役割分担」こそが、採用担当者の「会ってみたい」という気持ちを引き出す、書類選考通過の鍵となります。





