薬剤師の職務経歴書で書類選考を突破する職務要約の書き方と業態別例文集
薬剤師は売り手市場と言われることもありますが、年収の高い企業や、設備の整った人気病院、働きやすい環境の薬局への転職は競争率が高く、書類選考で落とされてしまうケースも少なくありません。採用担当者は、資格を持っていることは前提として「どのような環境で」「どれくらいの業務量を」「どのような工夫を持って」こなしてきたかを見ています。ここでは、薬剤師としての経験を魅力的なスキルとして言語化し、書類選考を通過するための職務要約の書き方のポイントと、業態別(調剤薬局、病院、ドラッグストア、企業)の具体的な例文を紹介します。
薬剤師の採用担当者が職務要約で重視する3つのポイント
薬剤師の採用において、企業や医療機関側が求めているのは、即戦力としての実務能力と、組織になじむ適応力です。職務要約では以下の3点を明確にする必要があります。
- 経験した業態と規模感総合病院かクリニック門前か、面対応かによって求められるスキルが異なります。また、1日あたりの処方箋枚数や、在籍店舗の薬剤師数、一人当たりの対応枚数を記載することで、業務のスピード感や負担への耐性を伝えます。
- 専門性とスキルアップへの意欲認定薬剤師や専門薬剤師の資格有無はもちろん、かかりつけ薬剤師としての実績、在宅医療への取り組み、特定の診療科(オンコロジー、精神科など)の経験など、薬剤師としての専門性をどこまで深めてきたかを確認します。
- 管理業務と対人スキル管理薬剤師としての店舗運営経験や、後輩指導、薬学生の実務実習指導などのマネジメント経験は高く評価されます。また、医師や看護師との疑義照会や連携、患者様への服薬指導におけるコミュニケーション能力も重要な評価ポイントです。
職務要約の適切な文字数と構成テクニック
職務要約の最適な文字数は200文字から300文字程度です。採用担当者が30秒程度で読み切れる分量にまとめるのが理想的です。以下の3つの要素を組み込むことで、読みやすく説得力のある要約になります。
- 誰に(どこで):勤務した業態(調剤、病院、ドラッグストア)、科目、処方箋枚数。
- 何を(業務):調剤、監査、服薬指導、病棟業務、在庫管理、管理職業務。
- どうやって(実績):かかりつけ算定件数、過誤防止の取り組み、業務効率化。
【調剤薬局】即戦力と対応力をアピールする例文
調剤薬局の経験者は、対応した科目の幅広さや、スピード感、そして在宅医療やかかりつけ機能への対応力をアピールします。
例文
大学卒業後、6年間にわたり調剤薬局2店舗にて勤務してまいりました。
最初の3年間は総合病院の門前薬局にて、多岐にわたる診療科の処方箋を1日平均40枚対応し、幅広い薬学的知識とスピードを習得しました。直近の3年間は地域密着型の薬局にて、管理薬剤師として店舗運営および在庫管理を担当しました。特に在宅医療に注力し、医師やケアマネジャーと連携して月間20件の居宅訪問を行いました。また、かかりつけ薬剤師として患者様に寄り添った服薬指導を実践し、地域医療への貢献に努めました。これまでの経験を活かし、貴社の地域連携強化に貢献したいと考えています。
【病院薬剤師】専門知識とチーム医療をアピールする例文
病院での経験者は、病棟業務やチーム医療(NST、ICTなど)への参加実績、専門領域の知識をアピールして専門性の高さを証明します。
例文
大学卒業後、5年間にわたり300床規模の急性期総合病院にて薬剤師業務に従事してまいりました。
調剤室業務に加え、病棟薬剤業務として消化器内科および外科病棟を担当しました。医師や看護師への薬剤情報提供や、持参薬鑑別、TDM(薬物血中濃度モニタリング)解析に基づいた投与設計提案を積極的に行い、チーム医療の一員として副作用回避に貢献しました。また、がん薬物療法認定薬剤師の取得を目指して学習を続けており、抗がん剤のミキシング業務も経験済みです。これまでの臨床経験を活かし、貴院の質の高い医療提供に貢献します。
【ドラッグストア】OTC知識と接客力をアピールする例文
ドラッグストアの経験者は、OTC医薬品のカウンセリング販売能力や、店舗全体の数字を作るマネジメント能力をアピールします。
例文
大手ドラッグストアチェーンにて4年間勤務し、OTC販売および調剤併設店での調剤業務に従事してまいりました。
セルフメディケーションの推進を意識し、お客様の症状を詳細にヒアリングした上で最適なOTC医薬品や健康食品を提案するカウンセリング販売に注力しました。その結果、店舗のヘルスケア部門売上を昨対比110パーセントに向上させました。また、店長代行としてスタッフ15名のシフト管理や商品発注も担当し、効率的な店舗運営を心がけました。調剤とOTCの両面から患者様の健康をサポートできる強みを活かし、貴社の地域密着型の店舗運営に貢献します。
【未経験・企業へ】ポータブルスキルと意欲をアピールする例文
製薬会社や治験関連企業(CRO・SMO)などへキャリアチェンジを目指す場合は、薬学的知識に加え、PCスキルや調整力などのポータブルスキルをアピールします。
例文
調剤薬局にて5年間、管理薬剤師として勤務してまいりました。
正確な調剤と監査業務はもちろん、患者様のコンプライアンス向上に向けた丁寧な服薬指導を行ってまいりました。管理職としては、薬歴の電子化推進や在庫管理システムの最適化を行い、業務効率化を実現しました。また、医師への疑義照会を通じて、論理的に情報を伝え交渉する調整力を養いました。新薬開発を通じてより多くの患者様に貢献したいという思いから、CRA(臨床開発モニター)職を志望しております。持ち前の「正確性」と「調整力」を活かし、治験の円滑な進行に貢献します。
薬剤師の職務要約を書く際の注意点
薬剤師の職務要約を書く際によくある失敗として、単に「調剤と投薬を行いました」という事実だけの羅列になってしまうことが挙げられます。薬剤師であれば調剤ができるのは当たり前です。「どのような科目・疾患に強みがあるか」「どの程度の忙しさ(枚数)に対応できるか」「ヒヤリハットを減らすために何をしたか」といった具体的なエピソードや数字を盛り込むことで、他の応募者との差別化を図ってください。また、使用できるレセコンの機種や、電子薬歴のメーカー名を書くことも、即戦力アピールとして有効です。





