転職の書類選考において出身大学はどれほど影響するのか

転職活動を検討し始めた際、自身の出身大学や学歴が書類選考にどの程度影響するのか不安に感じる方は少なくありません。新卒の就職活動では、いわゆる学歴フィルターという言葉が存在するように、出身大学の偏差値やブランドが選考通過の大きな要因となることがありました。しかし社会人経験を経てから挑む中途採用の場において、その基準は大きく変化します。ここでは転職活動の書類選考における出身大学の重要度や、新卒採用との視点の違い、そして学歴以上に評価されるポイントについて詳しく解説します。

新卒採用と中途採用では大学名の持つ意味が大きく異なる

まず理解しておくべき大前提として、新卒採用と中途採用では企業が応募者を評価する基準が根本的に異なります。新卒採用はポテンシャル採用と呼ばれ、ビジネススキルがまだない学生の将来性を見極めるために、基礎学力や学習意欲の証明として出身大学のレベルを一つの指標とすることがあります。

一方で中途採用は即戦力採用が基本となります。企業が求めているのは、入社してすぐに成果を出せる実務能力です。そのため書類選考において最も重視されるのは、これまでどの会社でどのような業務を経験し、どのような実績を上げてきたかという職務経歴の実績です。たとえ有名大学の出身であっても、社会人としての実績が乏しければ書類選考を通過することは難しく、逆に出身大学の知名度が高くなくても、募集ポジションに合致した専門スキルや豊富な経験があれば、高く評価され面接へと進むことができます。年齢を重ねるほど学歴の重要度は下がり、実務経験のウェイトが高まるのが転職市場の常識です。

学歴が書類選考の評価に影響を与える特定のケース

中途採用では経験が重視されるとはいえ、出身大学が全く見られないわけではありません。いくつかの特定のケースにおいては、学歴が書類選考の判断材料の一つとして機能することがあります。

一つ目は、社会人経験が浅い第二新卒の層です。卒業してから3年未満の若手社員の場合、業務での実績がまだ十分に積み上がっていないことが多いため、ポテンシャルを測る補助的な要素として出身大学が参照されることがあります。二つ目は、総合商社やコンサルティングファーム、金融専門職など、極めて高い地頭力や論理的思考力が求められる一部の難関企業や職種です。これらの企業では学習能力の高さや継続的な努力ができる素養の証明として、一定以上の学歴を求める傾向が残っている場合があります。また、大手企業などで応募者が殺到した際に、選考プロセスを効率化するために学歴を一つのフィルターとして用いるケースも稀に存在しますが、これはあくまで初期段階の絞り込みであり、最終的には人物本位での評価となります。

出身大学よりも重視される職務経歴書の実績とスキル

多くの転職希望者が懸念するほど、現在の転職市場では学歴は決定的な要因にはなりません。書類選考で不採用になる原因の多くは、学歴ではなく、企業が求めるスキルと応募者の経験のミスマッチや、職務経歴書でのアピール不足にあります。

書類選考を突破するために注力すべきは、出身大学の名前を変えようと悩むことではなく、職務経歴書の内容を磨き上げることです。自身のキャリアを棚卸しし、具体的な数値やエピソードを用いて実績を可視化することが重要です。例えば営業職であれば売上達成率や新規開拓数、エンジニアであれば扱える言語や開発したシステムの規模など、誰が見ても実力が分かる客観的な事実を提示することで、学歴の壁を越えて評価を得ることができます。企業は「勉強ができる人」ではなく「仕事ができる人」を求めているという本質を忘れてはいけません。

履歴書の学歴欄を記入する際の正しいマナーとポイント

書類選考における学歴の比重が下がっているとはいえ、履歴書の学歴欄は正確かつ丁寧に記入する必要があります。基本的なマナーとして、学校名は略称を使わず正式名称で記載します。「高校」ではなく「高等学校」と書き、学部や学科、専攻コースまで詳細に記すことで、自身の専門的バックグラウンドを正確に伝えることができます。

また大学院卒の場合や留学経験がある場合は、それらも漏れなく記載します。特に理系職種や専門職の場合、大学での研究テーマが応募職種と関連していれば、職務経歴書と合わせて強力なアピール材料となります。中退した場合でも隠さずに「中途退学」と記載し、その理由が前向きなものであれば備考欄などで補足するのも一つの方法です。学歴欄は自身の歩んできた歴史の一部です。過度にコンプレックスを持つことなく、事実を堂々と記載し、それ以上に現在の自分自身の能力を職務経歴書で雄弁に語ることが、書類選考通過への確実な一歩となります。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
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