履歴書の志望動機は「趣味(好き)」から書いてもいい?ファンで終わらせず採用されるための書き換え術
転職活動において、応募のきっかけが「昔からその会社の製品が好きだった」「趣味が高じてその業界に興味を持った」というケースは非常に多くあります。しかし、履歴書の志望動機欄に「趣味だから」「好きだから」とストレートに書いてしまうと、採用担当者に「遊び感覚で応募してきたのではないか」「仕事の厳しさを理解していないのではないか」と懸念されてしまうリスクがあります。
「好き」という感情は強力なエネルギーですが、それをビジネスの場で評価される「志望動機」に昇華させるためには、視点の転換が必要です。ここでは、趣味や愛着をきっかけにした志望動機の正しい書き方と、採用担当者に「プロとして活躍してくれそうだ」と思わせるための変換テクニックについて解説します。
「趣味」を志望動機にするのはアリだが「視点」が重要
結論から申し上げますと、趣味や「好き」という感情を志望動機のきっかけにすることは、決して悪いことではありません。むしろ、その商材やサービスに対して深い関心を持っていることは、知識の習得が早い、熱意が持続しやすいといったメリットとして捉えられます。
ただし、重要なのは「どの立場で語るか」です。
- NGな視点(消費者目線): 「貴社の製品が大好きで、いつも使っています。関われるなんて夢のようです。」
- OKな視点(提供者目線): 「貴社の製品の〇〇という魅力に惹かれ、今度は作り手としてその価値を広め、事業の発展に貢献したいです。」
採用担当者が求めているのは、製品を買ってくれるファンではなく、製品を売って利益を生み出してくれるビジネスパートナーです。「消費する側」から「提供する側」へと視点を切り替え、ビジネスとしてどう貢献できるかを語ることが、趣味を志望動機にする際の鉄則です。
「好き」を「貢献」に変える3つのステップ
趣味を説得力のある志望動機に変えるためには、以下の3つのステップで思考を整理してみてください。
1. 「なぜ好きなのか」を分析して言語化する
単に「面白いから」「かっこいいから」という感覚的な理由ではなく、プロの視点でその魅力を分析します。「ユーザーインターフェースが優れていて使いやすい」「他社にはない独自の技術が使われている」など、具体的な機能やビジネスモデルの優位性に触れることで、業界研究ができていることをアピールできます。
2. 趣味で得た知識や経験を「スキル」として提示する
趣味を通じて得たものが、仕事にどう活かせるかを考えます。例えば、ゲームが趣味なら「ユーザー視点での改善提案ができる」、キャンプが趣味なら「道具の具体的な使用感を接客で伝えられる」、写真が趣味なら「構図へのこだわりを広報素材の作成に活かせる」といった具合です。単なる知識ではなく、実務に役立つスキルや視点を持っていることを示します。
3. 「広めたい」「作りたい」という能動的な意欲に繋げる
最後に、「好きだから関わりたい」ではなく、「その価値を多くの人に届けたい」「より良いものを作りたい」という能動的なアクションに結びつけます。会社と同じ方向を向いて走れる人材であることをアピールしてください。
【ケース別】趣味をきっかけにした志望動機の例文
ケース1:愛用している製品のメーカーへ応募する場合(営業・販売など)
例文
私は長年、貴社のアウトドア用品を愛用しており、過酷な環境でも機能性を失わない耐久性と、使う人の安全を第一に考えた設計思想に深く感銘を受けてまいりました。前職では自動車ディーラーの営業として、お客様のライフスタイルに合わせた提案を行ってまいりましたが、自身の最も情熱を注げる分野で、その価値をより多くの方に伝えたいという思いが強くなり志望いたしました。ユーザーとしての実体験と、前職で培った提案力を活かし、貴社製品のファンを増やすことに貢献したいと考えております。
ケース2:趣味のスキルを仕事にする場合(IT・クリエイティブなど)
例文
趣味で続けているWebサイト制作を通じて、コードを書くことでアイデアが形になり、世界中の人に利用してもらえるIT技術の可能性に魅力を感じ、エンジニアを志望いたしました。現在は独学でJavaScriptを中心に学習しており、個人でアプリを開発するなど技術の習得に励んでおります。貴社の「技術で日常を便利にする」というミッションに共感し、趣味の枠を超えてプロフェッショナルとしてシステム開発に携わりたいと決意いたしました。前職の事務職で培った正確性と、持ち前の探究心を活かして早期に戦力となれるよう尽力いたします。
履歴書の「趣味・特技」欄を志望動機の裏付けに使う
履歴書には「志望動機」欄とは別に「趣味・特技」欄がありますが、ここも志望動機を補強する重要なスペースとして活用できます。
もし志望動機で「カメラが好きで、御社のカメラ事業に貢献したい」と書いたなら、趣味欄には単に「写真」と書くのではなく、「写真撮影(週末は一眼レフを持って風景撮影に行きます。撮影した写真はSNSで発信し、フォロワーは〇〇人です)」のように具体的に記載します。
これにより、「口先だけで好きと言っているわけではない」という信憑性が増し、面接での話題作りにもなります。ただし、あまりにマニアックすぎる内容や、仕事に支障が出そうなほど没頭している(例:オンラインゲームで徹夜するなど)といった内容は避けるのが無難です。
「公私混同」と思われないための注意点
趣味をアピールする際、最も避けなければならないのは「公私混同」です。「社割で安く買いたい」「好きなものに囲まれて楽しく仕事がしたい」といった本音が見え隠れすると、採用担当者は「嫌な仕事はしないのではないか」と警戒します。
あくまで仕事は、地味な作業や辛いことの積み重ねです。志望動機の中では、「好きな分野だからこそ、裏方としての苦労も厭わずに努力できる」「厳しい要求水準にも耐えられる」という覚悟を滲ませることが、採用を勝ち取るためのポイントとなります。





