履歴書の志望動機が難しいと感じる理由とスラスラ書けるようになる思考の整理術

転職活動において履歴書を作成する際、多くの人が最も頭を悩ませるのが志望動機の欄です。学歴や職歴は事実を淡々と記載すればよいのですが、志望動機は自分の言葉で熱意や理由を表現しなければならず、正解がないだけに難しさを感じてしまいがちです。

しかし、志望動機が書けない、難しいと感じてしまうのには明確な原因があります。その原因を取り除き、正しい手順で思考を整理すれば、誰でも説得力のある志望動機を作成することは可能です。ここでは志望動機作成を難しくさせている要因を紐解き、採用担当者に響く文章をスムーズに組み立てるための方法について解説します。

なぜ志望動機を書くのが難しいと感じるのか

志望動機が書けないと悩む人の多くは、いきなり完璧な文章を書こうとしている傾向があります。しかし、プロのライターであっても、材料がない状態でいきなり名文を書くことはできません。志望動機が難しいと感じる主な理由は以下の3点に集約されます。

1つ目は、企業研究不足により書く材料が揃っていないことです。その企業のどこが良いのか、他社と何が違うのかという情報が不足していると、どうしても抽象的な表現しか出てこず、筆が止まってしまいます。

2つ目は、本音と建前のギャップに苦しんでいることです。本当は給料が良いから、家から近いからといった条件面が理由である場合、それをそのまま書いてはいけないというブレーキがかかり、別の立派な理由を捏造しようとするため、言葉に詰まってしまいます。

3つ目は、自分に自信がなくアピールポイントが見つからないことです。特別な実績やスキルがないと考え込んでしまい、自分を採用するメリットを言語化できないという悩みです。

これらのハードルを下げるためには、まず文章を書こうとするのではなく、パーツ（材料）を集める作業から始めることが大切です。

難しく考えずに3つの要素を埋めるパズルとして捉える

志望動機をゼロから作文しようとすると難易度が高くなりますが、決まった型に要素を当てはめるパズルだと捉えると、作成はぐっと楽になります。採用担当者が知りたいことは実はシンプルで、以下の3つの要素が含まれていれば十分な志望動機として成立します。

1. なぜその会社なのか（企業の魅力）
2. 自分には何ができるのか（自分の強み）
3. 入社後にどうなりたいか（将来のビジョン）

この3つをそれぞれ一文ずつ書き出し、最後に接続詞で繋げるだけで、論理的な志望動機の骨組みは完成します。難しく修飾語をつけたり、感動的なエピソードを盛り込もうとしたりする必要はありません。まずはこの3つの要素を箇条書きで洗い出すことから始めてみてください。

本音の理由をビジネス視点の言葉に変換するテクニック

志望動機が難しいと感じる最大の要因である本音と建前の問題は、視点の変換で解決できます。条件面でのメリットは、言い換えれば長く働ける環境や、成果を出したいという意欲の裏返しでもあります。

例えば、給料が良いからという理由は、成果が正当に評価される環境で、高い目標を持って貢献したいと言い換えることができます。家から近いからという理由は、通勤時間を自己研鑽や業務への集中に充て、腰を据えて長く勤務したいと言い換えることが可能です。

また、残業が少なそうだからという理由は、効率的な業務運営を重視する社風に惹かれ、限られた時間で最大限の成果を出したいと表現します。このように、自分が受け取るメリット（テイク）を、会社への貢献（ギブ）という形に変換することで、本音をベースにしつつも立派な志望動機を作成することができます。

経験が浅い・未経験で書くことがない場合の対処法

特別なスキルや経験がないために志望動機が書けないという場合は、ポータブルスキル（持ち運び可能な能力）に注目します。これは業種や職種が変わっても通用する、ビジネスパーソンとしての基礎能力のことです。

例えば、接客業で培ったコミュニケーション能力や、事務職で培った正確性、チームで協力して物事を進める協調性などは、どのような仕事でも必要とされるスキルです。未経験の職種に応募する場合でも、前職で培った〇〇という強みは、貴社の〇〇業務においても活かせると確信していますと伝えることで、説得力が生まれます。

また、なぜその仕事に興味を持ったのかという原体験を掘り下げるのも有効です。過去にお客様として利用した際の感動や、ニュースで見た業界の動向など、自分なりの接点を素直に表現することで、オリジナリティのある志望動機になります。

文章を整える際は読み手への配慮を忘れない

要素が揃い、文章の骨組みができたら、最後に読みやすさを調整します。ここで意識すべきは、一文を短くすることです。～ですが、～ので、と長く繋げてしまうと、論理構成が分かりにくくなります。～です。そのため～と一度言い切ることで、リズム良く読める文章になります。

また、貴社の経営理念に共感しましたといった定型文のような表現は、できるだけ具体的な言葉に置き換えます。どの言葉に共感したのか、自分の体験とどう重なるのかを一言加えるだけで、借り物ではない自分の言葉になります。

志望動機は、自分を良く見せるための作文コンクールではありません。あくまで、自分という人材がその企業でどう役立つかを提案するビジネス文書です。難しく考えすぎず、相手が納得できる理由を誠実に伝えることに集中してください。そうすれば、自然と書類選考を通過できる志望動機が完成します。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
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