履歴書の「性別」欄。近年の様式の変化と正しい対応
履歴書における「性別」記載の現状
転職活動で履歴書を準備する際、ご自身のプロフィールを記載する中で「性別」欄の扱いに戸惑う方が増えています。かつては、履歴書に「男・女」いずれかを記載する性別欄が設けられているのが当たり前でした。しかし近年、個人の多様性を尊重する社会的な流れや、応募者の能力とは直接関係のない情報を選考に用いない「公正な採用選考」の観点から、履歴書の様式(フォーマット)にも変化が見られます。
厚生労働省が推奨する履歴書様式
こうした社会的な背景を受け、厚生労働省は、性別欄を必須としない(任意記載とする、あるいは欄自体を設けない)履歴書の様式例を提示しています。これは、性別という本人の適性や能力とは無関係な情報によって、採用選考が左右されることを防ぐための取り組みの一環です。したがって、応募者が性別欄のない履歴書様式を使用して応募したからといって、それ自体が選考で不利になることはありません。
市販の履歴書や企業指定の「性別欄」への対応
一方で、市販されている履歴書や、応募先企業が独自に指定する応募フォームには、依然として「性別」欄(多くは「男・女」の選択式)が設けられているケースも少なくありません。このように、記載が必須となっている、あるいは選択肢が限られている場合は、どのように対応すべきでしょうか。
戸籍上の性別と性自認に関するデリケートな問題
特に、戸籍上の性別とご自身の性自認(ジェンダーアイデンティティ)が異なる方にとって、この性別欄への記載は非常にデリケートな問題となります。
社会保険手続きの観点
まず、企業が採用選考や入社手続きにおいて性別の情報を必要とする理由の一つに、社会保険(健康保険、厚生年金など)の手続きがあります。これらの公的な手続きは、現行の制度上、戸籍上の性別に基づいて行われることが一般的です。そのため、企業指定の様式で記載が求められる場合は、戸籍上の性別を記載するのが、入社後の実務を想定した上での一つの対応となります。
任意記載や空欄での提出について
もし、厚生労働省推奨様式のように性別欄が「任意記載」となっている場合や、Web応募フォームで「回答しない」「その他」といった選択肢が用意されている場合は、ご自身の判断で記載しない、あるいは該当する選択肢を選ぶことが可能です。
性別より「能力と意欲」の記載を重視
履歴書の性別欄の扱いは、社会的な過渡期にあるため、応募者として悩まれるのは当然のことと存じます。しかし、採用担当者が応募書類で最も知りたいのは、性別の情報ではなく、あなたの「職務経歴」「専門スキル」、そして「なぜ自社で働きたいのか」という具体的な志望動機です。性別欄の扱いで思い悩むよりも、ご自身の強みや熱意が最大限に伝わるよう、職務経歴書や自己PR、志望動機の作成にこそ、時間と労力を注力することが、書類選考を通過する上で最も重要です。





