履歴書の「グループ会社への異動」。出向・転籍の正しい書き方とアピール術

転職活動で履歴書を作成する際、職歴欄の書き方で迷うポイントの一つが「グループ会社」間の「異動」経験です。「親会社から子会社へ異動した」「関連会社に移った」といった経歴をどう書けばよいか、悩む方は少なくありません。

「これは『出向』なのか『転籍』なのか？」

「書き方次第で、転職回数が多いと誤解されないか？」

こうした疑問は当然のことです。採用担当者は、あなたのキャリアの一貫性や、どのような環境で実務を経験してきたかを見ています。

グループ会社への「異動」経験は、書き方次第で「多様な環境への適応力」や「幅広い業務経験」として強力なアピールになります。

ここでは、採用担当者に誤解を与えず、あなたの経歴を正しく、かつ魅力的に伝えるための「グループ会社への異動」の書き方について、ケース別に詳しく解説します。

1. まず確認！ 「異動」は「出向」か「転籍」か

履歴書に正しく書くための第一歩は、ご自身のその「異動」が、「出向（しゅっこう）」と「転籍（てんせき）」のどちらであったかを、正確に把握することです。

この2つは、あなたの「雇用契約（籍）」がどこにあったかで、履歴書への書き方が根本的に異なります。

• 出向（しゅっこう）とは元の会社（親会社A社など）との雇用契約は維持したまま（＝A社に在籍したまま）、別の会社（グループ会社B社）の指揮命令下で勤務することです。あなたの「籍」は、あくまで元の会社（A社）にあります。
• 転籍（てんせき）とは元の会社（A社）との雇用契約を一度終了（＝A社を退職）し、新しく異動先の会社（B社）と雇用契約を結び直すことです。あなたの「籍」が、A社からB社へ完全に移動します。

ご自身の雇用契約書や、異動時の辞令（じれい）などを確認し、どちらであったかを明確にしておきましょう。

2. 【ケース1】「出向」の場合の履歴書の書き方

「出向」の場合、あなたの「籍」は元の会社（A社）にあるため、職歴の主体は、あくまで**「在籍元（A社）」**となります。

書き方のポイント

1. まず、在籍元である親会社（A社）への「入社」を記載します。
2. 次に、いつから、どの会社（B社）へ「出向」したかを明記します。
3. もし退職している場合は、籍がある親会社（A社）を「退社」した、と記載します。
4. この場合、A社からB社への移動は「転職」とは見なされず、**職歴は「1社」**として扱われます。

履歴書の記載例（出向した場合）

（学歴）

（職歴）

2015年 4月 株式会社〇〇（親会社） 入社

営業部に配属

2020年 5月 株式会社△△（グループ会社）へ出向

（〇〇支店にて、〇〇（商材）の法人営業に従事）

2025年 3月 株式会社〇〇（親会社） 一身上の都合により退社

以上

（※現在も出向中の場合は、最後の行を「現在に至る」とします）

3. 【ケース2】「転籍」の場合の履歴書の書き方

「転籍」の場合、あなたの「籍」はA社からB社へ完全に移動しています。したがって、職歴上は「A社を退職」し、「B社に入社」したことになります。

これをそのまま書くと、「転職回数が多い」と誤解されるリスクがあります。

【最重要】転籍の誤解を防ぐ「魔法の一言」

この誤解を防ぐために、転籍先の会社名（B社）の横に、「（株式会社〇〇より転籍）」という一文を必ず補足する必要があります。

これが、単なる転職ではなく、「グループ内での計画的な異動」であったことを証明する、最も重要な情報となります。

履歴書の記載例（転籍した場合）

（学歴）

（職歴）

2015年 4月 株式会社〇〇（親会社） 入社

（〇〇業務に従事）

2020年 3月 一身上の都合により退社（または、会社都合により退職）

2020年 4月 株式会社△△（グループ会社） 入社**（株式会社〇〇より転籍）**

（〇〇部にて、〇〇業務に従事）

現在に至る

以上

4. グループ会社への「異動」経験を「強み」としてアピールする方法

「出向」や「転籍」の経験は、決してマイナスではありません。

履歴書の**「自己PR」欄や、セットで提出する「職務経歴書」**において、これらの経験を以下のような「強み」としてアピールしましょう。

• 高い「適応力（順応性）」→ 親会社とは異なる企業文化や、新しい業務ルール、人間関係の中で、スムーズに適応し、成果を出した経験。
• 「幅広い視野」と「多様な経験」→ 一つの会社にいただけでは得られない、異なる環境（例：親会社での企画業務と、子会社での現場業務）での経験。
• 「調整能力」→ 親会社と出向先（グループ会社）との「橋渡し役」として、利害関係の調整や、円滑なコミュニケーションを図った経験。

自己PR欄でのアピール例文

「私の強みは、異なる環境にも迅速に適応できる順応性です。前職では、親会社からグループ会社への転籍を経験しました。異なる業務プロセスや企業文化の中で、親会社で培った〇〇の知識と、転籍先での新しいルールを融合させ、業務改善に貢献しました。貴社の〇〇業務においても、この適応力を活かし、即戦力として貢献します。」

5. 結論。グループ会社への「異動」は「正確」かつ「明確」に

履歴書の「グループ会社への異動」経験は、隠したり、曖昧（あいまい）に書いたりするべきではありません。採用担当者は、その「事実」を知りたいのです。

ご自身の雇用形態が「出向」だったのか、「転籍」だったのかを正しく把握し、

• 出向なら、親会社への在籍を明確に
• 転籍なら、「退社」と「入社」を明記し、**「（〇〇より転籍）」**と補足する

このルールを守ることで、採用担当者の誤解を防ぎ、あなたのキャリアの一貫性と、そこで培った「適応力」を、正しくアピールすることができます。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
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