履歴書における「転勤」の正しい書き方ガイド。希望条件の伝え方と職歴のアピール術
転職活動において履歴書を作成する際、「転勤」というキーワードは二つの側面で重要な意味を持ちます。一つは入社後に「転勤ができるかどうか(希望条件)」であり、もう一つは過去の職歴における「転勤経験の記載(職歴)」です。
特に全国展開している企業への応募では、転勤の可否が合否を分ける重要なファクターになることがあります。また、過去に転勤が多くて職歴欄が複雑になってしまう場合や、配偶者の転勤で退職した場合の書き方に悩む方も少なくありません。
ここでは履歴書における転勤に関する正しい書き方や、本人希望記入欄でのスマートな伝え方、そして転勤経験をプラスに換えるアピール方法について詳しく解説します。
本人希望記入欄で「転勤の可否」を明確に伝える書き方
履歴書の最後にある「本人希望記入欄」は、勤務地や転勤に関する条件を企業側に伝えるための重要なスペースです。ここでの書き方一つで、採用担当者に与える印象や配属の検討材料が大きく変わります。
転勤が可能な場合のアピール方法
もし転勤に支障がないのであれば、それは大きなアピールポイントになります。企業にとって人員配置の柔軟性が高い人材は非常に魅力的だからです。「特になし」や「貴社の規定に従います」とするだけでなく、積極的に記載することをお勧めします。
【記入例】
- 全国どこでも可能な場合「全国転勤可能です。」「勤務地に関しては貴社の規定に従います。(全国転勤対応可)」
- エリア限定なら可能な場合「関西エリア内であれば、転居を伴う転勤も可能です。」
このように記載することで、入社意欲の高さとフットワークの軽さを印象づけることができます。
転勤ができない、または制限がある場合の書き方
育児や介護、持ち家などの事情で転居を伴う転勤が難しい場合は、その旨を正直に、かつ角が立たないように記載する必要があります。隠して入社すると後々トラブルの原因となります。
ポイントは「不可」とだけ書くのではなく、理由を添えるか、あるいは「可能な範囲」を示すことです。
【記入例】
- 家庭の事情がある場合「親の介護のため、転居を伴う転勤は希望いたしません。現在の住居から通勤可能な範囲であれば異動は可能です。」
- 勤務地を限定したい場合「家庭の事情により、東京本社での勤務を希望いたします。」
「転勤はできません」と拒絶する表現よりも、「転居を伴わなければ対応可能です」といった譲歩案(妥協点)を示すことで、協調性を損なわずに条件を伝えることができます。
職歴欄における「社内転勤(異動)」の正しい書き方
同じ会社に在籍しながら、勤務地が変わる転勤(異動)を経験している場合、職歴欄にはどのように記載すべきでしょうか。
基本的には、すべての異動歴を書く必要はありませんが、キャリアの節目となる転勤や、昇進を伴う転勤については記載することで、経験の幅広さをアピールできます。
「配属」と「転勤(異動)」の書き分け
入社直後の配置は「配属」、その後の変更は「転勤」または「異動」と書きます。
【記入例】
平成25年 4月 株式会社〇〇 入社
東京支店 営業部に配属
平成28年 4月 大阪支店 営業部へ転勤
令和元年 10月 名古屋支店 営業課長に昇進
転勤が多いことはネガティブではありません。むしろ「様々な地域や部署で環境に適応し、実績を出してきた」という証明になります。「多くの拠点を経験し、全社的な視点を持っている」と自己PRにつなげることができます。
配偶者の転勤に伴う退職と再就職の書き方
配偶者の転勤についていくために退職し、転居先で再就職を目指すケースも多く見られます。この場合、退職理由をどう書くかがポイントです。
退職理由は「一身上の都合」ではなく具体的に書く
通常、自己都合退職は「一身上の都合により退社」と書きますが、配偶者の転勤が理由である場合は、あえて具体的に書くことがプラスに働きます。
【記入例】
令和〇年〇月 配偶者の転勤に伴い退社
令和〇年〇月 結婚に伴う転居のため退社
このように記載することで、短期間での離職やキャリアの空白があったとしても、「本人の能力不足や飽き性によるものではない(やむを得ない事情である)」と採用担当者に理解してもらえます。
「また転勤するのでは?」という懸念への対策
配偶者の転勤で退職した経歴があると、企業側は「採用してもまた転勤で辞めてしまうのではないか」と懸念します。長く働ける環境であることを本人希望記入欄や志望動機で補足すると効果的です。
【記入例】
- 「現在は定住しており、今後転居の予定はありません。」
- 「今後は家族と相談の上、単身赴任等で対応し、長期的に就業したいと考えております。」
転勤族の経験を強みに変える自己PR
転勤が多い生活を送ってきた方は、知らず知らずのうちに高い「環境適応能力」を身につけています。新しい土地、新しい人間関係、新しい業務フローに素早く馴染み、成果を出してきた経験は、転職先でも即戦力として活躍できる素養です。
履歴書や職務経歴書の自己PR欄では、「転勤により培った適応力とコミュニケーション能力」を強調しましょう。「どこの配属になってもすぐに溶け込み、業務を円滑に進められる」というアピールは、全国展開している企業や組織変更の多い企業にとって非常に魅力的に映ります。
履歴書における転勤の記述は、単なる事実の羅列や条件提示ではありません。書き方を工夫することで、あなたの柔軟性やキャリアの深さを伝える強力なツールになります。ご自身の状況に合わせて最適な表現を選び、採用担当者に安心感と期待感を与えてください。





