「転職なのに成績証明書?」と焦る前に。看護師の中途採用で提出が求められる理由と、成績が悪くても受かるための対策
「大学病院への転職を考えて募集要項を見たら、『成績証明書』の提出が必要と書いてあった」
「看護学校を卒業したのは何年も前。成績なんて覚えていないし、悪かったらどうしよう……」
中途採用(転職)の選考書類といえば、履歴書と職務経歴書、そして看護師免許証の写しが一般的です。
しかし、大学病院や公立病院、一部の大手医療グループなどでは、これらに加えて「成績証明書(または卒業証明書)」の提出を求められることがあります。
「今さら学生時代の成績を見てどうするの?」「成績が悪いと不採用になるの?」と不安になる看護師さんは多いですが、過度に心配する必要はありません。
採用側が成績証明書を見る目的は、テストの点数チェックではないことがほとんどだからです。
本記事では、看護師の転職で成績証明書が求められる本当の理由と、発行の手順、そして成績に自信がない場合の対策について解説します。
1.なぜ中途採用で「成績証明書」が必要なのか?
採用担当者は、あなたの「解剖生理学」や「薬理学」の点数に興味があるわけではありません。中途採用で重視されるのはあくまで「臨床経験」です。
では、なぜわざわざ手間のかかる成績証明書を提出させるのでしょうか。主な理由は以下の3点です。
① 「卒業の証明」と「経歴詐称の防止」
最も大きな理由は、事務的な**「裏付け」**です。
履歴書に書かれた学歴に偽りがないか、本当にその学校を卒業して資格取得要件を満たしたかを確認する公的な資料として求めています。特に公的機関や大学病院は規定が厳格であるため、必須書類となっているケースが多いのです。
② 「出席日数」から勤怠の安定性を見る
実は、成績(評定)よりも見られているのが**「出欠状況」**です。
学生時代に遅刻や欠席が極端に多かった場合、「社会人になっても勤怠がルーズなのではないか?」「健康面に問題があるのではないか?」と懸念される可能性があります。
逆に言えば、成績が平凡でも、皆勤であれば「真面目に通い続けた実績」としてプラス評価になります。
③ 形式的な「書類提出能力」のチェック
「指定された書類を、期限内に、不備なく揃えられるか」という、社会人としての基本的な事務処理能力を見ています。
発行に時間がかかる証明書を段取りよく準備できるかは、入職後の業務遂行能力の一つの指標になります。
2.「成績が悪い」と書類選考で落ちるのか?
結論から言えば、成績が悪いという理由だけで、経験ある看護師が不採用になることはまずありません。
即戦力を求める中途採用において、評価の9割は「職務経歴書(臨床での実績)」と「面接(人柄)」で決まります。学生時代のペーパーテストの結果は、あくまで参考資料に過ぎません。
「『可』ばかり並んでいて恥ずかしい」と思う必要はありません。堂々と提出してください。
もし面接で成績について突っ込まれたら?
稀に面接で「この科目の成績が苦手だったようですが…」と聞かれることがあります。その際は、以下のように**「過去の自分」と「現在の自分」を対比させて回答**すれば、むしろ好印象になります。
- 回答例:「お恥ずかしい限りですが、学生時代は座学と実習を結びつけるのが苦手でした。しかし、臨床に出て患者様を受け持つ中で知識の重要性を痛感し、今は〇〇の認定資格取得に向けて勉強を続けています。現場での実践を通じて、学ぶ楽しさを知りました。」
このように、「昔は悪かったが、今はプロとして成長した」というストーリーに変えてしまいましょう。
3.成績証明書の発行手順と注意点
成績証明書は、手元にあるものではなく、母校に依頼して新しく発行してもらう必要があります。
卒業シーズンや長期休暇中は発行に時間がかかることがあるため、転職を決意したら早めに手配しましょう。
取得の流れ
- 母校のHPを確認する: 「卒業生の方へ」「各種証明書の発行について」というページを探します。
- 申請する: 窓口へ行くか、郵送で申請します(身分証明書の写しや手数料が必要です)。
- 受け取る: 通常、数日〜2週間程度かかります。
ここだけは注意!「開封厳禁」
発行された成績証明書は、**厳封(封筒に入って封印された状態)**で渡されます。
中身が気になるからといって、自分で開封してはいけません。 開封された証明書は「無効」となり、再発行が必要になります。そのまま履歴書と一緒に提出用封筒に入れてください。
廃校・統合されている場合
母校が閉校していたり、統合されていたりする場合は、**事務手続きを引き継いでいる機関(統合先の学校や、都道府県の管轄部署)**に問い合わせる必要があります。「証明書が取れないから応募できない」ということはないので、必ず確認しましょう。
4.結婚して「名字」が変わっている場合は?
在学時と現在の名字が異なる場合、証明書は基本的に「在学時の氏名(旧姓)」で発行されます。
この場合、提出先の病院が同一人物であることを確認できるよう、履歴書には旧姓も併記するか、別途「戸籍抄本」などの提出が必要になることがあります。
ただし、最近は戸籍抄本などを提示することで「新姓」で発行してくれる学校も増えています。申請時に学校へ相談してみるのがスムーズです。
5.まとめ:成績証明書は「過去の記録」。勝負は「今の実績」
「成績証明書の提出」というハードルを見て、応募を躊躇してしまうのは非常にもったいないことです。
採用担当者が見たいのは、学生時代の「優・良・可」の数ではなく、あなたがこれまで看護師として培ってきた**「経験」と、これからこの病院で働きたいという「熱意」**です。
成績証明書はあくまで事務的な手続きの一つと割り切り、早めに手配を済ませてしまいましょう。そして、書類選考対策の時間は、職務経歴書のブラッシュアップや志望動機の練り上げに注いでください。





