転職回数が多いと不利?看護師が「ジョブホッパー」のレッテルを剥がし、書類選考を突破するための逆転テクニック
「転職回数が5回を超えているから、書類で落とされるかもしれない」
「履歴書の職歴欄が足りなくて、書くのが恥ずかしい」
看護師としてキャリアを重ねる中で、人間関係やライフイベント、あるいはより良い環境を求めて転職を繰り返すことは珍しくありません。しかし、いざ次の職場を探そうとした時、積み重なった「転職回数」が重い足枷のように感じられ、応募を躊躇してしまう人が多くいます。
結論から言えば、転職回数が多いこと自体が直ちに不採用に直結するわけではありません。採用担当者が恐れているのは「回数」そのものではなく、そこから連想される「忍耐力のなさ」や「トラブルメーカーの可能性」です。
つまり、書類の書き方一つで、ネガティブな「飽きっぽい人」という印象を、ポジティブな「経験豊富な即戦力」へと変えることが可能です。本記事では、転職回数が多い看護師が書類選考を突破するための、戦略的な記述テクニックについて解説します。
1.採用担当者は「回数」の裏にある「一貫性」を見ている
一般的に、20代で3回以上、30代で5回以上の転職歴があると「多い」と判断されます。しかし、回数が多くても採用される人と、少なくても落とされる人がいます。その違いは「退職理由の一貫性」にあります。
採用担当者は以下の点をチェックしています。
- 辞めた理由に納得感があるか「結婚」「夫の転勤」「親の介護」といった不可抗力の理由や、「急性期から慢性期へ」「病棟から訪問看護へ」といった明確なキャリアチェンジの意図が見えれば、回数は問題視されません。
- 嫌なことから逃げ続けていないか毎回「人間関係」や「給与不満」で短期間(1年未満など)で辞めている場合、「うちに来てもすぐ辞めるだろう」と判断されます。
書類を作成する際は、過去の転職すべてを一本の線で繋ぎ、「今の自分になるために必要なステップだった」というストーリーを作ることが重要です。
2.職歴欄が埋まる…「職務経歴書」のまとめ方テクニック
転職回数が多いと、履歴書の職歴欄に行が入りきらない、職務経歴書が何枚にもなってしまうという悩みが発生します。
単に羅列するのではなく、読みやすく、かつアピールに繋がるまとめ方を工夫しましょう。
編年体式ではなく「キャリア式」を使う
時系列(編年体)で書くと、短期間で辞めた職場も目立ってしまいます。そこで、業務内容や分野ごとにまとめる「キャリア式」をお勧めします。
【記述例】
- 【急性期看護の経験(計7年)】
- A病院 脳神経外科(3年)
- B病院 循環器内科(2年)
- C病院 救命救急センター(2年)
- 業務内容:重症患者の全身管理、急変対応、リーダー業務…
- 【在宅・地域医療の経験(計3年)】
- D訪問看護ステーション(1年)
- Eクリニック(2年)
- 業務内容:単独訪問によるケア、家族指導、他職種連携…
このように「分野」でグルーピングすることで、「転職を繰り返した人」ではなく「2つの強みを持った多才な人」という印象を与えられます。
「一身上の都合」で終わらせない(履歴書)
履歴書の職歴欄でも、退職理由を工夫します。
単に「一身上の都合により退職」とだけ書くと、採用側は悪い想像(トラブルなど)をしてしまいます。スペースが許す限り、カッコ書きで理由を補足すると効果的です。
- 「一身上の都合により退職(結婚に伴う転居のため)」
- 「一身上の都合により退職(キャリアアップのため急性期病院へ転職)」
- 「一身上の都合により退職(親の介護に専念するため)」
正当な理由があることを明記するだけで、採用担当者の警戒心は大きく下がります。
3.転職回数を「強み」に変える自己PRの書き方
「一つの病院で長く働くこと」は美徳ですが、「複数の病院を知っていること」もまた、大きな武器になります。
転職回数が多いことをコンプレックスに感じる必要はありません。以下のような切り口で、堂々とアピールしてください。
① 「適応力・即戦力」をアピールする
「多くの職場を経験してきたため、新しい環境や人間関係、異なる業務フローに馴染むスピードには自信があります。電子カルテも複数メーカーの使用経験があり、貴院のシステムにも早期に適応可能です。」
→ 新しい人が入職した際、現場が一番心配するのは「馴染めるか」「教えるのが大変ではないか」です。ここをカバーできます。
② 「多様な視点・引き出しの多さ」をアピールする
「大学病院での高度医療から、個人クリニックでの地域密着の看護まで幅広く経験してきました。そのため、一つの疾患に対しても、急性期治療の視点と、退院後の生活の視点の両面からアセスメントを行うことができます。」
→ ジェネラリストとしての能力を強調します。
③ 「最後の転職」にする覚悟を示す
これが最も強力な言葉になります。
「様々な領域を経験し、自分自身の看護観と向き合ってきましたが、貴院の『患者様に寄り添う全人的ケア』に触れ、こここそが私の求めていた環境だと確信しました。これまでの経験の集大成として、貴院にて腰を据えて長く貢献したいと考えております。」
→ 「もう辞めない」「ここで骨を埋める」という覚悟を示すことで、採用担当者の最後の不安を払拭します。
4.「派遣」や「短期バイト」の扱いはどうする?
正規雇用の間の繋ぎとして、数ヶ月単位の派遣や応援ナースをしていた期間がある場合、それらを全て1行ずつ書くと職歴がさらに増えて見づらくなります。
この場合は、以下のようにまとめて記載することが許容されています。
- 「平成〇〇年〇月〜平成△△年△△月 株式会社〇〇(派遣会社)より、都内3箇所の病院にて病棟業務に従事」
ただし、試用期間で解雇されたり、数日で辞めてしまったりした職歴を隠すと「経歴詐称」になるリスクがあります。社会保険に加入していた履歴はごまかせないため、原則として記載し、面接でしっかりと事情(ミスマッチ等)を説明する準備をしておくのが誠実な対応です。
5.まとめ:過去は変えられないが、意味付けは変えられる
転職回数が多いという事実は変えられませんが、「なぜ転職したのか」「そこから何を得たのか」という「意味付け」は、今のあなたの言葉でいかようにも変えられます。
大切なのは、採用担当者に「この人は飽きっぽい」と思わせるのではなく、「いろいろあったけれど、最終的にうちの病院で活躍してくれそうだ」と思わせることです。
多様な経験を積んできたあなただからこそできる貢献が必ずあります。自信を持って、そのキャリアを「魅力的なストーリー」として書類に落とし込んでください。





