転職10回以上でも「採用したい」と思わせる。回数の多さを「経験値」に変えて書類選考を突破する逆転の履歴書戦略
「履歴書の職歴欄がもう足りない」「10回以上も転職している自分を採用してくれる病院なんてあるのだろうか」
転職回数が2桁に達すると、新しい職場を探すこと自体に罪悪感や諦めを感じてしまう看護師は少なくありません。一般的に、転職回数の多さは書類選考において大きなハンデとなります。採用担当者が「採用しても、どうせまたすぐに辞めるだろう」と警戒するからです。
しかし、結論から言えば、看護師資格という強力なライセンスがある限り、転職回数が10回を超えていても再就職は十分に可能です。 実際に、多くの現場を知るベテランとして歓迎されるケースも存在します。重要なのは、回数を隠すことではなく、その経歴を「豊富な臨床経験」と「高い適応能力」としてポジティブに再定義し、採用担当者の不安を払拭する書類を作成することです。
本記事では、転職回数10回以上の看護師が、書類選考の壁を乗り越え、次のキャリアを掴むための具体的な戦略について解説します。
1.「なぜ10回も辞めたのか」ではなく「なぜ次は辞めないのか」を語る
採用担当者が最も恐れているのは、あなたが過去に何度も辞めたこと自体ではなく、**「自院に入職しても、同じように短期間で辞めてしまう未来」**です。つまり、書類選考を通過するために必要なのは、過去の言い訳ではなく、「今度こそ長く働ける」という根拠(定着性の証明)です。
志望動機や本人希望欄では、以下の3つの要素を明確にしてください。
- 過去の退職理由の分析ができているか「人間関係」「給与」「忙しさ」など、辞めた理由は様々あるでしょう。しかし、それらを環境のせいにするのではなく、「自分は何を重視して働くべきだったのか」という自己分析ができていることを示します。
- 今回の転職における「覚悟」と「条件」「これまでの経験から、自分には〇〇な環境(例:慢性期でじっくり関わる看護)が合っていると確信しました。貴院はその環境が整っているため、ここを最後の職場とする覚悟です」と、迷いがないことを伝えます。
- ライフステージの変化もし可能なら、「子供の手が離れた」「親の介護が落ち着いた」など、これまで転職を繰り返さざるを得なかった要因が解消され、これからは腰を据えて働ける環境になったことをアピールするのは非常に有効です。
2.履歴書の「職歴欄が足りない問題」のスマートな解決法
10回以上の転職歴があると、市販の履歴書の職歴欄には書ききれません。しかし、職歴を省略したり、嘘をついたりすることは「経歴詐称」となり、解雇のリスクがあるため絶対にNGです。以下の方法ですっきりとまとめてください。
方法①:「別紙参照」を活用する
履歴書の職歴欄には、直近の職歴や主要な職歴のみを書き、末尾に「※詳細な職務経歴については、別紙『職務経歴書』をご参照ください」と記載します。これにより、履歴書が文字で真っ黒になるのを防ぎ、見栄えを良くすることができます。
方法②:職務経歴書で「キャリアの棚卸し」をする
職務経歴書では、全ての病院を羅列するだけでなく、**「経験した診療科・手技・役割」**でグルーピングして見せるのが効果的です。
- 時系列で書くのが基本ですが、多すぎる場合は「キャリア式」も検討「急性期経験(A病院、B病院、C病院)」「在宅・クリニック経験(Dクリニック、Eステーション)」のように、業務内容ごとにまとめて記載することで、「転々としている」印象を薄め、「幅広い領域を経験している」という印象を強めることができます。
3.10回の転職は「10個の現場を知る」という最強の武器になる
ネガティブに見られがちな転職回数ですが、視点を変えれば、他の看護師にはない強力な武器になります。自己PRでは、以下のポイントを堂々とアピールしてください。
強み①:圧倒的な「環境適応能力」
10回以上の転職を経験しているということは、10通りの電子カルテ、10通りの物品配置、10通りの人間関係の中に飛び込み、業務をこなしてきた実績があります。「新しい環境に馴染むのに時間がかからない」「どのような性格のスタッフとも円滑に連携できる」ことは、即戦力を求める現場では何よりの魅力です。
強み②:引き出しの多さと多角的な視点
「前の病院ではこうしていた」「あの施設ではこのやり方で効率化していた」という知識のストックが豊富です。一つのやり方に固執せず、状況に合わせて最適な看護を提供できる柔軟性をアピールしましょう。「複数の診療科を経験したことで、全身状態を包括的にアセスメントできる」という点も評価されます。
4.10回以上の経験者が歓迎される「狙い目」の職場
書類の書き方を工夫しても、やはり「転職回数3回まで」といった厳格な基準を持つ大学病院やブランド病院への転職はハードルが高いのが現実です。戦略的に「経験豊富なベテラン」を求めている職場を狙うのが賢明です。
- 訪問看護ステーション:様々な家庭環境に入り込む適応力と、一人で判断できる臨床経験が重宝されます。
- 有料老人ホーム・介護施設:医療処置の判断や、介護スタッフとの連携など、人生経験豊富な看護師が頼りにされる傾向があります。
- 精神科病院:多様な人生背景を持つ患者様に対し、様々な経験を持つ看護師の包容力が評価されることがあります。
- 派遣・応援ナース:「期間限定」で働くスタイルですが、即戦力が必須であり、転職回数の多さが「様々な現場を知っているプロ」としてプラスに評価されやすいフィールドです。ここでの実績を作ってから、気に入った職場で常勤になるというルートもあります。
「定着する意思」を書類に込める
10回以上の転職歴は、変えることのできない事実です。しかし、その事実をどう解釈し、未来にどう活かすかは、あなたの言葉次第で変えられます。
応募書類には、「豊富な経験で即戦力として貢献できること」そして何より「貴院の理念や環境に惚れ込み、ここで長く働き続けたいという強い意思」を込めてください。過去の多さは、それだけ多くの選択肢を知り、比較検討した結果、その病院を選んだという説得力にもなり得ます。自信を持って、あなたのキャリアを「価値」として伝えてください。





