「会ってみたい」と思わせる。看護師の職務経歴書は『実績の羅列』ではなく『未来の提案書』にせよ
「履歴書はなんとか書けたけれど、職務経歴書は何を書けばいいのか分からない」
「毎日ルーチンワークしかしていないのに、アピールできる実績なんてない」
転職活動において、多くの看護師が頭を抱えるのが**「職務経歴書」の作成です。
履歴書があなたの「プロフィール(氏名・住所・学歴)」を伝えるものだとすれば、職務経歴書はあなたの「商品価値(スキル・経験)」を売り込むためのプレゼンテーション資料**です。
採用担当者は、職務経歴書を見て「この人はうちの病院で活躍できそうか?」「即戦力になるか?」を判断します。ただ漫然と配属部署と業務内容を羅列するだけでは、書類選考という最初の関門を突破することはできません。
本記事では、採用担当者の目に留まり、面接へと繋がる「勝てる職務経歴書」の書き方と、自分の経験を魅力的に変換するテクニックについて徹底解説します。
1.履歴書とは違う。「職務経歴書」の役割と基本構成
まず大前提として、職務経歴書は「あなたがこれまで何をしてきたか」だけでなく、**「その経験を活かして、次の職場で何ができるか」**を伝える書類です。
看護師の職務経歴書に必要な基本項目は以下の通りです。
- 職務要約:これまでの経歴を200〜300文字程度で簡潔にまとめた「あらすじ」。
- 職務経歴:いつ、どこで、どんな規模の病院で、何をしてきたかの詳細。
- 活かせる知識・スキル:専門分野、資格、PCスキルなど。
- 自己PR:経験に基づいた強みと、入職後の貢献意欲。
これらをA4用紙1〜2枚に収めるのが一般的です。手書きよりもパソコン(Wordなど)で作成する方が、修正もしやすく、ビジネススキル(PCスキル)の証明にもなるため推奨されます。
2.「ルーチンワーク」を「実績」に変える数値化マジック
多くの看護師が「特別なことはしていません」と言いますが、それは書き方が謙虚すぎるだけです。
採用担当者が知りたいのは、「どれくらいの規模で、どれくらいの忙しさをこなしてきたか」という具体性です。業務内容は**「数字」**を使って具体化しましょう。
① 病院・病棟の規模を数字で書く
単に「内科病棟勤務」と書くのではなく、環境をイメージさせます。
- 「病床数:45床(看護配置 7:1)」
- 「平均在院日数:14日」
- 「1日の受け持ち患者数:7〜10名」
② 業務内容を具体的なアクションに変える
「検温、処置、記録」と書くだけでは不十分です。
- Before: 「新人指導を行った」
- After: 「プリセプターとして新人2名を担当。年間指導計画の作成とメンタルフォローを行い、2名とも離職せず独り立ちへ導いた」
- Before: 「委員会に参加した」
- After: 「感染対策リンクナースとして、病棟内の手指衛生遵守率向上のための勉強会を企画・実施した」
このように書くことで、「ただ業務をこなしていた人」から「目的意識を持って働いていた人」へと印象がガラリと変わります。
3.経験年数別・アピールの切り口
看護師としての経験年数によって、採用担当者が期待するポイントは異なります。自分のフェーズに合わせた書き方を意識してください。
【経験1〜3年目】「学ぶ姿勢」と「基礎力」
専門スキルよりも、基本的な看護技術が身についているか、素直さがあるかが見られます。
- ポイント:習得した技術チェックリストの内容や、勉強会への参加履歴を記載し、「基礎はできています」「学ぶ意欲が高いです」ということを強調します。
【経験4〜9年目】「リーダーシップ」と「効率性」
現場の主力として、リーダー業務や後輩指導、業務改善などの実績が求められます。
- ポイント:リーダー業務の経験年数、委員会活動での役割、多職種連携での調整役としてのエピソードを盛り込み、「組織の中核になれる」ことを示します。
【経験10年目以上】「マネジメント」と「専門性」
管理者としての視点や、特定の領域におけるスペシャリストとしての知見が期待されます。
- ポイント:「業務改善による残業時間の削減」「チームの目標達成率」など、経営的な視点や教育への貢献度をアピールします。認定看護師などの資格がない場合でも、特定分野の深掘り経験は強みになります。
4.自己PRは「貴院のニーズ」に合わせて書き換える
職務経歴書の最後にある「自己PR」は、使い回し厳禁です。応募先の病院が求めている人材像に合わせて、アピールする「手札」を変えてください。
急性期病院へ応募する場合
- キーワード: 「迅速な判断」「テキパキ動く」「スキルアップ」
- PR例:「前職の救急外来では、常に優先順位を判断し、多重課題に対応する力を養いました。貴院のような高度急性期の現場においても、冷静かつ迅速に行動し、チーム医療に貢献いたします。」
慢性期・療養型・訪問看護へ応募する場合
- キーワード: 「じっくり向き合う」「傾聴」「家族ケア」
- PR例:「患者様だけでなく、ご家族の不安にも寄り添う看護を大切にしてきました。退院支援の経験を活かし、患者様がその人らしく過ごせるよう、生活背景まで踏まえたケアを実践したいと考えています。」
クリニックへ応募する場合
- キーワード: 「接遇」「即戦力(手技)」「柔軟性」
- PR例:「正確な採血・点滴スキルには自信があります。また、少人数の職場ですので、看護業務に限らず、清掃や電話対応なども積極的に行い、円滑な運営に貢献したいと考えております。」
5.読みやすいレイアウトが「仕事ができる」印象を作る
内容は良くても、文字がぎっしり詰まっていて読みにくい職務経歴書は、それだけでマイナス評価です。看護師も記録やサマリーを書く機会が多いため、「読み手に配慮した文書作成能力」は見られています。
- 見出しをつける: 【職務要約】【職務経歴】【自己PR】など、パッと見て構成がわかるようにする。
- 箇条書きを使う: 文章でダラダラ書かず、業務内容は箇条書きにする。
- 余白を持たせる: 適度な改行や余白を作り、圧迫感をなくす。
6.まとめ:職務経歴書はあなたの「代理人」
面接官に会う前に、あなたに代わって「私を採用するとこんなメリットがありますよ」とプレゼンしてくれるのが職務経歴書です。
「大した経歴じゃないから」と謙遜する必要はありません。
あなたが日々、患者様のために悩み、走り回り、積み重ねてきたその経験は、書き方一つで輝く「実績」になります。
事実を具体的に、数字を交えて、そして相手のメリットになるように書く。
このポイントを押さえて職務経歴書をブラッシュアップし、自信を持って書類選考に挑んでください。





