美容師の職務経歴書 例文と書き方ガイド 異業種・同業種転職で使えるアピール術
美容師としての勤務経験は、カットやカラーといった専門技術だけでなく、高度な接客スキルや目標達成能力、マルチタスク能力など、ビジネスパーソンとして重要なスキルを多く含んでいます。しかし、職務経歴書を作成する際に、技術面ばかりをアピールしてしまい、自身の市場価値を十分に伝えきれていないケースが少なくありません。
特に異業種への転職や、大手企業へのキャリアアップを目指す場合、採用担当者は技術以外のビジネススキルに注目しています。ここでは、美容師の経験を魅力的な実績として言語化し、書類選考を通過するための職務経歴書の書き方と、状況別の具体的な例文について解説します。
美容師のスキルをビジネス用語に変換する重要性
美容師の業務は、一般企業の業務と非常に親和性が高いものです。しかし、業界用語や感覚的な表現のままでは、採用担当者にその価値が伝わりません。まずは、普段行っている業務をビジネス用語に変換して伝える意識を持つことが重要です。
カウンセリングは提案型営業
お客様の髪の悩みやなりたいイメージを聞き出し、プロの視点でスタイルを提案して満足してもらうプロセスは、営業職におけるヒアリングとソリューション(課題解決)提案そのものです。お客様の潜在的なニーズを引き出し、最適な解決策を提案して契約(指名)につなげる力があると書けば、立派な営業スキルになります。
店販は単価アップのための交渉力
シャンプーやトリートメントなどの店販商品を販売した経験は、強力なアピール材料です。これはビジネス用語で言うクロスセル(関連商品販売)やアップセル(より高価な商品の提案)にあたります。お客様との信頼関係をベースに、商品のメリットを伝えて購入していただく力は、販売職や営業職が最も欲しがる能力の一つです。
複数客の対応はマルチタスクと工程管理
スタイリストになると、自分の担当客と並行して、アシスタントの動きを確認し、カラーの放置時間を管理し、電話対応もしなければなりません。この状況をミスなく回す能力は、高度なタイムマネジメント能力やマルチタスク処理能力、全体を俯瞰する広い視野として評価されます。これは事務職や進行管理業務において非常に重宝されるスキルです。
採用担当者が知りたい店舗規模と実績の数値化
職務経歴書において、説得力を持たせるためには数字が不可欠です。採用担当者は、あなたがどのような環境で、どれくらいの実績を上げてきたかを客観的に知りたいと考えています。以下の項目を具体的な数字とともに記載することで、あなたの実力が可視化されます。
まず、勤務していた店舗の規模を明確にします。セット面数、スタッフ数、月間の平均来客数、客単価などを記載します。これにより、あなたがどれくらいの忙しさの中で働いていたか、どのような層のお客様を相手にしていたかが伝わります。
次に、個人の実績を詳細に記します。1日あたりの平均担当人数、月間個人売上、指名数、指名売上、店販の売上実績などを記載します。もし、店舗内で売上1位になった経験や、前年比で売上を大きく伸ばした実績があれば、その達成率や伸び率も併せて記載します。数字は嘘をつかないため、あなたの努力と成果を証明する最も確実な材料となります。
例文1 異業種(営業・事務など)へ転職する場合
異業種への転職を目指す場合は、専門的な技術よりも、ポータブルスキル(持ち運び可能な能力)を強調します。
職務要約
美容専門学校卒業後、都内の美容室にて5年間勤務しました。アシスタントを経てスタイリストとなり、月間約150名の接客施術を担当しました。顧客一人ひとりのライフスタイルに合わせた提案接客を徹底し、個人指名売上を前年比120パーセントに伸ばしました。また、店販リーダーとして在庫管理や販売促進の企画も担当し、店舗の利益率向上に貢献しました。接客で培った傾聴力と目標達成への執着心を活かし、貴社の営業職として貢献したいと考えています。
職務詳細
期間
20XX年4月から現在まで
会社名
株式会社〇〇(美容室〇〇運営)
担当業務
・お客様へのカウンセリング、施術(カット、カラー、パーマ等)
・予約管理、電話対応、レジ業務
・店販商品の在庫管理、発注、ディスプレイ変更
・後輩スタッフの技術指導、メンタルフォロー
・集客サイト(ホットペッパービューティー等)のブログ更新、スタイル写真撮影
実績と取り組み
・指名客数の増加
初回カウンセリングでのヒアリングを徹底し、施術後のアフターフォロー(DM送付など)を継続しました。その結果、指名客数を月間30名から80名へ増加させました。
・店販売上の向上
お客様の髪質改善を目的としたトリートメントのセット販売を強化し、店販コンテストで全店舗中3位に入賞しました。
自己PR
私の強みは、初対面のお客様とも短時間で信頼関係を築くコミュニケーション能力です。美容師として、幅広い年齢層のお客様に対し、会話の中から潜在的なニーズを汲み取ることを心がけてきました。また、厳しい売上目標に対しても、日々の行動計画を立てて粘り強く取り組むことができます。営業職は未経験ですが、この対人スキルと行動力を活かし、早期に戦力となれるよう尽力いたします。
例文2 美容業界内でキャリアアップを目指す場合
他の美容室や、美容メーカー、ディーラーなどへの転職を目指す場合は、即戦力としての技術力とマネジメント能力を強調します。
職務要約
トータルビューティーサロンにて6年間勤務し、トップスタイリストとして月間売上200万円を達成しました。技術指導責任者として、カリキュラムの作成やアシスタント5名の育成を担当し、デビューまでの期間を半年短縮させる成果を上げました。また、SNSを活用した集客にも注力し、Instagram経由で月間20名の新規客を獲得しました。これまでの経験を活かし、貴社の店長候補として店舗運営と人材育成に貢献したいと存じます。
職務詳細
期間
20XX年4月から現在まで
会社名
株式会社△△
担当業務
・サロンワーク全般(カット、カラー、特殊パーマ、ヘッドスパ等)
・技術カリキュラムの作成および査定官
・店舗の売上管理、材料費のコストコントロール
・SNS運用(Instagram、TikTok)によるブランディング
実績と取り組み
・生産性の向上
予約枠の最適化とアシスタントとの連携強化により、1日あたりの最大施術人数を増やし、店舗全体の回転率を向上させました。
・人材育成
技術マニュアルを動画化し、練習効率を上げました。これによりスタッフの離職率を低下させ、定着率の改善に寄与しました。
自己PR
私は、技術力と発信力を兼ね備えた美容師として、店舗のブランド価値を高めることに自信があります。常に最新のトレンドを研究し、それをサロンワークやSNS発信に落とし込むことで集客につなげてきました。また、チームビルディングにおいても、個々の強みを活かした役割分担を行うことで、組織全体のパフォーマンス最大化を目指します。
自己PRで伝えるべきマインドと人間性
職務経歴書の自己PR欄では、スキルだけでなく、美容師という仕事を通じて培った人間性やマインドセットを伝えます。
美容師は、長時間労働や立ち仕事といったハードな環境の中で、常に笑顔で接客を行う精神的・肉体的なタフさが求められる仕事です。体力に自信があり、忙しい状況でも粘り強く業務に取り組めるという点は、どのような職種でも歓迎される要素です。
また、お客様の喜びを自分の喜びとして感じられるというホスピタリティの高さや、常に流行をキャッチし技術を向上させようとする学習意欲の高さも、ビジネスパーソンとしての成長性を感じさせるポイントです。
美容師としての経験は、決して特殊なものではなく、ビジネスの基礎が詰まった貴重なキャリアです。自信を持ってその実績を職務経歴書に落とし込み、新たなステージでの活躍につなげてください。





