職務経歴書の特記事項は空白にせず有効活用して書類選考を突破する書き方

職務経歴書における特記事項の役割と重要性

転職活動において職務経歴書を作成する際、末尾に設けられることが多い特記事項の欄をどのように扱うべきか悩む方は少なくありません。自己PRや職務経歴の詳細は埋められたものの、特記事項には何を書けば正解なのか、あるいは空欄でも良いのかという疑問は多くの求職者が抱えています。この欄は、単なる備考欄として扱われがちですが、実は書類選考を通過するために非常に重要な役割を担っています。

特記事項の主な役割は、履歴書や職務経歴書のメイン項目だけでは伝えきれない事情や背景を補足説明することにあります。採用担当者は応募者の経歴に空白期間があったり、転職回数が多かったりすると、どうしても懸念を抱いてしまいます。そのような懸念材料に対して、あらかじめ納得のいく説明を加えておくことで、マイナス評価を防ぐ防波堤の役割を果たします。また、勤務条件に関するどうしても譲れない事情がある場合、それを誠実に伝えることで入社後のミスマッチを防ぐ効果もあります。特記事項を有効に活用することは、採用担当者に安心感を与え、面接へと進むための戦略的な手段となります。

特になしと書くよりもポジティブな情報を補足する意識を持つ

特記事項に書くべき特別な事情がない場合、特になしと書いても良いのかという点は頻繁に議論されます。基本的には特になしと記載してもマナー違反ではありませんし、それだけで不採用になることはありません。しかし、書類選考の競争率が高い場合、空欄や特になしという記述は、アピール機会の損失と捉えることもできます。採用担当者の目には、意欲が低いと映ってしまうリスクもゼロではありません。

もし書くべき事情がない場合でも、意欲や姿勢を示すスペースとして活用することをお勧めします。例えば、入社可能時期がいつでも可能であることを明記してフットワークの軽さをアピールしたり、現在取得に向けて勉強中の資格について触れて向上心を示したりすることも有効です。また、在職中のため電話に出にくい時間帯がある場合は、その旨と連絡がつきやすい時間帯を記載することで、採用担当者の手間を省く配慮を見せることができます。このように、ネガティブな事情がない場合でも、ポジティブな情報や配慮を記載することで、書類全体の完成度を高めることができます。

職歴の空白期間を前向きな理由で説明する書き方

職務経歴書の中で採用担当者が最も気にするポイントの一つが、離職期間、いわゆるブランクです。退職から次の就職までに数ヶ月以上の空白がある場合、何も説明がないと、就業意欲が低いのではないか、計画性がないのではないかと疑われてしまう可能性があります。特記事項は、この空白期間を正当化し、前向きな期間であったと定義づけるために最適な場所です。

例えば、資格取得のために勉強に専念していたのであれば、その旨と取得した資格、あるいは学習内容を具体的に記載します。また、家族の介護や自身の病気療養など、やむを得ない事情があった場合も、正直に記載することが信頼につながります。重要なのは、現在はその事情が解消されており、業務に支障がないことを合わせて明記することです。介護であれば施設への入所が決まったこと、病気であれば完治して医師の許可が出ていることを書き添えます。単に休んでいたのではなく、次への準備期間であったことや、現在は万全の体制であることを伝えることで、ブランクのマイナスイメージを払拭できます。

転居や家族の事情に伴う勤務条件の制約を誠実に伝える

転居を伴う転職や、育児・介護などで勤務地や勤務時間に制約がある場合、特記事項でその事情を説明しておくことは必須です。特に転居を伴う場合、採用担当者は面接に来られるのか、いつから勤務できるのかを心配します。転居予定の時期や、既に転居先が決まっていることなどを記載しておけば、スムーズに選考を進めることができます。

育児や介護による時短勤務の希望や、残業が難しいといった条件がある場合も、ここで触れておくべきです。ただし、単に条件を突きつけるような書き方にならないよう注意が必要です。あくまで事情を説明した上で、限られた時間の中で最大限の成果を出したいという意欲や、家族の協力が得られる日は残業が可能であるといった柔軟性も併せて記載します。企業側が受け入れ体制を検討するための材料を提供しつつ、働きたいという熱意をバランスよく伝える表現を心がけてください。

転職回数が多い場合の納得感のある補足説明

転職回数が多いことは、採用担当者に定着性を懸念させる要因となります。職務経歴の欄でそれぞれの退職理由を書くと煩雑になってしまう場合、特記事項を活用してキャリアの一貫性を説明する方法があります。それぞれの転職が、キャリアアップやスキルアップを目的とした前向きなものであったことを総括して記述します。

例えば、一貫して営業職としてのスキルを高めるために、より規模の大きな市場や異なる商材を求めて転職をしてきたというストーリーを伝えます。また、会社の倒産や事業撤退など、自身の責任ではない不可抗力による転職が含まれている場合は、その事実を明記することで、ジョブホッパーであるという誤解を解くことができます。転職回数の多さを経験の豊富さとしてポジティブに転換し、今回の転職こそがキャリアの集大成であり、長く腰を据えて働きたいという意思を表明する場として活用してください。

自己PRとの重複を避け事実に基づいた記述を心がける

特記事項を書く際に注意すべき点は、自己PR欄との混同です。特記事項はあくまで補足説明や連絡事項を記載する場所であり、感情的な熱意や抽象的な強みをアピールする場所ではありません。自己PR欄で書くべき内容を特記事項にも書いてしまうと、情報が重複し、読み手にとって整理されていない印象を与えてしまいます。

特記事項に記載する内容は、客観的な事実や具体的な状況説明に留めるのが鉄則です。資格の取得状況、入社可能日、健康状態、勤務条件に関する事実などを淡々と、かつ丁寧に記述します。感情に訴えるのではなく、採用担当者が採用判断をする上で必要となる付加情報を、漏れなく正確に提供するというスタンスで作成してください。読み手への配慮が行き届いた特記事項は、ビジネスパーソンとしての実務能力の高さや、誠実な人柄を証明する材料となります。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
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