個人事業主の経験を武器にする履歴書職歴欄の書き方とアピール戦略
個人事業主としての期間は立派なキャリアであり空白期間ではありません
会社員から独立して個人事業主として働いた後に、再び企業への就職(再就職)を目指すというキャリアパスは珍しいものではありません。しかし、いざ履歴書を作成しようとした時に、個人事業主としての期間をどのように書けばよいのか悩む方は非常に多くいらっしゃいます。会社員とは異なり入社や退社という概念がないため、書き方を間違えると空白期間(ブランク)のように見えたり、フリーターと同じような扱いを受けたりするリスクがあるからです。
まず認識していただきたいのは、個人事業主として自身の力で事業を営んだ経験は、ビジネスパーソンとして非常に価値のあるキャリアであるということです。営業活動から実務、経理、税務に至るまでを一人でこなした経験は、会社員では得難い経営者視点やマネジメント能力の証明になります。履歴書の職歴欄では、この期間を曖昧にせず、正しい用語と表現を用いて記載することで、即戦力としての評価を獲得することが可能です。ここでは、個人事業主ならではの書き方のルールと、企業に響くアピール方法について解説します。
入社ではなく開業、退社ではなく廃業という用語を使います
履歴書の職歴欄を書く際、最も基本的かつ重要なのが用語の選び方です。個人事業主の場合、どこかの会社に入るわけではないため入社という言葉は使いません。代わりに、税務署へ開業届を提出した、あるいは事業を開始したタイミングで開業という言葉を使用します。書き方としては、個人事業主として開業と記載するのが一般的です。もし屋号(お店の名前や事業所名)がある場合は、屋号とともに開業と記載することで、より事業の実態が伝わりやすくなります。
また、事業を辞めて就職する場合は、退社ではなく廃業という言葉を使います。一身上の都合により廃業と記載することで、事業を正式に畳んで就職活動に臨んでいることが伝わります。もし、事業を完全に辞めるのではなく、副業として継続する予定である場合は、廃業とは書かずに現在に至ると記載し、本人希望記入欄などで副業としての継続を希望する旨を補足します。用語を正しく使い分けることは、ビジネスの基本を理解していることの証明になります。
具体的な事業内容と屋号を記載して何屋かを明確にします
開業の一言だけでは、あなたがどのような仕事をしてきたのかが採用担当者には伝わりません。特に個人事業主の場合、職種や業種は多岐にわたります。そのため、開業の事実を記載した横、あるいは次の行に、具体的な職種や事業内容を明記することが必須です。例えば、屋号〇〇デザインを開業(Webサイト制作およびグラフィックデザイン事業)といった具合です。
屋号がないフリーランスの方であっても、個人事業主として開業(フリーランスのエンジニアとして活動)のように、括弧書きで職種を補足します。さらにスペースに余裕があれば、主な取引先(法人・個人)や、担当した案件の規模感などを書き添えることで、ビジネスとしての実態をアピールできます。単に好きなことをしていたのではなく、顧客に対して価値を提供し、対価を得ていたプロフェッショナルであることを強調する書き方を心がけてください。
実績を数値で示し経営者視点を持っていることをアピールする
企業が元個人事業主を採用する際に期待するのは、専門スキルに加えて、コスト意識や売上へのコミットメントといった経営者感覚です。職歴欄のアピールとして、具体的な実績を数値で記載することは非常に効果的です。年商規模や取引社数、リピート率、WebサイトのPV数など、客観的に評価できる指標を盛り込みます。
例えば、営業代行事業に従事し、初年度で〇〇社の新規開拓に成功や、ECサイト運営にて月商〇〇万円を達成といった記述です。会社員時代の実績と異なり、これらはすべてあなた自身の実力で勝ち取った成果です。数値を示すことで、事業を軌道に乗せるための行動力や課題解決能力があることを証明できます。もし事業があまりうまくいかなかった場合でも、どのような工夫をして改善を図ったかというプロセスを職務経歴書で補足することで、失敗から学ぶ姿勢を評価してもらうことができます。
再就職の理由をポジティブに伝え組織への適応力を示す
採用担当者が元個人事業主に対して抱く最大の懸念は、組織に馴染めるか、上司の指示に従えるかという点です。自由な働き方を知っている分、組織のルールを窮屈に感じるのではないかと心配されることがあります。この懸念を払拭するためには、なぜ今、個人事業主を辞めて会社員に戻るのかという理由を、ポジティブなストーリーとして伝える必要があります。
履歴書の備考欄や志望動機欄、あるいは職務経歴書の自己PRを活用し、個人での活動を通じて、チームで大きなプロジェクトに取り組む重要性を再認識しましたや、自身の専門スキルを、より規模の大きな組織の中で発揮し社会に貢献したいと考えましたといった前向きな動機を説明します。廃業をネガティブな撤退としてではなく、次のステージへ進むための戦略的な転身として位置づけることで、採用担当者に安心感と期待感を与えることができます。
詳細は職務経歴書に譲り履歴書は見やすさを優先する
個人事業主としての活動は多岐にわたるため、すべてを履歴書の職歴欄に書こうとすると情報過多になりがちです。履歴書はあくまでキャリアの概略(あらすじ)を伝える書類と割り切り、入社(開業)と退社(廃業)の時系列、および主な事業内容を簡潔に記載することに留めます。
その分、具体的なプロジェクトの内容や、獲得したスキル、苦労したエピソードなどは、職務経歴書でたっぷりと記述します。履歴書でどのような事業主であったかの全体像を示し、職務経歴書でその中身の濃さを証明するという役割分担を意識してください。整然と書かれた履歴書は、個人事業主時代に培った事務処理能力や、相手に分かりやすく伝えるコミュニケーション能力の高さを示す材料ともなります。自信を持って経験を書き記し、再就職という新たなスタートを成功させてください。





