飲食店の書類選考を突破する履歴書志望動機の書き方と経験別例文

飲食業界は常に人材が求められている業界ですが、人気店や条件の良い求人には多くの応募者が殺到します。そのため、単に料理が好き、接客が好きという理由だけでは、他の応募者と差別化を図ることは難しくなります。採用担当者が求めているのは、そのお店のファンではなく、お店の利益に貢献し、チームの一員として活躍してくれるスタッフです。ここでは、飲食店への転職を目指す方に向けて、採用担当者の心を掴む志望動機の書き方と、未経験者や経験者など状況に合わせた具体的な例文について詳しく解説します。

飲食店の採用担当者が志望動機で重視する3つの視点

飲食店における採用選考では、他の業界とは少し異なる視点で応募者の適性が判断されます。採用担当者が履歴書の志望動機欄から読み取ろうとしているのは、主に以下の3つの要素です。これらを含めることで、説得力のある文章を構成することができます。

お店のコンセプトや雰囲気への理解と共感

数ある飲食店の中から、なぜそのお店を選んだのかという理由は非常に重要です。大衆居酒屋と高級フレンチでは求められる接客スタイルが全く異なります。そのお店が大切にしている顧客層やサービス方針、料理へのこだわりを正しく理解し、それに共感していることを伝える必要があります。

接客や調理に対する適性と貢献意欲

未経験であっても、過去の経験から活かせるスキルがあるかをチェックしています。接客業であればコミュニケーション能力や体力、調理スタッフであれば手際の良さやチームワークなどが評価されます。自分がお店に入ったらどのような貢献ができるかを具体的にイメージさせることが大切です。

長く働き続けられる定着性

飲食業界は離職率が高い傾向にあるため、採用担当者はすぐに辞めないかどうかを慎重に見極めます。通いやすい立地であることや、将来独立したいという明確な目標があることなど、長く働くための根拠を提示することで安心感を与えることができます。

お店のファンであることをプロの視点に変換する書き方

応募のきっかけとして、以前客として利用して感動したからという理由は非常に有効です。しかし、単に料理が美味しかった、雰囲気が良かったという感想で終わってしまっては、お客様目線のままです。これを働く側の視点に変換することが重要です。

例えば、料理が美味しかったという感想は、この味を提供する側になり、多くのお客様に感動を届けたいという意欲に変換します。また、接客が良かったという感想は、スタッフの方の細やかな気配りに感銘を受け、私もそのような質の高いサービスを提供できる人材になりたいという目標に変換します。これにより、単なるファン心理ではなく、プロフェッショナルとしての自覚を持った志望動機になります。

【未経験者向け】異業種から飲食店へ転職する場合の例文

未経験から飲食業界に挑戦する場合は、前職で培ったポータブルスキル（持ち運び可能な能力）をアピールします。営業職や販売職であれば顧客対応力、事務職であれば正確性や効率化のスキルなどが活かせます。

接客・ホールスタッフ志望の例文

前職ではアパレル販売員として3年間勤務し、お客様一人ひとりのニーズに合わせた提案と、心地よい空間作りを心がけてまいりました。その中で、よりダイレクトにお客様の反応を感じられ、食を通じて幸福な時間を提供できる飲食店の仕事に魅力を感じ、志望いたしました。貴店を客として利用した際、スタッフの皆様の温かい笑顔と連携の取れた動きに感動しました。未経験ではありますが、前職で培った観察力とホスピタリティを活かし、貴店のファンを増やすことに貢献したいと考えております。

調理・キッチンスタッフ志望の例文

前職では製造業のラインスタッフとして、正確かつ迅速に作業を行う業務に従事してまいりました。趣味で料理を続ける中で、プロの技術を身につけ、お客様に喜んでいただける料理を提供したいという思いが強くなり、調理スタッフへの転身を決意いたしました。貴店の素材の味を最大限に活かす調理法と、季節感あふれるメニュー構成に深く共感しております。製造業で培った集中力と、決められた手順を遵守する真面目さを活かし、一日も早く戦力となれるよう技術の習得に励みます。

【経験者向け】キャリアアップやジャンル変更を目指す場合の例文

飲食業界での経験がある場合は、即戦力としての実力をアピールするとともに、なぜ環境を変えたいのかという前向きな理由を明確にします。

店長・マネージャー候補志望の例文

現在はカジュアルイタリアンの店舗で、ホール責任者として接客およびアルバイトスタッフの教育を担当しております。現場での接客スキルには自信がありますが、より経営に近い視点で店舗運営に携わりたいと考え、貴社を志望いたしました。貴社は多店舗展開を進めながらも、各店舗の個性を尊重する運営方針をとられており、私の目指す地域密着型の店作りが実現できる環境であると感じております。これまでのリーダー経験を活かし、スタッフが生き生きと働ける環境を整え、貴店の売上拡大に貢献いたします。

異なる業態へ挑戦する場合の例文

これまで5年間、居酒屋のキッチンスタッフとして調理全般を担当してまいりました。スピードと効率が求められる環境で、チームワークの大切さを学びましたが、今後は一皿一皿によりこだわりを持ち、専門的な技術を磨ける環境で働きたいと考え、貴店のフレンチ部門を志望いたしました。貴店の妥協のない食材選びと、芸術的な盛り付けに以前から憧れを抱いておりました。居酒屋で培った手際の良さと体力を土台にしつつ、ゼロからフランス料理の技法を学び、貴店の味を支える料理人を目指します。

採用担当者に懸念を抱かせる避けるべき表現

志望動機を書く際に注意すべき点として、以下のような表現は避けるのが賢明です。

勉強させていただきたいという受け身の姿勢

未経験者であっても、給与をもらいながら学ぶというスタンスは敬遠されます。自ら学び取り、貢献するという能動的な姿勢を示すことが大切です。

将来独立したいことだけを強調する

独立志向は向上心の表れとして評価される場合もありますが、書き方によってはノウハウを盗んだらすぐに辞めてしまうのではないかと警戒されるリスクがあります。あくまで、そのお店に貢献する過程で実力をつけたいという文脈で伝えるようにします。

楽そうだから、家から近いからという条件面のみの理由

家から近いことは定着率の観点でプラスですが、それだけを志望動機にするのは仕事への熱意が低いと判断されます。必ず仕事内容への興味や適性とセットで伝えるようにしてください。

履歴書の志望動機は、あなたの熱意と適性を伝えるためのプレゼンテーションです。お店の特徴をしっかりとリサーチし、自分の言葉で誠実に思いを伝えることで、採用担当者に一緒に働きたいと思わせる一枚を作成してください。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
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