履歴書の志望動機が「ない」場合に選ぶべきフォーマットと採用につなげる書き方の工夫
転職活動において、数多くの求人に応募していると、すべての企業に対して熱烈な志望動機を持つことが難しい場面に遭遇することがあります。「自宅から近い」「給与が良い」「なんとなく雰囲気が良さそう」といった理由が本音であり、履歴書に書くべき立派な動機が思い浮かばないという悩みは多くの求職者が抱えています。しかし、だからといって「志望動機なし」として提出するのは書類選考において大きなマイナスとなります。そのような窮地を脱するためには、文章をひねり出す努力とともに、使用する履歴書の「フォーマット(様式)」を見直すことが非常に有効な戦略となります。ここでは、志望動機が書けない時に選ぶべき履歴書のフォーマットや、限られたスペースで採用担当者に納得感を与える書き方について詳しく解説します。
志望動機欄を「特になし」や空欄で提出することのリスク
まず大前提として理解しておくべきことは、どのような履歴書フォーマットを使用するにせよ、志望動機の欄を空欄のままにしたり、「特になし」と記入して提出したりすることは絶対に避けるべきであるという点です。採用担当者にとって志望動機は、応募者の熱意や自社への定着性を測るための最も重要な指標の一つです。ここが空白であるということは、相手企業に対して「興味がありません」「とりあえず応募しただけです」と宣言しているのと同じことになります。どれほど優れた経歴やスキルを持っていたとしても、意欲が感じられない人物を採用したいと考える企業はありません。また、ビジネス文書において必須項目を埋めないという行為自体が、ビジネスマナーの欠如や仕事への雑な姿勢とみなされるリスクも高いため、何かしらの記述を行うことは必須条件となります。
志望動機が思いつかない時は履歴書のフォーマット自体を変更する
一般的に市販されている履歴書や、インターネットでダウンロードできるテンプレートの多くは「JIS規格」と呼ばれる標準的なフォーマットに基づいています。このJIS規格の履歴書は、志望動機欄が比較的大きく取られていることが特徴です。そのため、書くことがない状態でこのフォーマットを使用すると、空白が目立ってしまい、苦し紛れの薄い内容になってしまうことがあります。そこで有効なのが、履歴書のフォーマット自体を別のものに変更することです。実は履歴書にはJIS規格以外にも、転職者向けに特化したものや、自己PRに重きを置いたものなど、多種多様な様式が存在します。自分の状況に合わせて、書きやすいフォーマットを選ぶことは、立派な戦略の一つです。
志望動機欄が小さいまたは自己PR欄と統合された様式の活用
志望動機がどうしても思いつかない場合におすすめなのが、「志望動機欄が小さい」または「自己PR欄と志望動機欄がセットになっている」タイプの履歴書フォーマットです。転職活動用の履歴書として販売されているものの中には、職務経歴の記入欄を充実させる代わりに、志望動機のスペースを数行程度に抑えたものがあります。このタイプであれば、100文字から150文字程度の簡潔な理由でも枠が埋まるため、空白によるマイナス印象を避けることができます。また、自己PR欄と統合されているタイプであれば、自分の強みやスキルを中心に記述し、最後に「このスキルを貴社で活かしたい」と結ぶだけで自然な文章構成になります。これならば、企業への熱い思いを語る必要はなく、自分の能力を売り込むことに集中できるため、筆が進みやすくなります。
本音が「条件面」だけの場合に志望動機を構成する変換テクニック
フォーマットを変えてスペースを小さくしても、書く内容が「家から近い」「給料が良い」といった条件面しかない場合、それをそのまま書くわけにはいきません。この場合は、本音の条件を「企業側のメリット」や「意欲」に変換して記載するテクニックを使います。例えば、「家から近い」という理由は、「通勤時間が短いため、業務に集中しやすく、長く安定して勤務できる」という定着率のアピールに変換します。「給料が良い」という理由は、「成果を正当に評価する貴社の方針に魅力を感じ、高い目標を持って貢献したい」という意欲に変換します。「残業が少なそう」という理由は、「効率的な業務運営を重視する社風に惹かれ、限られた時間内で最大の成果を出したい」と言い換えます。このように視点を変えることで、特別な思い入れがなくても、ビジネスライクで説得力のある志望動機を作成することが可能です。
面接を見据えて最低限の熱意を伝えるための準備
履歴書のフォーマットを工夫して書類選考を通過したとしても、その後の面接では必ず「なぜ当社なのか」と問われます。そのため、履歴書作成の段階で、面接でも通用する最低限のロジックを組み立てておくことが重要です。おすすめなのは、「なぜその会社に入りたいか(テイク)」ではなく、「自分が入社したら何ができるか(ギブ)」という貢献の視点で一貫させることです。「前職の〇〇の経験を活かして、貴社の〇〇業務に貢献できると考えたため志望しました」という構成であれば、会社への愛を語る必要はなく、自分のスキルと業務のマッチングを語るだけで済みます。これならば、志望動機欄が小さい履歴書であっても、中身の詰まったプロフェッショナルな印象を与えることができます。自分に合ったフォーマットを選び、戦略的に言葉を選ぶことで、無理なく自信を持って提出できる応募書類を完成させてください。





