履歴書写真のレタッチはどこまで許される？採用担当者に好印象を与える補正の境界線

転職活動における履歴書の写真は、応募者の第一印象を決定づける重要な要素です。最近ではデジタル技術の進化により、写真館やアプリで手軽に肌をきれいにしたり、顔の輪郭を整えたりする「レタッチ（修整）」が可能になりました。しかし、どこまで修正してよいのか、やりすぎるとバレるのではないかという不安を感じる方も少なくありません。履歴書写真は、自分を良く見せたいという願望と、本人確認という証明写真の役割との間でバランスを取る必要があります。ここでは、採用担当者に好印象を与えるための適切なレタッチの範囲と、やってはいけない過度な加工の境界線について詳しく解説します。

レタッチは「整形」ではなく「身だしなみ」の一環と捉える

まず前提として、履歴書写真におけるレタッチは、決して悪いことではありません。むしろ、適切な補正は「デジタルな身だしなみ」として推奨される傾向にあります。例えば、撮影当日に突然できてしまったニキビや、寝不足による目の下のクマ、髭剃り負けによる肌の赤みなどは、本来のあなたの姿ではありません。これらをレタッチで目立たなくすることは、清潔感を高め、健康的で明るい印象を伝えるために有効な手段です。採用担当者も、写真が多少きれいに整えられていることに対してネガティブな感情を持つことはありません。重要なのは、その補正が「実物よりも良く見せるための加工（整形）」ではなく、「マイナス要素を取り除いて本来の姿に戻すための補正（身だしなみ）」であるかどうかという点です。

許容される補正の範囲と具体的なポイント

好印象を与えるための許容されるレタッチ範囲は、主に「肌の質感」「髪の乱れ」「服装のシワ」の3点です。肌については、ニキビ跡やシミ、クマを薄くし、肌のトーンを均一に整える程度であれば問題ありません。これにより、清潔感と若々しさが生まれます。髪に関しては、頭頂部から飛び出したアホ毛や、顔にかかってしまった後れ毛を消すことで、非常に洗練された印象になります。また、スーツの襟元のヨレや、ネクタイのわずかな曲がりを修正することも、きちんとした性格をアピールする上で効果的です。左右の肩の高さが違う場合にバランスを整えることも、姿勢を良く見せるために有効です。このように、あくまで清潔感を損なうノイズを除去する作業であれば、ビジネスマナーの範囲内として好意的に受け取られます。

採用担当者に不信感を与える過度な加工のリスク

一方で、顔のパーツそのものを変えてしまうような過度な加工は絶対に避けるべきです。目を大きくする、鼻を高くする、顎を極端に削って小顔にする、といった加工は、もはや本人確認の機能を果たさなくなります。最近のスマートフォンアプリによる加工は、肌を陶器のようにツルツルにしすぎたり、目が宇宙人のように大きくなったりと、不自然な仕上がりになりがちです。採用担当者は多くの履歴書を見ているため、こうした不自然な違和感をすぐに見抜きます。そして何より最大のリスクは、面接当日に実物と対面した際に生じる「ギャップ」です。写真と実物が別人のようであれば、「自分を良く見せようと嘘をつく人物」「コンプレックスが強く自信がない人物」という不信感を抱かれ、面接のスタート時点からマイナスの評価を受けてしまうことになります。

ホクロやシワを消すかどうかの判断基準

レタッチをする際に判断に迷うのが、ホクロや深いシワの扱いです。基本的に、顔の印象を大きく左右する特徴的なホクロは消さないほうが無難です。それがあなたの個性であり、本人確認の重要な要素だからです。ただし、汚れのように見える小さなシミや、一時的な肌荒れであれば消しても問題ありません。シワについても同様で、ほうれい線を完全に消してしまうと、顔の立体感がなくなり、不自然な能面のようになってしまいます。年齢相応のシワは、経験や貫禄としてプラスに働くこともあります。もし気になりすぎる場合は、完全に消すのではなく「薄くする」「影を飛ばす」程度に留めるのが賢明です。あくまで自然な人間らしさを残すことが、信頼感のある写真に仕上げるコツです。

アプリでの自作よりもプロの技術に頼るべき理由

費用の節約や手軽さから、スマホアプリで撮影して自分で加工しようとする方もいますが、転職活動用の写真としてはリスクが高いと言わざるを得ません。アプリの自動補正機能は、若年層のトレンドに合わせて「盛る」ことに特化しているものが多く、ビジネスに適した自然な補正が難しいからです。確実な仕上がりを求めるのであれば、写真館やフォトスタジオのレタッチサービスを利用することを強くおすすめします。プロのカメラマンやレタッチャーは、骨格や光の当たり方を計算した上で、違和感のない自然な補正を行ってくれます。「健康的に見せたい」「意志が強く見えるようにしたい」といった要望を伝えれば、あなたの魅力を最大限に引き出しつつ、面接で会ったときにも違和感のない、絶妙なバランスの一枚を仕上げてくれます。

レタッチは自信を持って面接に挑むためのツール

最終的に、レタッチをするかどうか、どこまでやるかを決めるのはあなた自身ですが、その目的は「相手を騙すこと」ではなく「自信を持って選考に臨むこと」にあるはずです。肌荒れが気になって面接でうつむきがちになるくらいなら、きれいにレタッチした写真を使って自信を持ち、堂々と振る舞うほうが結果的に良い印象を与えます。写真はあくまで入り口に過ぎません。過度な加工でハードルを上げすぎることなく、今のあなたのベストな状態を映し出し、採用担当者に「会ってみたい」と思わせる清潔感のある写真を準備してください。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
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