職務経歴書における取引先（クライアント）の書き方

転職活動で使用する職務経歴書は、ご自身の経験や実績を具体的に示すための重要な書類であります。特に、営業職、コンサルティング職、ITエンジニア、あるいはクリエイティブ職など、特定の取引先（クライアント）と深く関わる業務を経験してきた方にとって、その実績の示し方は、ご自身のスキルを伝える上で大きなポイントとなります。

業務経験の具体性としての取引先情報

採用担当者が職務経歴書を読む際、ご自身が「どのような業務をしていたか」に加えて、「どのような相手（取引先）と仕事をしてきたか」という点にも注目します。ご自身が関わってきた取引先の概要を示すことは、ご自身の業務経験の規模感や、どの業界の知見を持っているのかを具体的に伝えるための有効な情報となります。

守秘義務（秘密保持）への最大限の配慮

ご自身の経験を具体的に示したいという思いから、取引先の企業名をそのまま記載したいと考えるかもしれません。しかし、ここで最も注意しなければならないのが「守秘義務（秘密保持契約）」であります。在籍していた企業や取引先との契約において、許可なく取引先の具体的な名称を外部に公表することは、契約違反や情報漏洩にあたる可能性が非常に高いであります。職務経歴書に実名を記載することは、ご自身の職業倫理やコンプライアンス意識を疑われる原因ともなり得るため、原則として避けるべきであります。

取引先を「匿名化」する具体的な書き方

採用担当者に経験の価値を伝えつつ、守秘義務も守るためには、取引先を「匿名化」して記述する方法が一般的であります。具体的な社名を伏せたままでも、ご自身の経験のレベルを示すことは可能であります。

業界や業種で示す方法

どのような業界の企業を相手にしていたのかを記述します。例えば、「大手総合商社向け」「国内自動車メーカー」「金融機関（銀行・証券）」「官公庁・地方自治体」といった形で、業界や業種で示します。

企業規模で示す方法

取引先の規模感を伝えることで、ご自身が対応していた業務のレベルを推測してもらう方法もあります。「従業員数〇〇名規模の製造業」「年商〇〇円規模の小売業」「東証プライム上場企業」といった表現が考えられます。

匿名化が採用担当者に伝える情報

このように取引先を匿名化して記載することで、採用担当者は、ご自身が「大企業との折衝経験が豊富である」あるいは「〇〇業界の商習慣に精通している」といった判断をすることができます。大切なのは、具体的な名前ではなく、ご自身がどのような環境で実績を上げてきたかを伝えることであります。

誠実な情報開示が信頼に繋がる

守秘義務を遵守するために、取引先名を記載しないという判断は、決してマイナスの評価にはなりません。むしろ、ビジネスにおける重要なルールを理解し、機密情報を厳格に守れる「信頼できる人物」であるという証明にもなります。ご自身の経験を誠実に、かつ適切に表現することが、採用担当者との信頼関係を築く第一歩となります。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
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