職務経歴書における表現の工夫と「大げさ」の境界線
応募書類でご自身を良く見せたい心理
転職活動において、ご自身の経験やスキルを最大限にアピールし、採用担当者の関心を引きたいと考えるのは自然な心理です。書類選考を通過したいという強い思いから、ご自身の経歴を少しでも良く見せようと、表現に工夫を凝らすことは大切な作業です。しかし、その工夫が行き過ぎてしまうと、意図せず「大げさな表現」になってしまうことがあります。
「大げさな表現」がもたらす信頼の欠如
ご自身の能力を過度に誇張したり、事実と異なる実績を記載したりすることは、「大げさ」な表現と受け取られます。採用担当者は日々多くの職務経歴書に目を通しており、その経験から、あまりにも現実離れした記述や、具体性に欠ける華美な表現には、かえって不信感を抱く可能性があります。
面接で問われる具体的なプロセス
仮に「大げさな表現」を用いた書類で選考を通過できたとしても、次の面接の段階で必ず問題が生じます。面接官は、職務経歴書に記載された内容、特に優れた実績やスキルについて、その背景やプロセス、ご自身がどのように工夫し、どのような困難を乗り越えたのかを具体的に深掘りして質問します。事実に基づいていない誇張は、その質問に論理的に答えることを困難にし、結果としてご自身の信頼を失うことにつながります。
「誇張」と「虚偽」の危険性
事実を過度に膨らませる「誇張(大げさ)」は、事実ではないことを記載する「虚偽(嘘)」と、受け取る側にとっては大差ありません。どちらもご自身の誠実さを疑われる原因となり、たとえ入社できたとしても、後に事実と異なることが発覚した場合、深刻な問題に発展する可能性もあります。
「大げさ」ではなく「効果的な表現」を選ぶ
ご自身の経験を魅力的に伝えるために必要なのは、誇張ではありません。事実に基づいた上で、「表現を工夫する」ことです。同じ経験や実績でも、言葉の選び方や切り口を変えるだけで、採用担当者に与える印象は大きく変わります。
事実を「具体化」するアピール
ご自身の強みを伝える最善の方法は、「具体化」です。例えば、単に「売上に大きく貢献した」と書くのではなく、「どのような顧客層に対し、どのような提案活動を工夫し、結果としてチームの目標達成率〇%に寄与した」と記述します。具体的な行動や数値を伴った事実は、誇張に頼るよりもはるかに強い説得力を持ちます。
経験の価値を見出し「言い換える」力
目立った実績や役職経験がないと感じる場合でも、日々の業務の中で培ったスキルは必ずあります。例えば「電話対応」は「傾聴力と的確な問題把握能力」、「後輩への指導」は「OJTを通じた指導力と伝達能力」といったように、ご自身の経験の価値をご自身で見出し、応募先で活かせる能力として「言い換える」ことが重要です。
誠実な記述がキャリアを築く
職務経歴書は、ご自身がこれまで歩んできたキャリアを誠実に伝えるための書類です。誇張に頼るのではなく、ご自身の経験と真摯に向き合い、事実を具体的かつ効果的に伝える姿勢こそが、採用担当者との信頼関係を築く第一歩です。





