短期離職があっても書類選考は通過する。職務経歴書の職務要約でマイナスをプラスに変える書き方と例文
「入社して数ヶ月で退職してしまった」「試用期間で辞めてしまった」という短期離職の経歴がある場合、転職活動において大きな不安要素になります。特に職務経歴書の冒頭にある「職務要約」で、この事実をどのように扱うべきか悩む方は少なくありません。しかし、採用担当者が見ているのは、あくまで「自社で活躍できる人材かどうか」という点です。書き方の工夫次第で、短期離職のネガティブな印象を薄め、むしろ前向きなキャリア選択であったと印象づけることは十分に可能です。ここでは、短期離職の経歴を持つ方が書類選考を通過するために知っておくべき職務要約の書き方のポイントと、状況別の具体的な例文を紹介します。
採用担当者は短期離職のここを見ている
まず理解しておくべきなのは、採用担当者が短期離職の経歴に対して抱く懸念点です。主に以下の2点を確認しようとしています。
- すぐに辞める癖がないか(定着性)「嫌なことがあるとすぐに逃げ出すのではないか」「人間関係を築くのが苦手なのではないか」という懸念です。これを払拭するには、離職が一時の感情的なものではなく、キャリアの一貫性を求めた結果であることや、次は長く働きたいという意思を示す必要があります。
- 実務能力はあるか(即戦力性)短い期間で辞めているため、スキルが身についていないのではないかと疑われます。これをカバーするには、在籍期間の長さではなく、過去のキャリア全体を通じた「経験年数の合計」や「保有スキル」を強調することが重要です。
短期離職を目立たせない職務要約の構成テクニック
職務要約の最適な文字数は200文字から300文字程度です。この限られたスペースの中で、あえて短期離職の事実に多くの文字数を割く必要はありません。以下のテクニックを使って、ポジティブな要素に焦点を当てます。
1. 通算年数で表記する
直近が短期離職であっても、それ以前に長く勤めた経験があるなら、それらを合算して表記します。「A社で3年、B社で3ヶ月」と書くのではなく、「約3年間にわたり販売職に従事」とまとめることで、キャリアの厚みを強調できます。
2. 「なぜ辞めたか」より「何ができるか」を書く
要約の段階で詳しい退職理由(言い訳)を書く必要はありません。ネガティブな事情は省き、「どのようなスキルを持ち、貴社でどう貢献できるか」という未来の話を中心に構成します。
3. 短期離職を「前向きな軌道修正」と定義する
もし触れる必要がある場合は、「自身のキャリアプランとの不一致に気づき、早期に方向修正を行った」というスタンスをとります。失敗ではなく、適正な環境を求めた結果のアクションであると伝えます。
【直近が短期離職】過去のキャリアを強調する例文
直近の会社を短期で辞めてしまったが、その前にはある程度長いキャリアがある場合の例文です。直近の詳細はさらりと流し、メインのキャリアを厚く書きます。
例文
大学卒業後、5年間にわたり食品商社にて法人営業に従事してまいりました。
既存顧客への深耕営業を中心に、担当エリアの売上を昨対比110パーセントに拡大させるなど、関係構築力と提案力を磨いてまいりました。直近の1社では異業界のIT営業に挑戦いたしましたが、自身の強みである「対面でのきめ細やかな顧客フォロー」をより活かせる環境で貢献したいと考え、改めて食品業界でのキャリア形成を決意いたしました。商社時代に培った営業スキルと、短期ながら異業界で学んだスピード感を活かし、貴社の事業拡大に即戦力として貢献します。
【キャリア全体で短期が多い】共通スキル(軸)をアピールする例文
全体的に転職回数が多く、短期離職が含まれる場合は、社名や期間ではなく「職種」や「スキル」を軸にして一貫性を持たせます。
例文
約8年間にわたり、アパレル販売および雑貨販売など計4社にて、一貫して「接客・販売業務」に従事してまいりました。
扱う商材や客層は異なりましたが、常に「顧客ニーズを先読みした提案」を心がけ、どの店舗においても個人売上目標を達成してまいりました。環境の変化に対応する適応力には自信があり、新しい職場でも即座に業務フローを習得し、早期に戦力となることができます。これまでの多様な現場経験で培ったコミュニケーション能力と販売スキルを活かし、貴店の売上向上に貢献したいと考えています。
【やむを得ない事情】会社都合等を簡潔に伝える例文
倒産、事業撤退、経営不振による解雇など、自身の責任ではない理由で短期離職となった場合は、その事実を簡潔に記すことで採用担当者の安心感に繋がります。
例文
専門学校卒業後、Web制作会社にて3年間、デザイナーとしてコーポレートサイト等の制作に従事してまいりました。
PhotoshopおよびIllustratorを使用したバナー作成から、HTML・CSSによるコーディングまでを一貫して担当しました。直近の企業では新規事業の立ち上げメンバーとして参画いたしましたが、会社都合による事業撤退に伴い、短期での退職となりました。在籍期間は短かったものの、限られたリソースの中で成果を出すスピード感を養いました。前職で培った制作スキルとタフネスさを活かし、貴社の制作チームにおいて貢献したいと考えています。
【未経験分野への挑戦失敗】再挑戦の意欲をアピールする例文
未経験職種に挑戦したものの、ミスマッチで早期退職し、元の職種に戻る(出戻り)場合の例文です。失敗を認めつつ、元の職種の適性を再確認したというポジティブな流れにします。
例文
新卒で入社した物流会社にて4年間、倉庫管理および配送手配業務に従事してまいりました。
正確な在庫管理と効率的な配送ルートの構築により、配送コストを5パーセント削減する成果を上げました。その後、営業職に挑戦したいと考え転職いたしましたが、実務を通じて、自身の適性は「現場の仕組みを整え、円滑に業務を回すこと」にあると再認識いたしました。一度現場を離れたことで、物流業務への熱意と適性を客観的に確認することができました。これまでの管理経験と再挑戦への強い意欲を持って、貴社の物流センター運営に貢献します。
職務要約を書く際の注意点
短期離職がある場合の職務要約で、絶対にやってはいけないのが「前職の批判」です。「教育体制が整っていなかった」「聞いていた話と違った」といった他責の理由は、たとえ事実であっても「不満を感じやすい人」という印象を与えてしまいます。職務要約はあくまで「あなたの強み」を伝える場所です。変えられない過去(退職事実)にとらわれるのではなく、その経験を経て「今、何ができるのか」「これからどうしたいのか」という未来の可能性にフォーカスして文章を作成してください。





