SE（システムエンジニア）の職務経歴書で技術と実績を伝える職務要約の書き方と職種別例文集

IT業界の転職市場は活況ですが、人気のある自社開発企業や大手SIer、高年収のポストを勝ち取るためには、職務経歴書の冒頭にある「職務要約」で明確な差別化を図る必要があります。多くのエンジニアがやりがちなのが、使用できる言語やツールを羅列するだけの「スキルシートの要約」にしてしまうことです。しかし、採用担当者が知りたいのは、その技術を使って「どのような課題を解決し、ビジネスにどう貢献したか」というストーリーです。ここでは、SE（システムエンジニア）が自身の経験を市場価値の高いスキルとして言語化し、書類選考を通過するための職務要約の書き方のポイントと、職種別・状況別の具体的な例文を紹介します。

SEの採用担当者が職務要約で確認している3つの視点

CTOやプロジェクトマネージャー、人事担当者が応募書類を見る際、職務要約を通じて確認したいのは「技術力」と「ビジネス視点」のバランスです。具体的には以下の3点を見ています。

1. 技術スタックと担当工程（立ち位置）どのような言語・フレームワーク・インフラ環境で開発を行ってきたかはもちろんですが、それ以上に「どの工程を担当したか」を重視します。要件定義などの上流工程から携わったのか、詳細設計や実装がメインなのか、運用保守なのかという「プロジェクト内での立ち位置」を確認します。
2. ビジネスへの貢献（QCDの観点）「難しい技術を使った」ことよりも、品質（Quality）、コスト（Cost）、納期（Delivery）を意識してプロジェクトに貢献したかを見ます。「パフォーマンス改善で離脱率を下げた」「自動化で工数を削減した」「炎上案件を立て直した」といった実績は高く評価されます。
3. マネジメント経験とコミュニケーション能力チームの規模やリーダー経験の有無、コードレビューの実施状況などを通じて、組織への貢献度を確認します。また、クライアントや非エンジニア職との折衝経験があるかどうかも、SEとしての価値を左右する重要な要素です。

職務要約の最適な文字数と構成テクニック

職務要約の適切な文字数は200文字から300文字程度です。技術的な詳細は別途添付する「スキルシート」や経歴詳細欄に譲り、要約ではキャリアの全体像と主要な実績に絞って伝えます。

1. キャリアの概要：経験年数、所属業界（SIer、Web系、社内SEなど）、主な職種。
2. コアスキルと役割：得意な技術領域、担当した最大規模のプロジェクト、リーダー経験。
3. 具体的な実績：技術的課題の解決事例、数値成果（改善率、削減時間など）。

【Web・アプリ系SE】技術選定とUX改善をアピールする例文

Webアプリケーション開発などの経験者は、使用技術に加え、パフォーマンスチューニングやアーキテクチャ選定など、技術的な課題解決力をアピールします。

例文

大学卒業後、5年間にわたり自社開発企業にてWebアプリケーションのサーバーサイドエンジニアとして従事してまいりました。

主にRuby on RailsおよびGoを用いたAPI開発を担当し、月間100万PV規模のECサイトのリニューアルプロジェクトを主導しました。開発においては、レスポンス速度の改善を目的としたDB設計の見直しやキャッシュ戦略の導入を行い、平均レスポンスタイムを0.5秒短縮することに成功しました。また、チームリーダーとして4名のメンバーのコードレビューや技術指導を行い、アジャイル開発におけるプロセスの効率化にも貢献しました。これまでの経験を活かし、貴社の新規サービス開発において技術選定から実装まで幅広く貢献したいと考えています。

【業務系SE・SIer】プロジェクト推進力と折衝力をアピールする例文

業務系システムのSEは、予算・納期・品質の管理能力や、顧客やベンダーとの調整力、大規模システムの安定稼働実績をアピールします。

例文

独立系SIerにて8年間、金融および物流業界向けの基幹システム開発に従事し、直近の3年間はプロジェクトリーダーとして予算規模1億円のプロジェクトを推進してまいりました。

要件定義からリリースまでの一貫した管理を担当し、顧客との折衝やベンダーコントロールを行いました。特に要件変更が多発するプロジェクトにおいては、変更管理プロセスを徹底し、ステークホルダーとの合意形成を丁寧に行うことで、納期遅延ゼロでカットオーバーを実現しました。また、Javaを用いた堅牢なシステム設計を得意としており、品質管理においても不具合検出率の低減に貢献しました。貴社においても、プロジェクトの円滑な推進とビジネスゴールの達成に尽力します。

【インフラSE・クラウド】安定稼働とコード化をアピールする例文

インフラエンジニアは、オンプレミスからクラウドへの移行経験や、IaC（Infrastructure as Code）による自動化、セキュリティ対策の実績をアピールします。

例文

インフラエンジニアとして6年間、通信キャリアおよびWebサービス企業の基盤構築・運用に従事してまいりました。

Linuxサーバーの設計構築を中心に、直近ではAWSを用いたクラウド環境へのリフトアンドシフト案件を担当しました。Terraformを用いた構成管理の自動化や、CI/CDパイプラインの構築を主導し、デプロイ作業の工数を月間20時間削減しました。また、24時間365日の監視体制構築にも携わり、障害発生時の復旧フローを整備することでシステムの可用性向上（稼働率99.99パーセント維持）に貢献しました。これまでの知見を活かし、貴社のSREチームにおいて信頼性の高いインフラ基盤の構築に貢献します。

【社内SE】業務改善とDX推進をアピールする例文

社内SEは、システムの安定運用だけでなく、社内DXの推進やセキュリティ対策の強化など、経営課題に直結する取り組みをアピールします。

例文

製造業の情報システム部門にて7年間、社内インフラの運用管理およびヘルプデスク業務、基幹システムの刷新プロジェクトに従事してまいりました。

社内業務の効率化をミッションとし、RPAツールの導入を推進して経理部門の入力業務を自動化し、年間500時間の工数削減を実現しました。また、テレワーク環境の整備にあたり、ゼロトラストセキュリティの導入や社内ルールの策定を主導し、セキュリティレベルを維持しながら柔軟な働き方を実現しました。ITの力で社員が働きやすい環境を整え、貴社の生産性向上とDX推進に貢献したいと考えています。

【PGからSEへ】上流工程への意欲とポテンシャルをアピールする例文

プログラマー（PG）からSEへのステップアップを目指す場合は、実装力という基礎があることを前提に、設計や顧客折衝への関わりをアピールします。

例文

受託開発企業にて3年間、プログラマーとしてJavaおよびPHPを用いた詳細設計・実装・テスト業務に従事してまいりました。

実装工程においては、可読性と保守性の高いコード記述を心がけるとともに、単体テストの自動化を推進してバグの早期発見に努めました。また、小規模案件ではありますが、リーダーの補佐として顧客との打ち合わせに同席し、追加機能の仕様策定に関わりました。この経験を通じて、顧客の課題を直接解決する上流工程への関心が高まりました。確かな実装力を土台とし、貴社では要件定義や基本設計から携われるSEとして成長し、貢献したいと考えています。

職務要約を書く際の注意点

SEの職務要約を書く際、専門用語や技術略語（AWS、Docker、Kubernetes、Reactなど）を使用することは、スキルレベルを伝える上で非常に有効です。しかし、単にキーワードを詰め込みすぎて文章として成立していないケースが見受けられます。「Dockerを使用しました」ではなく「Dockerを使用して開発環境をコンテナ化し、環境差異によるトラブルを解消しました」というように、技術をどう活用して何の課題を解決したかという文脈で書くことを意識してください。また、具体的なプロジェクト名や顧客名などの機密情報は、守秘義務の観点から「大手通信キャリア」「メガバンク」のように一般化して記載することが鉄則です。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
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