経理の職務経歴書で書類選考を通過する職務要約の書き方と経験別例文集

経理職は専門性が高く、企業の規模や上場の有無によって求められるスキルが大きく異なる職種です。そのため、採用担当者は数ある応募書類の中から、自社が求めている決算業務のレベルやマネジメント能力を持っているかを短時間で見極めようとします。職務経歴書の冒頭にある職務要約で、自身の経験の幅と深さを的確に伝えることができれば、書類選考の通過率は格段に上がります。ここでは経理職への転職を目指す方が、自身のキャリアを魅力的に要約し、即戦力であることを証明するための書き方のポイントと、経験や状況に合わせた具体的な例文を紹介します。

経理の採用担当者が職務要約で重視する3つのポイント

経理の採用において企業が求めているのは、実務能力の具体性と環境への適応力です。採用担当者は職務要約を通じて以下の3点を確認しています。

1.決算業務の範囲と経験の深さ

日次業務だけでなく、月次決算、年次決算、連結決算、税務申告など、どこまでの業務を一人で完結できるかを見ています。また、主担当として手を動かしていたのか、補助的な役割だったのかという関わり方も重要な判断材料になります。

2.在籍企業の規模と上場の有無

経理業務は会社の規模によって内容が異なります。上場企業での開示業務経験があるか、中小企業で財務や総務まで幅広く担当していたかなど、どのような環境でスキルを磨いてきたかを確認します。

3.業務改善とPCスキル

正確な処理は当たり前として、エクセルや会計システムを活用していかに業務を効率化したかという実績を見ています。決算早期化への取り組みや、手作業の自動化などのエピソードは高く評価されます。

職務要約の最適な文字数と構成テクニック

職務要約の適切な文字数は200文字から300文字程度です。採用担当者が30秒程度で読み切れる分量にまとめるのが理想的です。以下の3つの要素を組み込むことで、読みやすく説得力のある要約になります。

1.誰に（どこで）：勤務した企業の業種、規模（売上・従業員数）、上場の有無。

2.何を（業務）：担当した決算業務の範囲、マネジメント経験、使用ソフト。

3.どうやって（実績）：決算早期化の実績、業務フローの改善、コスト削減。

【実務経験者】決算業務と効率化をアピールする例文

年次決算まで一通りの経験がある場合は、具体的な業務範囲と、業務効率化によって会社にどう貢献したかをアピールします。

例文

大学卒業後、6年間にわたり従業員300名規模の専門商社にて経理業務全般に従事してまいりました。

日次業務から月次決算、年次決算の財務諸表作成までを一貫して担当し、直近では法人税申告書の作成補助も行いました。業務においてはエクセルのマクロを活用して仕訳入力を自動化し、月次決算の確定を3営業日短縮することに貢献しました。また、会計システムの入れ替えプロジェクトにも参画し、業務フローの再構築を行うことで経理部門全体の残業時間削減を実現しました。これまでの実務経験と改善意欲を活かし、貴社の経理財務部門において即戦力として貢献します。

【マネジメント・リーダー】管理会計と指導力をアピールする例文

リーダー経験がある場合は、プレイングマネージャーとしての実務能力に加え、予実管理などの管理会計スキルや部下の育成実績をアピールします。

例文

上場IT企業にて8年間、経理財務部門のリーダーとして5名のメンバーマネジメントおよび連結決算業務に従事してまいりました。

有価証券報告書の作成や監査法人対応などの開示業務を主導するとともに、経営層向けの予実管理資料の作成を担当しました。管理会計の側面から部門ごとの採算性を分析し、コスト削減施策を提案・実行した実績があります。また、チーム運営においてはマニュアルの整備や若手社員の育成に注力し、属人化の解消に努めました。これまでの上場企業での知見とマネジメント能力を活かし、貴社の管理体制強化に尽力したいと考えています。

【中小企業・幅広さ】柔軟性と対応力をアピールする例文

中小企業で経理以外の業務も兼務していた場合は、守備範囲の広さと、限られたリソースの中で業務を回す対応力をアピールします。

例文

従業員50名規模の製造業にて5年間、経理を中心に総務、労務、財務まで管理部門の業務を幅広く担当してまいりました。

経理業務では月次決算および資金繰り表の作成を一人で行い、銀行との融資交渉などの財務業務にも携わりました。少人数の組織であったため、給与計算や社会保険手続き、備品管理なども兼務し、バックオフィス全体の円滑な運営を支えてきました。多岐にわたる業務を正確かつスピーディーに処理するマルチタスク能力と、経営者に近い距離で培ったコスト意識を活かし、貴社の管理部門において柔軟に貢献したいと考えています。

【未経験・アシスタント】簿記資格と意欲をアピールする例文

実務未経験や経験が浅い場合は、日商簿記などの資格保有を前提とし、事務処理能力の高さや正確性をアピールします。

例文

一般企業の営業事務として4年間勤務し、請求書発行や入金消込、経費精算業務を担当してまいりました。

数字を扱う業務においてはダブルチェックを徹底し、正確な事務遂行を心がけてきました。経理職へのキャリアチェンジを目指して日商簿記2級を取得しており、現在は商業簿記および工業簿記の知識を有しています。前職で培ったエクセルスキル（ピボットテーブル、VLOOKUP関数）は、経理の実務においても集計業務などで活かせると考えています。実務経験はこれからですが、持ち前の正確性と学習意欲で早期に業務を習得し、貴社の経理業務を支える人材になります。

【IPO準備企業】体制構築と適応力をアピールする例文

IPO（新規株式公開）準備企業での経験がある場合は、監査対応や内部統制の構築など、変化の激しい環境で体制を整えた経験をアピールします。

例文

設立5年目のWEBサービス企業にて、IPO準備期間中の経理担当として4年間勤務してまいりました。

管理部長の指示のもと、規程類の整備や内部統制の構築、ショートレビュー対応などに従事しました。急成長する組織において、バックオフィスの体制が追いつくよう業務フローをゼロから構築し、申請期の監査対応を完遂しました。ベンチャー企業特有のスピード感や変化への適応力には自信があります。上場準備の実務経験を活かし、貴社の成長フェーズに合わせた管理体制の強化に貢献したいと考えています。

経理の職務要約を書く際の注意点

経理の職務要約を書く際によくある失敗として、単に「決算業務を行いました」という事実だけの記載になってしまうことが挙げられます。これではどのレベルまで任されていたのかが伝わりません。「年商〇億円規模」「子会社〇社の連結」「税理士対応をメインで担当」といった具体的な規模感や役割を盛り込むことで、スキルレベルを明確に伝えてください。また、使用できる会計ソフト名（SAP、勘定奉行、freeeなど）を記載することで、システムへの親和性を示すことも有効です。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
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