飲食店の職務経歴書で書類選考を突破する職務要約の書き方と転職先別例文集

飲食店での業務経験は、接客スキルや調理技術だけでなく、店舗運営や数値管理、人材育成といった高度なビジネススキルを含んでいます。しかし、職務経歴書の冒頭にある職務要約において、単に「接客と調理を担当しました」と書くだけでは、その価値は採用担当者に伝わりません。特に異業種への転職や、条件の良い大手企業へのキャリアアップを目指す場合、具体的な成果を言語化することが不可欠です。ここでは、飲食店での経験を魅力的なビジネススキルとしてアピールし、書類選考を通過するための職務要約の書き方のポイントと、転職先のターゲットに合わせた具体的な例文を紹介します。

飲食店の採用担当者が職務要約で重視する3つのポイント

飲食業界の経験を持つ応募者に対して、採用担当者は「体力」や「明るさ」だけでなく、ビジネスパーソンとしての管理能力や課題解決能力を重視して見ています。職務要約では以下の3点を明確にする必要があります。

1. 店舗規模と担当範囲の具体性どのような業態（カフェ、居酒屋、ファインダイニングなど）で、どの程度の規模（席数、客単価、スタッフ数）の店舗を任されていたかを確認します。これにより、対応してきた業務の量や質、プレッシャーの強さを判断します。
2. 数値実績とコスト意識売上目標の達成率はもちろんですが、飲食店特有の指標であるFLコスト（食材原価と人件費）の管理や、客単価アップのための施策など、利益を残すためにどのような工夫をしたかという数字への意識は必須です。
3. マネジメント経験とチームビルディング店長やリーダーとして、アルバイトスタッフの採用、教育、シフト管理、モチベーション維持などにどのように関わったかを見ます。これは異業種のマネジメント職や事務職へ転職する際にも高く評価されるポイントです。

職務要約の適切な文字数と構成テクニック

職務要約の最適な文字数は200文字から300文字程度です。採用担当者が30秒程度で読み切れる分量にまとめるのが理想的です。以下の3つの要素を組み込むことで、読みやすく説得力のある要約になります。

1. 誰に（どこで）：店舗の業態、席数、客層、役職。
2. 何を（業務）：接客スタイル、調理レベル、マネジメント範囲。
3. どうやって（実績）：売上向上の施策、業務効率化、顧客満足度向上の取り組み。

【店長・マネージャー経験】店舗運営能力をアピールする例文

店長経験がある場合は、売上管理と人材マネジメントの両面で実績をアピールし、ビジネススキルが高いことを証明します。

例文

大学卒業後、5年間にわたり大手居酒屋チェーンにて店舗運営に従事してまいりました。

直近の3年間は店長として、月商1500万円、席数80席の店舗管理およびスタッフ30名のマネジメントを担当しました。競合店の出店により売上が低迷した際、宴会メニューの刷新と近隣企業への営業活動を行い、昨対比110パーセントの売上回復を実現しました。また、FLコストの適正化を徹底し、利益率を5パーセント改善しました。これまでの店舗経営で培った数値管理能力とリーダーシップを活かし、貴社のエリアマネージャー候補として事業成長に貢献したいと考えています。

【営業職へ転職】コミュニケーション能力と提案力をアピールする例文

飲食業から営業職への転身を目指す場合は、単なる御用聞きではなく、顧客単価を上げるための提案やリピーター獲得のプロセスをアピールします。

例文

イタリアンレストランにて4年間、ホール責任者として接客およびサービス業務に従事してまいりました。

単にオーダーを受けるだけでなく、お客様の会話や雰囲気から潜在的なニーズを汲み取り、料理に合うワインや追加メニューを提案することで、客単価を店舗平均より500円向上させました。また、顧客情報をノートに記録して次回来店時に活用することでリピーターを増やし、指名での予約数を倍増させました。これまでの経験で培った「課題解決型の提案力」と「関係構築力」を活かし、貴社の法人営業職として新規開拓に尽力します。

【事務職へ転職】効率化と正確性をアピールする例文

飲食業から事務職を目指す場合は、バックヤード業務における計数管理や発注業務、マルチタスク能力をアピールして実務適性を証明します。

例文

カフェチェーン店にて3年間、接客および店舗運営補佐業務に従事してまいりました。

接客業務と並行して、日々の売上集計、食材の発注管理、シフト作成などのバックオフィス業務を担当しました。特に発注業務においては、過去の売上データと天候予測を組み合わせて発注量を調整し、廃棄ロスを削減することでコスト管理に貢献しました。また、ピーク時の混雑対応を通じて、優先順位を瞬時に判断し正確に業務を遂行するマルチタスク能力を養いました。現場で培った柔軟な対応力と事務処理能力を活かし、貴社の営業事務として貢献したいと考えています。

【調理スタッフ・シェフ】専門性と改善力をアピールする例文

調理担当の場合は、技術力だけでなく、メニュー開発による売上貢献や、作業効率化による提供スピードの向上などをアピールします。

例文

フレンチレストランおよびホテル内レストランにて計7年間、調理業務に従事してまいりました。

調理技術の研鑽はもちろんのこと、原価率を30パーセントに抑えつつ顧客満足度を高めるメニュー開発に注力しました。季節の食材を使用した限定メニューを考案し、ディナータイムの集客数を昨対比で20パーセント向上させた実績があります。また、キッチンのオペレーションを見直し、提供時間を短縮することで回転率を上げました。これまでの経験で培った「品質へのこだわり」と「生産性向上の視点」を活かし、貴社の食品開発部門において貢献したいと考えています。

【アルバイトリーダー】責任感と指導力をアピールする例文

アルバイト経験のみの場合でも、リーダーとしての役割や後輩指導、主体的な改善提案の経験があれば、正社員同様の評価を得ることが可能です。

例文

約4年間にわたり、ファミリーレストランにてホールおよびキッチンの業務に従事してまいりました。

時間帯責任者として、ピーク時のフロアコントロールやクレーム対応、新人スタッフ5名の指導育成を担当しました。マニュアル通りの対応にとどまらず、お客様からの要望をまとめて店長に報告し、備品の配置変更を提案・実行したことで、提供スピードの向上に貢献しました。長期間の勤務で培った「責任感」と、チームで目標を達成する「協調性」は、正社員としての業務においても必ず活かせると確信しております。

職務要約を書く際の注意点

飲食店の職務要約を書く際によくある失敗として、「お客様の『ありがとう』が嬉しかったです」といった感情的な感想だけで終わってしまうことが挙げられます。ホスピタリティは重要ですが、ビジネスである以上、最終的には店舗の利益にどう貢献したかが問われます。「良い接客をした結果、売上がどう変わったか」「効率を上げた結果、コストがどう下がったか」というように、行動と結果をセットで書くことで、ビジネスパーソンとしての能力を伝えてください。また、専門用語（ツーマン、デシャップなど）は避け、誰が読んでも分かる言葉を選ぶことが重要です。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
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