薬剤師が書類選考で落ちる意外な理由と通過率を上げるための応募書類改善術

薬剤師は一般的に売り手市場と言われており、資格さえあれば転職は容易であると考えられがちです。しかし実際に転職活動を始めてみると、自信を持って提出した履歴書や職務経歴書があっさりと不採用となり、書類選考の壁に直面する方は少なくありません。なぜ資格者不足と言われる業界で書類選考落ちが起きてしまうのでしょうか。そこには薬剤師特有の採用事情や、応募書類におけるアピール不足といった明確な原因が存在します。ここでは薬剤師が書類選考で落ちてしまう主な理由と、採用担当者に会いたいと思わせるための書類作成のポイントについて詳しく解説します。

売り手市場でも書類選考で落ちる背景にあるミスマッチ

薬剤師の転職において書類選考で落ちる最大の原因は、企業が求めている人物像と応募者の経験や条件がマッチしていないことです。確かに薬剤師の有効求人倍率は高い水準にありますが、それはどんな薬剤師でも良いという意味ではありません。企業側は即戦力となる特定のスキルや経験を持った人材を求めています。例えば在宅医療に力を入れている薬局が、門前薬局での調剤経験しかない薬剤師を募集する場合、運転免許の有無や在宅経験がなければ見送られる可能性があります。

また条件面のミスマッチも大きな要因です。希望年収が企業の給与テーブルとかけ離れていたり、勤務時間や休日の希望が店舗のシフト状況と合わなかったりする場合、面接をするまでもなく不採用となります。自身のスキルを過信せず、応募先のニーズを正確に把握し、それに適した経験を持っていることを書類上で証明する必要があります。

経験者だからこそ陥りやすい職務経歴書の落とし穴

経験豊富な薬剤師ほど職務経歴書において具体的な業務内容の記載が不足しがちです。調剤業務や服薬指導といった言葉だけで済ませていないでしょうか。採用担当者は調剤業務という言葉の奥にある具体的なスキルレベルを知りたいと考えています。1日に何枚程度の処方箋を捌いていたのか、どのような科目を扱っていたのか、使用していたレセコンや電子薬歴のメーカーはどこかといった詳細な情報がなければ、即戦力かどうかを判断することができません。

特に管理薬剤師や薬局長としての経験がある場合は、店舗の売上管理やスタッフのマネジメント人数、在庫管理の手法など、経営的な視点での実績を数値で示すことが重要です。単に長く勤めていたという事実だけでなく、その期間中にどのような課題に直面し、どう改善したかというプロセスを記述することで、読み手に仕事への取り組み方をイメージさせることができます。

転職回数の多さと退職理由の伝え方による影響

薬剤師業界は比較的転職が活発な業界ですが、それでも短期間での転職を繰り返している場合や、年齢に対して転職回数が多すぎる場合は書類選考で不利になります。採用担当者は採用コストをかけて入社してもらう以上、長く定着して働いてくれる人材を求めています。そのため、転職回数が多いと忍耐力がないのではないか、人間関係でトラブルを起こしやすいのではないかと懸念されてしまいます。

この懸念を払拭するためには、職務経歴書の中で転職理由に一貫性を持たせることが不可欠です。ただ回数を重ねたのではなく、スキルアップのために総合病院から調剤薬局へ移った、在宅医療を学ぶために転職したといったように、キャリア形成上の明確な目的があったことを説明します。やむを得ない事情がある場合も隠さずに記載し、現在は長く働ける環境を求めていることをアピールすることで、定着性への不安を和らげることができます。

志望動機が条件面ばかりになっているケース

書類選考で落ちる薬剤師に多く見られるのが、志望動機が給与や立地、休日などの条件面ばかりに終始しているケースです。もちろん労働条件は重要ですが、それだけを志望動機にしてしまうと、より良い条件の職場があればすぐに辞めてしまうだろうと判断されます。企業側は自社の理念や取り組みに共感し、一緒に組織を良くしていってくれる仲間を探しています。

家から近いからや給料が高いからといった本音は胸にしまいつつ、書類上ではその薬局や病院が地域医療においてどのような役割を果たしているか、どのような診療科目に強みを持っているかなどをリサーチし、そこに魅力を感じた理由を自身の経験と結びつけて書く必要があります。かかりつけ薬剤師としての取り組みや、多職種連携への意欲など、薬剤師としてのやりがいや貢献意欲を前面に出すことが通過率アップの鍵となります。

認定薬剤師資格や専門スキルを正しくアピールする

近年ではかかりつけ薬剤師制度の普及に伴い、研修認定薬剤師などの資格保有が採用において有利に働く傾向があります。もし資格を持っている場合は、履歴書の資格欄だけでなく職務経歴書でも取得の背景や活用実績をアピールすることが大切です。また漢方薬・生薬認定薬剤師やがん薬物療法認定薬剤師などの専門資格は、特定の領域に特化した医療機関への応募では強力な武器となります。

資格がない場合でも、特定の科目に対する深い知識や、患者様とのコミュニケーション能力、新人教育の経験などは立派なスキルです。自分にとっては当たり前の経験でも、応募先の企業にとっては喉から手が出るほど欲しい能力である可能性があります。自身のキャリアを棚卸しし、応募先のニーズに合わせて情報を編集して提示する能力が、書類選考を突破するためには求められます。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
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