障害者雇用の書類選考で8割が落ちると言われる理由と通過率を高めるための書類作成術
障害者雇用枠での転職活動を始めたものの、応募しても書類選考で不採用が続き、なかなか面接に進めないと悩む方は少なくありません。中には「書類選考で8割は落ちる」という厳しい情報を耳にして、不安を感じている方もいることでしょう。実際に障害者雇用の現場において、書類選考のハードルは決して低くありません。しかし通過率が低い背景には、障害者雇用特有のミスマッチや伝え方の不足といった明確な理由が存在します。ここでは書類選考の通過率に関する実情と、8割の壁を突破して面接に進むために必要な応募書類の改善ポイントについて詳しく解説します。
障害者雇用の書類選考通過率は本当に低いのか
障害者雇用の転職市場において、書類選考の通過率は一般的に30パーセント程度、厳しい場合では20パーセント以下になるともいわれています。つまり逆を言えば、7割から8割は書類選考で落ちてしまうというのが現実的な数字です。一般雇用の選考と比較しても同等か、あるいは職種によってはそれ以上に狭き門となることがあります。
なぜこれほど通過率が低くなるのでしょうか。その最大の理由は、企業側が「採用しても長く安定して働けるか」を非常に慎重に見極めているからです。企業は障害者雇用において、スキルマッチ以上に「体調の安定性」や「勤怠の確実性」を重視します。応募書類からその安心感が伝わってこない場合、どれほど優秀なスキルを持っていてもリスク回避のために不採用の判断を下す傾向があります。したがって8割落ちるという状況は、個人の能力不足というよりも、企業側の不安を払拭できていないことが原因であるケースが多いのです。
書類選考で8割落ちてしまう場合に考えられる主な原因
もし応募数の8割以上で書類選考落ちが続いているのであれば、応募書類の内容に根本的な課題がある可能性があります。よくある原因の一つは、自身の障害特性と応募企業の業務内容とのミスマッチです。例えば電話対応が必須の業務に聴覚障害の方が応募していたり、突発的な対応が多い業務に精神障害の方が応募していたりと、配慮事項と業務の相性が悪いケースでは、書類段階で見送られる確率が高まります。
また、障害の説明が抽象的すぎることも大きな原因です。「精神障害があります」とだけ記載されていても、企業側は具体的にどのような配慮が必要で、どのような業務なら任せられるのかを判断できません。情報不足は不安を生み、結果として不採用につながります。さらに、離職期間が長い場合や転職回数が多い場合に、その理由や現在の回復状況について納得できる説明がないことも、定着性を懸念される要因となります。
企業が書類選考で最も重視している障害情報の伝え方
障害者雇用の書類選考を突破するために最も重要なのは、履歴書や職務経歴書の中で「自分の障害について正しく、かつ企業目線で伝えること」です。企業が知りたいのは病名そのものではなく、「現在の体調は安定しているか」「業務遂行にあたってどのような配慮が必要か」「自分で体調管理や対処ができるか」という3点です。
これらを伝えるために、応募書類には必ず「障害の内容と必要な配慮」を記載する欄を設けます。ここでは「静かな環境であれば集中して業務が可能です」や「通院のため月1回の半休を希望します」といったように、具体的かつ実現可能な配慮事項を記述します。また「服薬管理により現在は安定しており、直近1年間は無遅刻無欠勤です」といったように、就労可能であることを客観的な事実としてアピールすることが重要です。自分一人で対処できることと、企業に協力してほしいことを明確に分けることで、採用担当者は受け入れ後のイメージを持ちやすくなります。
通過率を改善するために見直すべき応募書類のポイント
通過率を8割の不採用側から2割の通過側へ引き上げるためには、応募書類を「配慮を求めるだけの書類」から「貢献できることを提案する書類」へと進化させる必要があります。障害者雇用であっても、企業は戦力を求めています。配慮事項ばかりが羅列された書類では、採用するメリットを感じてもらえません。
職務経歴書では、過去の実績やスキルを強調し、配慮さえあれば健常者と同じように、あるいはそれ以上に成果を出せることをアピールします。PCスキルや資格、実務経験など、応募先企業で活かせる能力を具体的に記載してください。もし未経験の職種に応募する場合やブランクがある場合は、就労移行支援事業所での訓練実績や、PC訓練での成果物などを記載するのも有効です。「何ができないか」ではなく「何ができるか」に焦点を当てた構成にすることで、書類の印象は大きく変わります。
数字に惑わされず自分に合った企業と出会うために
書類選考で8割落ちるという数字は、あくまで全体の統計や傾向に過ぎません。大切なのは確率を上げること自体ではなく、自分の障害特性を理解し、長く安心して働ける一社と巡り合うことです。不採用通知が続くと自信を失いそうになりますが、それは「能力がない」のではなく「その企業の環境とは合わなかった」というだけの事実です。
一人で悩まずに、ハローワークや障害者就業・生活支援センター、転職エージェントなどの専門家の添削を受けることもお勧めします。第三者の視点を入れることで、自分では気づかなかったアピールポイントや、企業が安心する表現方法が見つかることがあります。丁寧な自己分析と書類の改善を繰り返すことで、必ずあなたの能力を必要としてくれる企業との出会いは訪れます。8割という壁を恐れず、一社一社丁寧に向き合う姿勢が、納得のいく就職への近道となります。





