人事が書類選考で実際に見ている3つの評価ポイントと通過率を上げるための視点

転職活動において書類選考は避けて通れない関門ですが、多くの応募者が「自分の強みをどうアピールするか」ばかりに気を取られ、「読み手である人事が何を知りたいか」という視点が抜け落ちてしまいがちです。採用担当の人事は、決して応募者のあら探しをしているわけではありません。限られた時間の中で、自社で活躍してくれる人材を見つけ出そうと必死に書類を確認しています。人事の視点や評価基準を正しく理解し、彼らが求めている情報を適切に提供することができれば、書類選考の通過率は劇的に向上します。ここでは人事が書類選考で重視している具体的なポイントや、会ってみたいと思わせる書類の特徴、そして人事が数秒で不採用を判断してしまうNG例について詳しく解説します。

募集要項の必須条件を満たしているかというハードスキルの確認

人事が書類選考で最初に行う作業は、応募者が募集要項（ジョブディスクリプション）に記載されている必須条件（MUST要件）を満たしているかどうかの確認です。これは機械的なスクリーニングに近い工程であり、どんなに素晴らしい人間性を持っていても、ここをクリアできなければ次のステップには進めません。例えば「法人営業経験3年以上」「日常会話レベルの英語力」「特定のプログラミング言語の使用経験」などがこれに当たります。

人事はまず職務経歴書を見て、これらのキーワードが含まれているかを探します。そのため、自身のスキルや経験が必須条件に合致していることを、誰が見ても分かるように明記する必要があります。もし条件を完全に満たしていない場合でも、それに準ずる経験や、不足分を補うための具体的な学習状況が記載されていれば、ポテンシャル枠として検討されることもあります。まずは相手が求めている最低ラインをクリアしていることを、分かりやすく提示することが第一歩です。

組織への定着性とカルチャーマッチを見極めるソフトスキルの評価

スキル面の確認が終わると、次に人事は「この人は自社の社風に合うか」「長く働いてくれそうか」というソフト面を確認します。早期離職は企業にとって大きな損失となるため、定着性は非常に重要な評価指標です。具体的には、転職回数や退職理由、志望動機の内容から、キャリアの一貫性や仕事に対する価値観を読み取ろうとします。

例えば、チームワークを重視する企業であれば、協調性や周囲を巻き込んだ経験が評価されますし、成果主義の企業であれば、自律的な行動力や数字へのこだわりが評価されます。人事は書類の文面から応募者の性格やスタンスを推測しています。そのため、自分の強みをアピールする際も、応募先企業のカルチャーや求める人物像に寄せて表現することが重要です。「優秀な人」であること以上に、「自社に馴染む人」であることを伝える工夫が求められます。

多忙な人事の負担を減らす読みやすさとビジネスマナー

人事は採用活動のピーク時、一日に数十通から数百通もの応募書類に目を通さなければなりません。一人の書類にかける時間はわずか数分、場合によっては数十秒とも言われています。そのような状況下において、パッと見て内容が入ってこない書類は、それだけで読む気を削いでしまい、評価を下げる原因となります。文字がびっしりと詰まっている、改行が少ない、専門用語ばかりで難解であるといった書類は、読み手への配慮が欠けていると判断されます。

逆に、見出しを活用して情報が整理されており、結論から書かれている書類は、それだけで「仕事ができる人」という印象を与えます。また、誤字脱字がないか、写真が適切かといった基本的なビジネスマナーも厳しくチェックされています。これらは加点要素というよりも、できていて当たり前の減点要素として見られます。人事にストレスを与えない「読みやすい書類」を作成することは、強力なアピールの一つとなります。

人事が会いたいと感じる書類に共通する具体的根拠の提示

人事が「この人に会って話を聞いてみたい」と感じる書類には、共通して「具体的な根拠」が存在します。「コミュニケーション能力があります」や「営業が得意です」といった抽象的な主張だけでは、人事はその実力を信用することができません。その主張を裏付ける具体的なエピソードや、客観的な数値実績がセットになって初めて説得力が生まれます。

例えば、「顧客の課題をヒアリングし、提案内容をカスタマイズすることで、受注率を前年比20パーセント向上させた」といった記述があれば、人事はその人が入社後にどのように活躍するかを具体的にイメージすることができます。採用とは、企業が抱える課題を解決するための投資です。自分がその課題を解決できる人材であることを、事実に基づいて論理的に証明することで、人事の心を動かすことができます。

人事の視点を持つことが通過率アップの最大の近道

書類選考を通過するためには、自分を良く見せようとするのではなく、人事が知りたい情報を提供しようとする姿勢が不可欠です。人事は敵ではなく、あなたと現場の面接官をつなぐ架け橋となる存在です。彼らが社内で自信を持ってあなたを推薦できるように、分かりやすく、かつ説得力のある材料を書類の中に用意してあげてください。

応募書類を作成したら、一度提出する前に「自分がもしこの会社の人事だったら、この書類を見て採用したいと思うか」という視点で読み直してみることをお勧めします。客観的な視点を取り入れ、相手への配慮を行き届かせることこそが、書類選考を突破し、希望するキャリアへの扉を開くための最も確実な方法となります。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
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