作業療法士(OT)の職務経歴書 例文と採用担当者に響く書き方ガイド
作業療法士(OT)の転職活動において、職務経歴書はあなたの「臨床能力」と「人間性」を伝えるための最も重要なツールです。しかし、日々のリハビリ業務に追われ、「自分の経験をどう言葉にすればいいか分からない」「ありきたりな内容になってしまう」と悩む方は少なくありません。
採用担当者は、資格の有無だけでなく、あなたが「どのような患者様に対し」「どのようなアプローチを行い」「チーム医療にどう貢献できるか」を具体的に知りたいと考えています。
ここでは、作業療法士の経験を魅力的な実績として言語化し、書類選考を通過するための職務経歴書の書き方と、領域別(身体障害・精神障害・老年期など)の具体的な例文を紹介します。
採用担当者がOTの職務経歴書で重視する3つのポイント
具体的な例文を見る前に、採用側がどこを見ているかを押さえておきましょう。以下の3点を意識して記述することで、説得力が格段に増します。
1. 経験した領域と疾患の具体性
作業療法士の活躍の場は広いため、ミスマッチを防ぐためにも「何ができるか」を明確にする必要があります。
- 病期: 急性期、回復期、維持期(生活期)、訪問
- 領域: 身体障害、精神障害、発達障害、老年期
- 主な疾患: 脳血管疾患、整形外科疾患、神経難病、統合失調症、認知症など
これらを具体的な「病床数」や「1日あたりの担当件数」といった数字と共に記載します。
2. 「作業」を通じたアプローチと退院支援の実績
PT(理学療法士)との違いを明確にするためにも、OTならではの視点を強調します。
- 上肢機能訓練だけでなく、ADL(日常生活動作)・IADL(手段的日常生活動作)への介入
- 復職支援、家屋調査、環境調整、福祉用具の選定
- 精神科におけるSST(社会生活技能訓練)や作業活動の活用
単に「訓練を行いました」ではなく、「その人らしい生活を取り戻すために何をしたか」というプロセスが評価されます。
3. チーム医療への貢献と連携力
リハビリはチームプレーです。医師、看護師、PT、ST、MSW、ケアマネジャーなど、多職種といかに連携したかを記述します。カンファレンスでの発言や、後輩指導(プリセプター)、委員会活動の実績なども、組織人としての評価を高める要素です。
【領域別】作業療法士の職務経歴書 例文
ご自身の経験に近いものをベースに、具体的なエピソードを加えてアレンジしてください。
例文1:回復期リハビリテーション病棟(身体障害領域)
【ポイント】 在宅復帰に向けた具体的な支援内容と、多職種連携をアピールします。
■ 職務要約
理学療法士・作業療法士養成施設卒業後、医療法人〇〇会 〇〇病院(回復期リハビリテーション病棟 50床)にて5年間勤務しました。脳血管疾患や大腿骨骨折後の患者様を中心に、ADL・IADL訓練および家屋評価、退院後の環境調整に従事しました。また、病棟内ADLの定着に向けた看護師との連携強化や、新人指導係として後輩育成にも尽力しました。
■ 職務詳細
期間: 20XX年4月 ~ 現在
勤務先: 医療法人〇〇会 〇〇病院(全150床)
配属: 回復期リハビリテーション病棟
対象疾患: 脳血管疾患(6割)、運動器疾患(3割)、廃用症候群(1割)
【担当業務・実績】
- 臨床業務
- 1日平均18単位、担当患者数10~15名
- 上肢機能訓練、高次脳機能障害へのアプローチ
- 調理・洗濯・掃除などのIADL訓練、公共交通機関利用練習
- 退院支援・環境調整
- 家屋調査への同行および住宅改修・福祉用具の提案(月平均2件)
- 退院前カンファレンスでのプレゼンテーション
- ご家族への介助方法指導
- チームへの貢献
- 「病棟生活リハビリ」の定着に向け、看護師向け移乗介助勉強会を主催
- プリセプターとして新人OT 2名の指導を担当
■ 自己PR
私の強みは、患者様の「生活背景」を深く理解した上での目標設定力です。単に身体機能を回復させるだけでなく、「退院後にどのような生活を送りたいか」をご本人やご家族から丁寧にヒアリングし、趣味活動の再開や家事役割の獲得など、具体的な目標に向けた作業療法を展開してきました。貴院においても、患者様のQOL向上に直結するリハビリテーションを提供したいと考えています。
例文2:精神科病院・メンタルクリニック(精神障害領域)
【ポイント】 集団療法や個別のアプローチ、社会復帰支援への関わりを強調します。
■ 職務要約
精神科単科病院(300床)にて4年間、作業療法士として従事しました。統合失調症やうつ病、認知症の患者様に対し、集団作業療法および個別作業療法を担当。SST(社会生活技能訓練)やレクリエーションの企画・運営を通じて、対人交流の促進や生活リズムの獲得を支援しました。現在は復職支援(リワーク)プログラムにも携わっています。
■ 職務詳細
期間: 20XX年4月 ~ 20XX年3月
勤務先: 医療法人△△会 △△病院
対象疾患: 統合失調症、気分障害、アルコール依存症、認知症
【担当業務・実績】
- プログラム運営
- 集団作業療法(手芸、革細工、陶芸など)の進行管理
- SST(社会生活技能訓練)のリーダーおよびコリーダー経験
- 病棟レクリエーションの企画立案(季節行事など)
- 個別支援
- 退院支援プログラムにおける生活能力評価
- 就労支援施設との連携、見学同行
■ 自己PR
患者様の些細な変化を見逃さない「観察力」と「傾聴力」に自信があります。精神科リハビリテーションにおいては、患者様の意欲を引き出すことが最も重要であると考え、否定せず受容する姿勢を徹底しました。集団療法の中でも一人ひとりの特性に合わせた声かけを行い、参加率の向上に寄与しました。貴院のデイケア部門においても、利用者様の社会復帰を力強くサポートいたします。
例文3:訪問看護ステーション・介護施設(生活期・維持期)
【ポイント】 現場での判断力、家族へのケア、リスク管理をアピールします。
■ 職務要約
訪問看護ステーションにて3年間、訪問リハビリテーション業務に従事しました。維持期・生活期の利用者様宅を1日平均5件訪問し、身体機能の維持・向上だけでなく、住環境の整備や介助負担軽減のための家族指導を行いました。医師が不在の環境下でもバイタルサイン等の変化からリスクを予測し、ケアマネジャーや看護師と迅速に連携する体制を構築しました。
■ 職務詳細
期間: 20XX年4月 ~ 現在
勤務先: 株式会社□□ 訪問看護ステーション
対象利用者: 脳血管疾患後遺症、パーキンソン病、認知症、フレイルなど
【担当業務・実績】
- 訪問リハビリテーション
- 生活動線の確保、転倒予防のための環境調整
- 入浴動作、排泄動作の実地訓練
- 福祉用具選定のアドバイス
- 家族支援・連携
- 介護負担軽減のための介助指導、精神的フォロー
- 担当者会議への出席、サービス計画への提案
■ 自己PR
「生活の場」でのリハビリテーションにおいて、限られた環境資源を最大限に活用する応用力があります。ある利用者様宅では、既存の家具配置を少し変えるだけで自立歩行を可能にし、ご本人の自信回復とご家族の負担軽減に繋げることができました。貴施設においても、利用者様が住み慣れた地域で自分らしく生活できるよう、実践的な支援を行ってまいります。
書類選考通過率を上げる「自己PR」の書き方ヒント
作業療法士の自己PRでは、以下のキーワードを自身の経験と結びつけると効果的です。
- 「生活を見る視点」身体機能だけでなく、その人の人生や生活環境全体を捉えていること。
- 「工夫・アイデア」自助具の作成や、訓練用具の工夫など、OTならではのクリエイティビティ。
- 「コミュニケーション能力」患者様だけでなく、多職種と円滑に連携し、チーム医療を推進する力。
- 「学習意欲」学会発表や研修会への参加、認定作業療法士の取得など、知識をアップデートし続ける姿勢。
作業療法士は「人」を見るプロフェッショナルです。あなたのこれまでの経験が、患者様の生活をどう変えてきたのか。その具体的なエピソードを職務経歴書に込めることで、採用担当者に「この人と働きたい」と思わせる書類が完成します。





