ITエンジニアの職務経歴書例文と書き方ガイド 技術力と実績を正しく伝える戦略
IT業界におけるエンジニアの転職市場は活況ですが、好条件の企業や人気のある自社開発企業への転職となると、書類選考のハードルは決して低くありません。採用担当者や現場のエンジニアは、応募者が即戦力として開発に貢献できるかを、職務経歴書の記述からシビアに判断しています。
ITエンジニアの職務経歴書は、単なる経歴の羅列ではなく、あなたというエンジニアの仕様書(スペックシート)であるべきです。ここでは、技術力と実績を最大限にアピールし、書類選考を突破するための書き方と、職種別の具体的な例文について解説します。
ITエンジニアの職務経歴書で採用担当者が見ているポイント
ITエンジニアの採用において、企業側が職務経歴書から読み取りたい情報は明確です。一般的なビジネススキルに加え、以下の3つの要素が網羅されているかが合否を分ける重要なポイントとなります。
一つ目は、保有している技術スキルの具体性です。どのような言語、フレームワーク、データベース、インフラ環境で開発を行ってきたかというテクニカルな情報は、マッチングを図る上で最も基礎的なデータです。
二つ目は、担当したプロジェクトの規模と役割です。何名体制のチームで、どのフェーズ(要件定義、設計、実装、テスト、運用)を担当したのか。リーダー経験の有無や、顧客折衝の経験も重要な評価指標となります。
三つ目は、技術的な課題解決のプロセスと実績です。単にシステムを作ったという事実だけでなく、どのような課題に対し、どのような技術選定を行い、どのような成果(処理速度の向上、工数削減など)を出したかというエンジニアリングの質が問われます。
技術スキル要約の書き方
職務経歴書の冒頭、または職務経歴の前に、自身が保有するスキルを一目で把握できる要約欄を設けることが非常に効果的です。採用担当者は多忙なため、ここを見るだけで要件を満たしているか判断できるようにします。
記載する際は、カテゴリごとに分類し、経験年数を添えます。
言語であれば、Java(5年)、Python(3年)、JavaScript(3年)などと記載します。
フレームワークであれば、Spring Boot(3年)、React(2年)、Django(1年)などと記載します。
データベースであれば、Oracle、MySQL、PostgreSQLなどと記載します。
インフラ・クラウドであれば、AWS(EC2, S3, RDS)、Docker、Kubernetesなどと記載します。
その他、Git、Jenkins、Jiraなどのツール類も記載することで、開発環境への適応力を示すことができます。
プロジェクト経歴の書き方
職務経歴書のメインとなるプロジェクト経歴は、時系列でただ業務を並べるのではなく、プロジェクト単位でブロック化して記述するキャリア式が一般的であり、評価も高くなります。
1つのプロジェクトにつき、以下の要素を網羅するように構成します。
プロジェクト名と概要
何を作るためのプロジェクトなのか、システムの種類(Web系、勘定系、アプリなど)や目的を記載します。
開発環境
使用したOS、言語、DB、フレームワーク、ツール類を詳細に記します。
期間と規模
プロジェクトの期間と、チーム全体の人数、自身のチームの人数を記載します。
担当工程と役割
要件定義から保守運用まで、どこを担当したかを明記します。リーダーやサブリーダーなどの役割があれば記載します。
実績と取り組み
工夫した点や成果を具体的なエピソードと共に記述します。
SE・プログラマーの職務経歴書例文
Webアプリケーション開発やシステム開発を担当するエンジニア向けの例文です。技術スタックと、コード品質やパフォーマンスに対する意識をアピールします。
職務要約
大学卒業後、SIerにて5年間、Webアプリケーション開発エンジニアとして従事しました。JavaおよびPHPを用いたBtoB向け基幹システムの開発において、要件定義から設計、実装、テストまでの一連の工程を経験しました。直近のプロジェクトでは、サブリーダーとして5名のメンバーのコードレビューや進捗管理を担当し、スケジュールの遅延なくプロジェクトを完遂させました。
職務詳細
期間
20XX年4月 から 現在まで
プロジェクト名
大手物流会社向け 配送管理システムリプレイス開発
開発環境
言語 Java 11
フレームワーク Spring Boot
データベース PostgreSQL
インフラ AWS (EC2, RDS)
ツール Git, Jenkins, Backlog
チーム規模
全体20名(自チーム5名)
担当工程
基本設計、詳細設計、実装、単体テスト、結合テスト、コードレビュー
実績と取り組み
パフォーマンスチューニング
検索処理の速度低下に対し、SQLの実行計画を分析し、インデックスの見直しとクエリの最適化を行いました。その結果、検索レスポンスタイムを平均3秒から0.5秒へ短縮し、ユーザーの利便性向上に貢献しました。
開発効率の向上
共通処理のライブラリ化を提案し、実装しました。これにより、チーム全体のコーディング工数を削減し、コードの品質均一化を実現しました。
自己PR
新しい技術への探究心が強く、業務外でも個人的なWebサービスを開発し、技術ブログで発信しています。常に最新のトレンドをキャッチアップし、プロジェクトに最適な技術選定ができるよう努めています。
プロジェクトマネージャー(PM)の職務経歴書例文
PMやPLを目指す方の例文です。マネジメント規模、予算、品質・納期・コスト(QCD)の管理能力をアピールします。
職務要約
ITコンサルティング企業にて、プロジェクトマネージャーとして大規模システムの導入支援および開発管理に従事しました。金融業界や製造業界のクライアントに対し、予算規模1億円以上、メンバー30名規模のプロジェクトを統括しました。ステークホルダーとの折衝、リスク管理、品質管理を徹底し、担当した全プロジェクトを納期通りにカットオーバーさせました。
職務詳細
期間
20XX年10月 から 現在まで
プロジェクト名
金融機関向け 顧客管理システム刷新プロジェクト
開発環境
言語 Java
データベース Oracle
管理ツール Redmine, Slack
規模
予算 1.5億円
期間 1年6ヶ月
メンバー 35名(協力会社含む)
担当工程
プロジェクト計画策定、要件定義、ベンダー選定、進捗・課題・リスク管理、顧客折衝
実績と取り組み
要件変更への対応とスコープ管理
開発途中で発生した大幅な要件変更に対し、顧客と粘り強く交渉を行い、フェーズを分けてリリースすることを提案しました。これにより、当初の納期を守りつつ、必須機能を確実にリリースすることに成功しました。
チームビルディング
コミュニケーション不足による認識齟齬を防ぐため、朝会の実施やチャットツールの活用ルールを策定しました。風通しの良いチーム作りを行い、メンバーのモチベーション維持に努めました。
自己PR
プロジェクトの成功には、技術力だけでなく、人とのコミュニケーションが不可欠であると考えています。顧客の要望を正確に汲み取るヒアリング能力と、エンジニアが最大限のパフォーマンスを発揮できる環境作りには自信があります。
インフラエンジニアの職務経歴書例文
サーバー、ネットワーク、クラウドエンジニア向けの例文です。安定稼働への貢献や、クラウド移行、自動化(IaC)などのモダンな技術経験をアピールします。
職務要約
インフラエンジニアとして6年間、オンプレミスからクラウド環境まで幅広いサーバー設計・構築・運用を経験しました。Linuxサーバーの構築を中心に、直近ではAWSを用いたクラウド移行プロジェクトを主導しました。Infrastructure as Code (IaC) の導入による構築自動化や、監視基盤の整備による障害検知の迅速化など、運用効率の改善に注力してきました。
職務詳細
期間
20XX年4月 から 20XX年3月まで
プロジェクト名
自社Webサービス インフラ基盤のAWS移行
環境
プラットフォーム AWS (EC2, S3, RDS, ELB, CloudWatch)
OS Amazon Linux 2
構成管理 Terraform, Ansible
監視 Zabbix, Datadog
担当工程
現行踏襲設計、クラウド設計、構築、移行リハーサル、本番移行、運用設計
実績と取り組み
コスト最適化
オンプレミスからの移行に伴い、リザーブドインスタンスの活用や不要なリソースの削除、オートスケーリングの導入を行いました。これにより、インフラコストをオンプレミス時代と比較して約20パーセント削減しました。
構築の自動化
Terraformを用いたコードによるインフラ管理(IaC)を導入しました。これにより、環境構築にかかる時間を大幅に短縮するとともに、人為的な設定ミスを排除しました。
自己PR
24時間365日の安定稼働を使命とし、障害発生時には迅速な原因究明と復旧を行うことに責任感を持っています。また、現状維持に満足せず、新しい技術を取り入れて運用の自動化や効率化を進める推進力があります。
ITエンジニアの自己PRの書き方
職務経歴書の最後にある自己PR欄では、スキルシートだけでは伝えきれないエンジニアとしてのスタンスやポータブルスキルを記述します。
技術への学習意欲
エンジニアにとって、自発的な学習習慣は必須です。業務外でどのような技術を学んでいるか、QiitaやZennなどの技術共有サービスで発信しているか、GitHubでコードを公開しているかといったアウトプット活動は、学習意欲の高さを示す強力な証拠となります。
コミュニケーション能力
エンジニアは黙々とコードを書くだけの仕事ではありません。仕様調整のためにディレクターやデザイナーと円滑に連携した経験や、非エンジニアの顧客に対して専門用語を使わずにわかりやすく説明した経験などは、組織で働くエンジニアとして高く評価されます。
ビジネス視点
技術はあくまで手段であり、目的はビジネスの課題解決です。「技術を使ってどのような価値を提供したか」「ビジネスの成長にどう貢献したか」という視点を持っていることをアピールします。
まとめ
ITエンジニアの職務経歴書は、技術力と実績を論理的に伝えるプレゼンテーション資料です。採用担当者が知りたい情報を網羅し、読みやすく整理された書類を作成することで、あなたのエンジニアとしての価値を正当に評価してもらうことができます。自身のスキルを棚卸しし、具体的なプロジェクト経験と共にアピールしてください。





