品質管理・品質保証の職務経歴書 例文と書き方ガイド 「守り」と「攻め」を実績に変える

品質管理（QC）や品質保証（QA）の仕事は、製品の信頼性を守る「最後の砦」であると同時に、不良品を減らして利益率を高める「攻めの部門」でもあります。しかし、転職活動において職務経歴書を作成する際、「日々の検査業務やトラブル対応をどうアピールすればいいか分からない」「実績が数値化しにくい」と悩む方は少なくありません。

採用担当者は、あなたが「どのような規格・基準で」「どのような手法を用いて」品質を守り、さらに「どうやって品質を向上させたか」を知りたいと考えています。

ここでは、品質管理の経験を高く評価してもらうための職務経歴書の書き方と、業界・職種別の具体的な例文について解説します。

品質管理の採用担当者が重視する3つの評価軸

職務経歴書を作成する前に、採用側が品質管理職に求めている要素を整理しましょう。以下の3つのポイントを具体的に記載することで、即戦力としての評価が高まります。

1. 扱っていた製品と準拠する規格（ISOなど）

品質管理の業務は、業界や製品によって求められる知識が全く異なります。

• 製品： 自動車部品、電子機器、食品、化学薬品、医薬品など
• 規格： ISO9001、ISO14001、IATF16949（自動車）、HACCP・FSSC22000（食品）、GMP（医薬品）など

「ISO9001の運用・更新審査対応の経験がある」など、具体的な規格名を挙げることは、スキルの明確な証明になります。

2. 担当工程の範囲と使用ツール

受入検査、工程内検査、出荷検査のどこを担当していたのか、あるいはサプライヤー管理やQMS（品質マネジメントシステム）の構築まで行っていたのかを明確にします。

また、使用できる測定機器（三次元測定機、ノギス、マイクロメータ、成分分析装置など）や、統計的手法（QC7つ道具、実験計画法など）を記載することで、実務能力の深さが伝わります。

3. 「改善（カイゼン）」と「再発防止」の実績

単に「検査をしていました」だけでは不十分です。

• 不良率を〇％から〇％へ低減させた
• クレーム発生時に原因究明（なぜなぜ分析など）を行い、恒久対策を実施した
• 検査工数を〇時間削減した

このように、「課題を発見し、解決したプロセス」と「数値結果」をセットで記載することが、書類選考突破の鍵となります。

【業界別】品質管理・品質保証の職務経歴書 例文

それでは、業界や役割に合わせた具体的な例文を紹介します。ご自身の経験に近いものをアレンジして活用してください。

例文1：製造業（機械・自動車部品など）の品質管理

【ポイント】

測定スキル、図面解読力、不良低減活動（QCサークル等）を具体的な数値と共にアピールします。

■ 職務要約

自動車部品メーカーにて5年間、エンジン部品の品質管理業務に従事。受入検査から出荷検査までを担当し、三次元測定機を用いた精密測定や、不適合品の処置を行いました。また、QCサークルリーダーとして工程内不良の低減に取り組み、治具の改善提案等により不良率を0.5％から0.05％へ改善しました。IATF16949に基づく帳票管理経験もあります。

■ 職務詳細

期間： 20XX年4月 ～ 現在

会社名： 〇〇工業株式会社（自動車部品製造）

担当製品： アルミダイカスト部品、切削加工品

【担当業務】

• 検査業務： 図面に基づく寸法測定、外観検査（ノギス、マイクロメータ、三次元測定機 使用）
• 不適合品管理： 不良発生時の隔離、原因調査、修正・廃棄の判断
• 工程改善： 4M変更管理、QC工程表の作成・改訂
• 測定機器管理： 定期校正の実施および管理

【実績・取り組み】

• 工程内不良の低減加工工程における切粉噛み込み不良が多発していたため、洗浄工程のノズル位置変更とエアブロー時間の見直しを提案。トライアルを経て標準化し、直行率を95％から98％へ向上させました。
• 検査効率の向上専用の検査治具を設計・導入し、測定にかかる時間を1個あたり3分短縮。検査員の工数削減に貢献しました。

例文2：食品・化学・化粧品業界の品質管理

【ポイント】

衛生管理（HACCP等）、分析技術、法令遵守（コンプライアンス）への意識を強調します。

■ 職務要約

食品メーカーの品質管理部にて4年間、製品の理化学検査および微生物検査、工場の衛生管理を担当しました。HACCPチームの一員として危害分析やモニタリング記録の管理を行い、FSSC22000認証取得プロジェクトにも貢献しました。また、クレーム発生時には迅速な原因究明と報告書作成を行い、顧客信頼の維持に努めました。

■ 職務詳細

期間： 20XX年4月 ～ 20XX年3月

会社名： 株式会社△△食品

担当製品： レトルト食品、調味料

【担当業務】

• 分析・検査： 微生物検査（一般生菌、大腸菌群等）、理化学検査（pH、糖度、塩分、粘度）、官能検査
• 衛生管理： 製造ラインのふき取り検査、従事者の衛生指導、防虫防鼠管理
• 規格書作成： 原材料規格書、製品規格書の作成・管理
• クレーム対応： 現品調査、原因究明、報告書作成

【実績・取り組み】

• 異物混入対策の強化毛髪混入クレーム削減のため、入場時の粘着ローラー手順を見直し、マニュアル化して周知徹底。また、作業着の選定変更を提案し、年間クレーム件数を前年比50％削減しました。
• 検査業務の効率化手書きだった検査記録を電子化（Excelデータベース構築）し、傾向分析を容易にするとともに、記録時間を1日あたり1時間削減しました。

例文3：品質保証（QA）・QMS構築経験者

【ポイント】

システム構築、監査対応、サプライヤー管理など、全体最適の視点とマネジメント能力をアピールします。

■ 職務要約

電子機器メーカーの品質保証部にて7年間勤務。ISO9001事務局として品質マニュアルの改訂や内部監査の計画・実施を主導しました。また、海外サプライヤーの品質監査を担当し、現地指導を行うことで受入不良率の改善に貢献。新製品開発段階からのデザインレビュー（DR）に参加し、未然防止（品質工学）の視点で設計部門へのフィードバックを行ってきました。

■ 職務詳細

期間： 20XX年4月 ～ 現在

会社名： □□エレクトロニクス株式会社

【担当業務】

• QMS運用： ISO9001の維持・管理、外部審査対応、内部監査員の育成
• サプライヤー管理： 新規取引先の品質監査、工程監査、品質指導
• 顧客対応： 顧客監査の対応、品質契約書の締結、4M変更申請
• 新製品立上げ： PPAP（生産部品承認プロセス）書類の作成・承認

【実績・取り組み】

• サプライヤー品質の向上不良率の高い海外サプライヤーに対し、Web会議および現地訪問による工程監査を実施。製造プロセスの見直しを指導し、受入検査合格率を85％から99％へ改善しました。
• クレーム対応のスピードアップ過去のトラブル事例をデータベース化し、類似案件の検索性を向上。初期回答までのリードタイムを平均3日から1日へ短縮し、顧客満足度の維持に貢献しました。

品質管理の自己PRで使える「キーワード」

実績欄だけでなく、自己PR欄で以下の要素を強調すると、採用担当者に「信頼できるプロフェッショナル」という印象を与えられます。

1. 「是正」だけでなく「予防」問題が起きてから対処するだけでなく、FMEA（故障モード影響解析）などを用いて、未然にリスクを摘み取る姿勢。
2. 「三現主義」の徹底現場・現物・現実を重視し、データだけでなく実際の現場を見て判断する行動力。
3. 他部署との「連携・交渉力」品質を守るためには、製造や設計、営業に対して「NO」と言わなければならない場面もあります。論理的なデータに基づいて説明し、協力を取り付けるコミュニケーション能力。
4. 「顧客視点」の品質規格内に収まっていれば良いというだけでなく、エンドユーザーがどう使うかを想像した品質へのこだわり。

品質管理・保証の仕事は、企業のブランドと利益を守る要です。

「守り」の堅実さと、「攻め」の改善意欲の両方を職務経歴書に盛り込み、あなたの実力を正しく伝えてください。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
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