2社以上の勤務経験がある方にとって、職務経歴書の冒頭にある「職務要約」は、キャリアの全体像を伝えるための非常に重要なパートです。
1社しか経験がない場合と異なり、複数の会社で得た経験をどのように繋ぎ合わせ、一貫性のあるストーリーとして伝えるかが、書類選考突破のカギとなります。単に「A社に勤め、その後B社に転職しました」と事実を羅列するだけでは、採用担当者の心には響きません。
ここでは、2社以上の経験を持つ方が、そのキャリアを「豊富な経験」や「高い適応能力」としてアピールするための職務要約の書き方と、パターン別の具体的な例文を解説します。
2社以上の経歴を「ひとつの物語」にする書き方のコツ
職務要約は、あなたのキャリアのあらすじ(ダイジェスト)です。複数の会社を経験している場合、それぞれの点を線で結び、一本の芯が通ったキャリアであることを示す必要があります。
1. キャリアの「共通点(軸)」を見つける
会社や職種が変わっても、あなたの中に一貫して存在していたテーマは何でしょうか?
「顧客の課題解決」「業務の効率化」「チームマネジメント」など、場所が変わっても発揮し続けてきたスキルやスタンスを軸にして文章を構成します。
2. 直近の経歴に重きを置く
採用担当者が最も知りたいのは、「今、あなたは何ができるか」です。
1社目の記述は基礎能力の習得として簡潔に留め、直近の会社での実績や役割に文字数を割く(例えば3:7の割合)ことで、即戦力性をアピールできます。
3. 転職理由をポジティブな「接続詞」にする
1社目から2社目(あるいはそれ以降)へ移った理由を、ネガティブに書く必要はありません。「より専門性を高めるため」「営業としての幅を広げるため」といったポジティブな理由を、経歴を繋ぐ接続詞として使うことで、目的意識を持ってキャリアを形成してきた人物であると印象づけられます。
【パターン別】2社以上の職務要約 例文集
それでは、具体的なシチュエーション別に職務要約の例文を紹介します。ご自身の経歴に近いものを参考に、内容をアレンジして活用してください。文字数は200文字~300文字程度が目安です。
パターン1:同職種でキャリアアップしてきた場合(2社経験)
【状況】 営業職やエンジニアなど、職種は変えずに会社を変えてスキルアップしてきたケース。
【ポイント】 1社目で得た基礎と、2社目で得た応用力や実績をセットでアピールします。
【例文】
大学卒業後、一貫して8年間、法人営業に従事してまいりました。
1社目のOA機器商社では、新規開拓営業を通じて行動量と精神的なタフさを養いました。その後、より顧客の課題解決に深く関わりたいと考え、2社目のITソリューション企業へ転職いたしました。現職では、無形商材の提案営業として顧客の経営課題に対するソリューション提案を行い、昨年度は部内トップとなる売上目標比120%を達成しました。
これまでの2社で培った「泥臭い開拓力」と「論理的な提案力」を活かし、貴社の事業拡大に即戦力として貢献したいと考えております。
パターン2:異職種へキャリアチェンジした場合(2社経験)
【状況】 販売から事務、営業から企画など、職種が変わっているケース。
【ポイント】 ポータブルスキル(持ち運び可能な能力)や仕事へのスタンスに共通点を持たせてまとめます。
【例文】
これまでの5年間、アパレル販売および一般事務として、顧客や社内スタッフへのサポート業務に従事してまいりました。
1社目のアパレル販売員としては、顧客ニーズを汲み取る傾聴力を磨き、店舗の売上目標達成に貢献しました。その後、バックオフィスから組織を支えたいと考え、2社目のメーカーにて一般事務職へ従事しました。現職では受発注業務や請求書発行を正確に遂行するとともに、Excelスキル(VLOOKUP関数等)を活用した業務効率化も提案・実行しております。
販売職で培ったホスピタリティと、事務職で培った正確な処理能力を活かし、貴社の営業事務として円滑な業務運営に貢献いたします。
パターン3:転職回数が多い場合(3社以上)
【状況】 3社以上の経験があり、一貫性がないように見られがちなケース。
【ポイント】 「豊富な経験」と「環境適応能力」を強みとして変換します。
【例文】
これまでの10年間、3つの異なる業界(人材・広告・メーカー)にて、一貫して法人営業職として従事してまいりました。
扱う商材や顧客層は多岐にわたりましたが、どの環境においても「徹底した事前リサーチに基づく仮説提案」を実践し、入社半年以内に目標を達成できる即戦力として貢献してまいりました。直近の株式会社〇〇では、チームリーダーとして5名のメンバー育成にも携わり、組織全体の底上げに尽力しました。
複数の環境で培った「適応力」と「多角的な視点」を活かし、貴社の新規事業開拓において早期に成果を創出したいと考えております。
採用担当者がチェックする「NGな書き方」
最後に、評価を下げてしまう書き方についても確認しておきましょう。
- 単なる社名の羅列
- NG:「A社に入社し退社、その後B社に入社し~」
- 改善:履歴書を見ればわかる事実は省き、そこで「何を得たか」を中心に書きます。
- 退職理由の言い訳
- NG:「業績悪化により退職」「人間関係が合わず転職」
- 改善:要約には退職理由は不要です。書くとしても「キャリアアップのため」「領域を広げるため」といった前向きな表現に留めます。
- 全ての経歴を均等に書く
- NG:10年前の新人時代の話と、現在の話を同じ分量で書く。
- 改善:直近の経験や、応募先企業で活かせる経験にスポットライトを当て、メリハリをつけます。
まとめ:複数の経験は「厚み」になる
2社以上の経験があることは、決してマイナスではありません。それはあなたが異なる環境に適応し、それぞれの場所で学びを得てきたという「キャリアの厚み」です。
職務要約では、その厚みを「一貫性のあるストーリー」として整理し、採用担当者に「いろいろな経験があるからこそ、自社で活躍してくれそうだ」という期待感を持たせることが大切です。自信を持って、これまでの歩みをアピールしてください。





