税理士事務所の職務経歴書で採用を勝ち取る自己PRの書き方と経験別例文集
税理士事務所(会計事務所)への転職は、専門性を高めたいと考える求職者にとって魅力的な選択肢ですが、繁忙期の激しさや高い専門性が求められる職場環境から、採用担当者は「即戦力性」と「定着性」を厳しく見極めています。特に未経験者や科目合格者の場合、単に「勉強熱心です」とアピールするだけでは不十分であり、プロフェッショナルとして顧客(顧問先)に向き合う姿勢や、事務所の利益に貢献できる実務能力を証明する必要があります。ここでは、税理士事務所への転職を目指す方が書類選考を通過するために知っておくべき自己PRの書き方のポイントと、経験やバックグラウンドに合わせた具体的な例文を紹介します。
税理士事務所の採用担当者が自己PRで重視する4つの実務能力
税理士事務所の所長や採用担当者が応募者に求めている資質は、資格の有無だけではありません。実務においては以下の4つの要素が総合的に評価されます。
- 正確性とスピード(実務処理能力)確定申告期などの繁忙期には膨大な量の処理が求められます。会計ソフト(弥生会計、マネーフォワード、TKCなど)の使用経験や、ミスなく迅速に入力・チェックを行う事務処理能力は必須です。
- コミュニケーション能力(顧問先対応)「先生稼業」ではなく「サービス業」としての側面が強くなっています。顧問先の経営者や経理担当者と円滑にコミュニケーションを取り、信頼関係を築ける対人スキルが重要視されます。
- 学習意欲と向上心税制改正は頻繁に行われるため、常に最新の知識をキャッチアップする姿勢が必要です。税理士試験の勉強状況や、実務知識を自ら習得しようとする意欲が問われます。
- 組織への貢献と協調性個人プレーになりがちな業務ですが、繁忙期には事務所全体で協力して期限を守る必要があります。周囲と連携し、サポートし合える協調性も評価ポイントです。
資格勉強と実務能力を両立させるアピールテクニック
税理士試験の勉強をしていることは大きなアピールになりますが、「勉強が第一優先」という印象を与えてしまうと、「繁忙期でも定時で帰るのではないか」と懸念される可能性があります。「資格取得への熱意」と「仕事への責任感」をセットで伝えることが重要です。「試験前は休暇をいただくこともありますが、その分、業務を前倒しで進めるなど調整を行います」といった記述を加えることで、自己管理能力の高さと仕事への誠実な姿勢を示すことができます。
【経験者】巡回監査と担当件数をアピールする例文
すでに会計事務所での勤務経験がある場合は、担当していた件数、法人の規模、使用ソフト、申告書の作成経験(法人税、消費税、所得税、相続税など)を具体的に記載し、即戦力性をアピールします。
私は、顧問先の経営課題に寄り添う巡回監査の実践と、正確かつ迅速な税務申告業務の遂行能力に自信があります。前職の会計事務所では5年間勤務し、個人事業主から年商10億円規模の法人まで約20件を担当してまいりました。月次監査においては、単なる試算表の作成にとどまらず、数値の変動要因を分析して経営者にわかりやすく報告することを徹底しました。また、TKCおよび弥生会計を使用した決算業務においては、繁忙期でもスケジュール管理を徹底し、期限の1週間前には申告を完了させるフローを確立しました。貴所においても、即戦力として質の高い税務サービスを提供し、顧問先の発展に貢献したいと考えています。
【未経験・科目合格者】学習意欲とポテンシャルをアピールする例文
実務未経験であっても、簿記論や財務諸表論などの科目合格がある場合は、基礎知識があることと、学習を継続できる粘り強さをアピールします。
私の強みは、目標達成に向けてコツコツと努力を継続する粘り強さと、新しい知識を吸収する高い学習意欲です。大学時代から税理士を目指して学習を続け、現在は簿記論と財務諸表論に合格しております。実務経験はありませんが、日商簿記1級レベルの会計知識を有しており、仕訳入力や財務諸表の読み取りなどの基礎業務はスムーズに習得できると考えています。また、前職の事務職では正確性を第一に業務に取り組み、3年間ミスゼロを継続した実績があります。税理士事務所での業務は正確さとスピードが命であると認識しております。持ち前の粘り強さと学習意欲を活かし、一日も早く所長や先輩方のサポートができるよう尽力します。
【企業経理から】実務経験と視点の違いをアピールする例文
事業会社の経理職からの転職は、経理担当者の気持ちや社内事情が分かるという点が強みになります。
私は、事業会社の経理担当者として培った実務経験と、顧客視点に立ったきめ細やかなサポート力を持っています。前職では製造業の経理部門にて、日次仕訳から月次・年次決算、税務申告の補助業務まで幅広く担当してまいりました。社内の他部署からの問い合わせに対応する中で、専門用語を使わずに会計処理を説明する「翻訳力」を磨きました。この経験は、顧問先の経理担当者様への指導や相談対応において、相手の立場に立った分かりやすいアドバイスを行う上で役立つと確信しています。これからは税務の専門家として、より幅広い企業の経営をサポートしたいと考え、貴所を志望しました。実務の現場感を持った税理士補助として貢献いたします。
【異業種(営業・接客)から】対人スキルとPCスキルをアピールする例文
全くの異業種から税理士事務所を目指す場合は、顧客対応力(サービス精神)と、基本的なPCスキル(Excelやブラインドタッチ)をアピールします。
私は、相手のニーズを汲み取るコミュニケーション能力と、正確な事務処理を行うためのPCスキルを持っています。これまでは法人営業として勤務し、多くの経営者の方々と対話をする中で、経営に関する悩みに寄り添い、解決策を提案してまいりました。税理士事務所の業務においても、数字を扱う正確さはもちろんのこと、経営者のパートナーとして信頼関係を築く力が重要であると考えています。現在は日商簿記2級を取得し、Excelの実務活用についても学習を進めております。未経験ではありますが、営業で培ったフットワークの軽さと対人スキルを活かし、顧問先に安心感を与えられるスタッフとして成長したいと考えています。
自己PRを書く際の注意点と繁忙期への覚悟
税理士事務所の自己PRで避けるべきなのは、「専門知識さえあればいい」という職人気質な態度や、「残業はしたくない」という権利主張ばかりが目立つ内容です。会計事務所は12月から3月にかけて激務となるのが一般的です。「繁忙期にはチームの一員として業務を完遂する覚悟がある」ことや、「プロフェッショナルとして顧客に貢献したい」というサービス精神を示すことで、採用担当者に「長く一緒に働ける仲間」として信頼される職務経歴書を作成してください。





