労務職の転職を成功させる職務経歴書の書き方と業務領域別サンプル

働き方改革やコンプライアンス意識の高まりにより企業の労務管理部門への期待は年々大きくなっており転職市場においても専門スキルを持つ労務担当者の需要は高水準で推移しています。しかし労務の業務は給与計算や社会保険手続きといった定型業務から人事制度設計や労使トラブル対応といった企画判断業務まで非常に幅広いため職務経歴書において自身のスキルレベルと経験領域を正確に伝えることは容易ではありません。採用担当者は応募者がどの程度の規模の組織でどのような業務を任され正確かつ効率的に処理できる能力を持っているかを厳しく見極めようとしています。本記事では労務職への転職を目指す方に向け採用担当者の視点を踏まえた職務経歴書の書き方と具体的な記述サンプルについて解説します。

労務の採用担当者が職務経歴書で重視する守備範囲と規模感

労務の採用において企業側が最も知りたい情報は担当していた従業員の規模数と業務の守備範囲です。従業員数が数十名の企業と数千名の企業では労務に求められる処理能力や専門性の質が大きく異なるためです。小規模企業では一人ですべての業務をこなす幅広さが求められる一方大規模企業では特定業務における大量処理能力や複雑なイレギュラー対応力が求められます。したがって職務経歴書を作成する際は単に給与計算業務と書くのではなく対象人数やアウトソーシングの活用の有無を明確にし自身が手を動かしていた範囲を具体的に記述する必要があります。また使用していた給与計算ソフトや勤怠管理システムの種類も即戦力性を判断する重要な材料となります。

職務要約で伝えるべき企業規模と役割の全体像

職務経歴書の冒頭に位置する職務要約はあなたのキャリアを一目で理解してもらうための重要なセクションです。ここでは経験年数とともに勤務していた企業の従業員数や業種そして労務部門の体制を簡潔な文章でまとめます。例えば従業員数300名のＩＴ企業にて5年間労務業務全般に従事し月次給与計算から社会保険手続きおよび年末調整業務を主担当として遂行しましたと記述します。これに加えて業務改善の実績やマネジメント経験があれば要約に盛り込みます。記述例としては勤怠管理システムの導入プロジェクトをリーダーとして推進し集計作業の工数を月間20時間削減しましたと具体的な成果を書くことで実務能力だけでなく企画推進力があることもアピールします。

給与計算および社会保険手続きの実務経験記述サンプル

労務の基礎となる給与計算や社会保険手続きの経験がある場合は正確性とスピードそして年間スケジュールへの対応力を強調します。業務内容の詳細記述においては月間の給与計算対象人数や賞与計算年末調整の対応人数を明記します。記述例としては正社員およびアルバイト計500名の給与計算業務において勤怠データのチェックから支給控除一覧表の作成までを担当し支給ミスゼロを継続しましたと正確性を伝えます。社会保険手続きについては入退社手続きだけでなく産休育休手続きや労災申請などの複雑な手続き経験についても触れます。記述例としては年間20件の産休育休取得者に対して制度説明から給付金申請までをワンストップでサポートし従業員の安心な就業継続を支援しましたと書きます。

就業規則改定および制度設計などの企画業務記述サンプル

就業規則の改定や人事制度の運用改定などの企画業務経験がある場合は法改正への対応力と課題解決能力をアピールします。記述例としては働き方改革関連法の施行に伴い36協定の見直しや有給休暇管理簿の整備を行い法令遵守体制を強化しましたと記述します。また人事制度設計については評価制度の改定プロジェクトに参画し等級定義の見直しや評価者研修の運営を担当しましたといった記述も有効です。ハラスメント対策やメンタルヘルス対応などの労務相談業務の経験があれば従業員との面談件数や解決に向けた弁護士や産業医との連携プロセスを具体的に記述しリスク管理能力の高さを示します。

安全衛生管理およびシステム導入プロジェクトの記述サンプル

安全衛生委員会の運営やストレスチェックの実施などの安全衛生管理業務やＤＸ推進によるシステム導入経験も市場価値の高いスキルです。記述例としては安全衛生委員会の事務局として月次の委員会運営や職場巡視を行い労働災害の未然防止に努めましたと書きます。システム導入については紙ベースだった年末調整業務をクラウドシステムへ移行し従業員の入力負担軽減と人事部の作業効率化を実現しましたといった具体的な改善事例を記述します。近年の労務トレンドとしてＳａａＳなどのクラウドツール活用スキルは高く評価されるためＳｍａｒｔＨＲやｆｒｅｅｅなどの具体的なサービス名を挙げて導入や運用定着化の実績をアピールすることは非常に効果的です。

未経験から労務職へキャリアチェンジする場合の書き方

総務や営業事務などから未経験で労務職を目指す場合は事務処理の正確性とコミュニケーション能力をアピールします。労務業務は従業員の生活に直結する給与や保険を扱うためミスが許されない仕事です。前職において膨大なデータを正確に処理した経験やダブルチェックを徹底してミスを防いだ実績を記述します。また従業員からの問い合わせに対応する機会も多いため相手の立場に立った丁寧な説明能力や守秘義務を遵守する誠実さも重要な資質となります。社会保険労務士や衛生管理者などの資格取得に向けて勉強中であることや独学で労働基準法などの基礎知識を学んでいることを記載し専門知識習得への意欲が高いことを示すことも大切です。

社会保険労務士などの資格とPCスキルのアピール方法

労務職において資格は専門知識の客観的な証明となります。社会保険労務士資格を保有している場合は大きな強みとなるため合格年月とともに明記します。未登録の場合でも試験合格者であることを記載します。その他にも第一種衛生管理者や給与計算実務能力検定などの関連資格も漏れなく記述します。ＰＣスキルについてはＥｘｃｅｌのＶＬＯＯＫＵＰ関数やピボットテーブルを用いたデータ集計能力が必須級のスキルとして求められます。記述例としてはＥｘｃｅｌ関数を活用して勤怠データの集計フォーマットを作成し手作業によるミスを排除しましたと書くことでＩＴリテラシーの高さと業務効率化への貢献能力を伝えます。

誠実さと改善意識を伝える自己PRの書き方

自己ＰＲでは労務担当者として不可欠な誠実さと業務プロセスを改善しようとする意識を記述します。記述例としては従業員一人ひとりが安心して働ける環境を作るために迅速かつ正確な手続きを心がけるとともに問い合わせには専門用語を使わずに分かりやすく答える丁寧な対応を徹底していますと書きます。また改善意識については法改正情報のキャッチアップを常に行い自社の規定や運用に落とし込むことでコンプライアンスリスクの低減に貢献してきましたといった記述をします。会社と従業員の間に立ち双方の信頼関係を構築する調整力や機微な情報を扱う口の堅さといった倫理観の高さもアピールポイントとなります。

書類選考通過に向けた最終チェックとレイアウトの工夫

職務経歴書が完成したら提出前に必ず全体の見直しを行います。労務職は正確性が命であるため職務経歴書に誤字脱字があることは致命的なマイナス評価につながります。日付や数字の整合性固有名詞の正確さを入念にチェックします。レイアウトについては見出しを活用して情報を整理し業務領域ごとの経験が一目で分かるように工夫します。給与計算や社会保険企画業務といったカテゴリごとに記述するキャリア式フォーマットを採用するのも有効です。また具体的な従業員数や処理件数などの数字は見やすい位置に配置し視認性を高めます。Ａ4サイズ2枚程度に情報を凝縮しあなたの実務能力と誠実な人柄が伝わる職務経歴書を作成することで採用担当者に安心感を与え書類選考の通過率を高めてください。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
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