翻訳者の転職を成功させる職務経歴書の書き方と実務経験別サンプル
グローバル化が進むビジネス環境において高度な語学力と専門知識を持つ翻訳者の需要は底堅いものがありますが専門職であるがゆえに採用基準は非常に厳格です。翻訳会社やグローバル企業の社内翻訳者として採用されるためには語学力があることは大前提でありそれに加えてどの分野に精通しているかやどれだけのスピードと正確性で処理できるかという実務能力を職務経歴書で証明する必要があります。採用担当者は応募者が即戦力として大量のドキュメントをさばけるかあるいは専門用語を正しく理解し適切な訳語を選択できるリサーチ能力を持っているかを見極めようとしています。本記事では翻訳者への転職を目指す方に向け採用担当者の視点を踏まえた職務経歴書の書き方とキャリアタイプ別の具体的な記述サンプルについて解説します。
翻訳者の採用担当者が重視する評価ポイントと専門性
翻訳者の採用において企業側が最も知りたい情報は対応可能な言語ペアと専門分野の深さです。英日翻訳なのか日英翻訳なのかあるいは多言語対応なのかを明確にすることはもちろんですがITや医薬および法務金融といった特定の専門領域における知識レベルが合否を分ける決定的な要素となります。したがって職務経歴書を作成する際は単に翻訳業務に従事したと記述するのではなくIT分野の技術仕様書やマニュアルの翻訳を専門としてきましたといったように得意分野を具体的に定義する必要があります。また翻訳スピードや品質管理への意識も重要です。1日あたりの処理ワード数や文字数を記述し納期を守りながら高品質な成果物を納品できる実務能力があることを客観的な数値でアピールします。
職務要約で伝えるべき言語ペアと専門分野
職務経歴書の冒頭に位置する職務要約はあなたの翻訳者としてのブランドを確立するための重要なセクションです。ここでは翻訳経験年数と主に対応してきた言語ペアそして専門としてきた業界や文書の種類を簡潔な文章でまとめます。例えばフリーランス翻訳者として5年間活動し主にITおよび通信分野の技術マニュアルやUI翻訳などの英日翻訳を担当しましたと記述します。これに加えてこれまでの翻訳実績の総量や主要なクライアントの属性についても触れます。記述例としては大手外資系IT企業の案件を中心に月平均3万ワードの翻訳を行い用語集の作成やスタイルガイドの整備にも貢献しましたと具体的な実績を要約して伝えることで読み手にプロフェッショナルとしての実力を印象付けます。
社内翻訳者の職務経歴書記述サンプルと実績の数値化
企業内の翻訳部門やローカライズ部門で勤務していた経験がある場合は組織の一員としての貢献度と幅広い業務対応力をアピールします。業務内容の詳細記述においては担当していたドキュメントの種類と翻訳ボリュームを明記します。記述例としては海外支社との会議資料や社内規定およびプレスリリースの日英翻訳を担当し月間約5万文字の翻訳を行いましたと業務量を伝えます。また翻訳以外の付帯業務についても記述します。例えば外部翻訳会社への発注管理や納品物の品質チェックなどのコーディネーション業務を行った経験や社内用語集のメンテナンスを主導し翻訳品質の均一化を図った実績などは組織で働く翻訳者として高く評価される要素です。
フリーランスから社内翻訳へ転身する場合の記述サンプル
フリーランスとしての活動実績を職務経歴書にまとめる場合はプロジェクトベースで記述するキャリア式フォーマットが適しています。記述例としては主要な取引先ごとにプロジェクトをまとめ担当した案件の概要と自身の役割を記述します。例えば自動車メーカーのマニュアル翻訳プロジェクトにおいてエンジニアと連携しながら専門用語の定義を行い整合性の取れた翻訳を提供しましたとプロセスを説明します。フリーランスから社内翻訳者を目指す場合採用担当者は組織への適応能力やコミュニケーション能力を懸念することがあります。そのため単独で作業をするだけでなくクライアントやチェッカーと円滑に連携してプロジェクトを完遂した経験やフィードバックを柔軟に受け入れて品質向上に努めた姿勢を強調することが重要です。
翻訳支援ツールとパソコンスキルの具体的なアピール
現代の翻訳業務においてTradosやMemoQなどの翻訳支援ツールいわゆるCATツールの使用スキルは必須となりつつあります。職務経歴書には使用可能なCATツールの名称とバージョンおよび実務での使用経験を具体的に記述します。記述例としてはTradosStudio2021を使用して翻訳メモリや用語ベースの管理を行い作業効率を30パーセント向上させましたとツール活用能力を証明します。またMicrosoftOffice製品のスキルも重要です。WordやExcelだけでなくPowerPointでのレイアウト調整やPDF編集ソフトを使用した訳出作業の経験があればそれらも記述し翻訳前後の編集作業にも対応できることをアピールします。
未経験から翻訳者を目指す場合の書き方と学習歴
実務未経験から翻訳者を目指す場合は語学力に加えて専門分野の知識と学習意欲をアピールします。職務経歴書ではTOEICスコアや英検などの語学資格だけでなく翻訳スクールでの学習歴やトライアルの受験状況などを記述します。記述例としては翻訳学校にて2年間実務翻訳コースを受講し金融分野の翻訳スキルを習得しました現在はアメリア定例トライアルにてA判定を取得していますと具体的な学習成果を伝えます。また前職での経験が翻訳に活かせる場合も積極的に記述します。例えばSEとしての勤務経験があればIT分野のドキュメントを正確に理解できる技術的背景があるためIT翻訳において即戦力となり得ると論理的に説明します。
自己PRで伝えるべき翻訳への姿勢とコミュニケーション能力
自己PRでは翻訳という仕事に対する真摯な姿勢と円滑なコミュニケーション能力を記述します。翻訳者は常に言葉と向き合い細部までこだわり抜く職人としての気質が求められます。記述例としては原文の意図を正確に汲み取り読み手にとって自然で分かりやすい訳文を作成することを常に心がけていますと書きます。またリサーチ能力についても触れます。不明な用語や概念については徹底的にリサーチを行い裏付けの取れた訳語を選択することで品質の担保に努めていますといった記述は信頼性を高めます。さらに翻訳は孤独な作業と思われがちですが依頼者や関係者との調整も重要です。納期遵守はもちろんのこと疑問点があれば早期に質問を行い認識の齟齬を防ぐコミュニケーションを徹底していますとアピールします。
書類選考通過に向けた最終チェックとレイアウト
職務経歴書が完成したら提出前に必ず全体の見直しを行います。翻訳者は言葉のプロフェッショナルであるため職務経歴書に誤字脱字や不自然な表現があることは致命的なマイナス評価につながります。日本語の文章として論理的で読みやすいかを入念にチェックします。またレイアウトについては見出しを活用して情報を整理し翻訳実績や使用ツールなどの重要事項が一目で分かるように工夫します。英語のレジュメ提出が求められる場合も多いため日本語版と英語版の両方を用意しそれぞれの言語特性に合わせた表現で作成します。あなたの高い語学力と専門性が正確に伝わる洗練された職務経歴書を作成し翻訳者としてのキャリアを切り拓いてください。





