弁護士の転職を成功に導く職務経歴書の書き方と実践的サンプル

弁護士の転職市場は流動性が高まっており法律事務所からインハウスローヤーへの転身やより専門性の高い事務所への移籍などキャリアパスは多様化しています。しかし高度な専門職であるがゆえに職務経歴書において自身のスキルと経験を正確に伝えることは容易ではありません。採用担当者は応募者がどの法分野に精通しどのような規模の案件を処理できる実務能力を持っているかを厳しく見極めようとしています。本記事では弁護士が書類選考を通過するために押さえておくべき職務経歴書の書き方と希望するキャリアに応じた具体的な記述サンプルについて解説します。

弁護士の採用担当者が職務経歴書で重視する取扱分野と専門性

弁護士の採用において最も重要視されるのは取扱分野の具体性と経験の深さです。単に企業法務全般と記述するだけでは不十分でありＭ＆Ａやファイナンスおよび知的財産あるいは労働法務といった特定の領域においてどのような実績を持っているかを明確にする必要があります。採用担当者は自社の法務課題や事務所の得意分野と応募者の経験がマッチしているかを確認するため担当した案件の種類や規模そして自身の役割を詳細に記述することが求められます。また英語力や会計知識などの周辺スキルも評価の対象となるためＴＯＥＩＣスコアや関連資格についても漏れなく記載し付加価値の高い人材であることをアピールします。

職務要約で定義する弁護士としてのキャリアと立ち位置

職務経歴書の冒頭に位置する職務要約は多忙な採用担当者やパートナー弁護士に自身のキャリアの全体像を短時間で伝えるための重要なセクションです。ここでは修習期や弁護士登録年数とともに所属していた事務所や企業の概要そして主に取り扱ってきた法分野を簡潔な文章でまとめます。例えば企業法務系法律事務所にて５年間勤務し主に上場企業のＭ＆Ａ案件におけるデューデリジェンスや契約書作成および株主総会指導を担当しましたと記述します。これに加えてインハウスへの転職を目指す場合はビジネスへの関心や社内調整能力についても触れます。記述例としては法的リスクの指摘にとどまらず事業の成長を支援する戦略的な法務アドバイスを提供してきましたと書くことでビジネスパートナーとしての適性を示します。

インハウスローヤー企業内弁護士への転職向け記述サンプル

企業内弁護士を目指す場合は法律の専門知識をビジネスの現場でどのように活かせるかが評価のポイントとなります。職務経歴書では契約法務やコンプライアンス対応および新規事業の法的支援といった実務経験を具体的に記述します。記述例としてはＩＴ企業にて利用規約の作成や個人情報保護法対応を担当しエンジニアや企画担当者と連携しながらサービスの適法性を確保しましたと役割を定義します。また係争対応だけでなく予防法務への取り組みも重要です。社内向けのコンプライアンス研修の企画実施や契約審査フローの構築など組織全体のリーガルリテラシー向上に貢献した実績を記述することで組織の一員として活躍できる人材であることをアピールします。

法律事務所間の転職および訴訟対応の記述サンプル

法律事務所間での転職においては訴訟対応や紛争解決の実績が実務能力の証明となります。記述サンプルとしては民事訴訟における準備書面の起案や証拠収集および期日対応の経験を具体的に記述します。例えば大規模な損害賠償請求訴訟において主任弁護士として弁論活動を行い勝訴的和解を勝ち取りましたといった成果を記述します。またＭ＆Ａやファイナンスなどの専門的な案件であれば案件の規模やスキーム自身の担当範囲を詳細に記します。クロスボーダー案件の経験がある場合は英語での契約交渉や海外事務所との協働実績についても触れグローバルな案件対応が可能であることを強調します。

実績の数値化と守秘義務に配慮した表現テクニック

弁護士の職務経歴書において具体的な実績を示すことは重要ですが守秘義務の観点からクライアント名や案件の詳細を特定できる情報は伏せる必要があります。そのため業種や規模感で表現するテクニックが求められます。記述例としては東証プライム上場の大手製造業における海外子会社設立案件や従業員数１０００名規模のＩＴ企業における労働紛争案件といった表現を用います。また実績を数値化することも有効です。月間の契約書審査件数や年間相談件数および担当したデューデリジェンスの件数などを具体的な数字で示すことで業務処理能力の高さや経験の豊富さを客観的に伝えることができます。

ビジネス感覚とコミュニケーション能力を示す自己PR

自己ＰＲでは高度な法的知識に加えクライアントや社内関係者と円滑に業務を進めるためのコミュニケーション能力やビジネス感覚を記述します。記述例としては難解な法律用語を避けてクライアントの視点に立った分かりやすい説明を心がけていますと書きます。またビジネスを加速させる法務という意識についても触れます。単に法的な不可を伝えるだけでなく代替案を提示することでビジネスの目的達成をサポートする解決志向のアプローチを大切にしていますといった記述は特にインハウスローヤーや企業法務系事務所において高く評価される要素です。

書類選考通過に向けた最終チェックとレイアウト

職務経歴書が完成したら提出前に必ず全体の見直しを行います。弁護士は文書作成のプロフェッショナルであるため職務経歴書における誤字脱字や論理の飛躍は実務能力への疑念に直結する致命的なミスとなります。一字一句を入念にチェックし論理構成が破綻していないかを確認します。またレイアウトについては見出しを活用して情報を整理し取扱分野ごとの実績が一目で分かるように工夫します。キャリア式フォーマットを採用して専門分野ごとに経験をまとめるのも有効です。Ａ４サイズ２枚から３枚程度に情報を凝縮しあなたの専門性と誠実な人柄が伝わる職務経歴書を作成することで採用担当者に安心感を与え書類選考の通過率を高めてください。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
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