薬剤師の職務経歴書は「枚数」と「科目」で決まる。採用担当者が評価するフォーマットと書き方
薬剤師の転職市場は依然として売り手市場と言われますが、好条件の調剤薬局、人気の大手ドラッグストア、あるいは狭き門である病院薬剤師や企業(CRA・管理薬剤師など)への転職となると、書類選考のハードルは決して低くありません。
「資格があればどこでも受かる」というのは誤解です。採用担当者は免許の有無だけでなく、あなたが「どれくらいの忙しさの現場で」「どのような科目を」「どれくらいのスピードで」捌いてきたかという実務能力をシビアに見ています。ここでは、薬剤師としての実力を正しく伝え、希望する職場への切符を手にするための最適なフォーマット選びと、書き方の鉄則について解説します。
薬剤師に最適なのは「逆編年体式」のWordフォーマット
薬剤師の職務経歴書では、直近の経歴から過去に遡って記載する**「逆編年体式」**のフォーマットを選ぶのが基本です。
医療制度や調剤報酬改定により、薬剤師に求められる業務(在宅医療、かかりつけ機能など)は年々変化しています。そのため、採用担当者は「今、どのようなスキルを持っているか」を最優先で確認します。直近の経験が冒頭に来るこの形式が、最も即戦力性をアピールできます。
作成ツールは**Word(ワード)**を推奨します。薬歴管理の電子化が進んでいる現在、PCスキルは必須です。見やすくレイアウトされた書類を作成すること自体が、正確な事務処理能力の証明になります。
採用担当者が必ずチェックする4つの「店舗スペック」
「調剤業務全般を行いました」という一言で済ませてはいけません。1日40枚の処方箋をこなす店舗と、200枚をこなす店舗では求められるスキルが全く異なるからです。勤務先ごとに以下の4つの情報を「数字」で具体的に記載してください。
1. 処方箋枚数と科目
- 「1日平均応需枚数:120枚(繁忙期150枚)」
- 「主な応需科目:内科(50%)、整形外科(30%)、小児科(20%)」どの科目をどれくらいのボリュームで扱っていたかは、知識の偏りや対応スピードを判断する最重要指標です。面対応(多科目)の経験があれば、それも明記します。
2. 人員体制
- 「薬剤師:常勤4名、パート2名/医療事務:3名」この数字と処方箋枚数を照らし合わせることで、採用担当者は「一人あたりの負担」や「チームワークの必要性」を読み取ります。
3. 設備・システム環境
- 「電子薬歴(メーカー名:○○)使用」
- 「自動分包機(Vマス)、散薬監査システムあり」使用していた機器やシステム名を記載することで、入社後の教育コストが低いことをアピールできます。
4. 役割と付帯業務
- 「管理薬剤師として在庫管理・麻薬管理を担当」
- 「実務実習指導薬剤師として学生指導を担当」
- 「在宅医療(施設2件・個人宅5件)を担当」調剤以外のプラスアルファの業務は、大きな加点要素になります。
【業態別】評価を上げる書き方のポイント
薬剤師の活躍の場は多岐にわたります。応募先の業態に合わせてアピールポイントを調整してください。
調剤薬局の場合
「かかりつけ薬剤師」としての実績や、「在宅医療」への対応経験を強調します。「服薬指導での工夫により、残薬整理を行った実績」や「後発医薬品(ジェネリック)への変更率向上への取り組み」など、薬局経営に貢献したエピソードは高く評価されます。
ドラッグストア(OTC)の場合
「セルフメディケーション」への理解と「店舗運営能力」を強調します。OTC医薬品の販売実績はもちろん、日用品を含めた売場作り、数値管理(売上・粗利)、登録販売者やスタッフへの指導経験を記載します。
病院薬剤師の場合
「チーム医療」と「専門性」を強調します。病棟業務、DI業務、抗がん剤のミキシング、NST(栄養サポートチーム)やICT(感染制御チーム)への参加実績などを具体的に記述します。夜勤・当直の経験有無も必須項目です。
企業(製薬会社・CRO等)の場合
「コミュニケーション能力」と「PCスキル・英語力」を強調します。臨床開発モニター(CRA)や品質管理(QC)などを目指す場合、医療現場とは異なるビジネスマナーや論理的思考力が求められます。
資格欄は「専門性」と「学習意欲」の証明
薬剤師免許以外にも、認定薬剤師や専門資格を持っている場合は必ず正式名称で記載してください。
- 研修認定薬剤師
- 実務実習指導薬剤師
- 認定実務実習指導薬剤師
- 外来がん治療認定薬剤師、緩和薬物療法認定薬剤師など
- スポーツファーマシスト
資格取得日が古い場合でも、現在も更新している(e-ラーニング等で単位を取得している)ことを併記すれば、継続的な学習意欲をアピールできます。
自己PRで伝えるべき「対人スキル」
フォーマットの最後にある自己PR欄では、知識以外の「ヒューマンスキル」を伝えます。
- 疑義照会のスキル「医師との信頼関係を築き、スムーズな疑義照会を行うことで処方ミスを未然に防いだ」
- 患者様への対応力「コンプライアンス(アドヒアランス)の悪い患者様に対し、生活背景を聞き出した上で服用方法を提案し、改善につなげた」
- ミスの防止・安全管理「調剤過誤ゼロを目指し、監査フローの見直しやヒヤリハットの共有会を主導した」
薬剤師の職務経歴書は、あなたの「専門家としてのスペック」を可視化するカルテのようなものです。具体的な数字(枚数・科目・人数)で現場の忙しさを再現し、そこでの確実な業務遂行能力を伝えるフォーマットを作成することで、採用担当者に「この人なら安心して現場を任せられる」という信頼感を与えてください。





