運送業(トラック・バス・タクシー・配送など)の転職活動において、職務経歴書は免許証の次に重要な「技術証明書」です。
「運転ができることは免許を見れば分かるだろう」と思っていませんか? 実は、採用担当者(運行管理者や配車担当)が知りたいのは、免許の有無だけではありません。「どのサイズの車を」「何を運んで」「どれくらい安全に走ってきたか」という、具体的な経験の中身です。
一般的なオフィスワーク用のテンプレートをそのまま使うと、運送業特有のアピールポイントが抜け落ちてしまい、書類選考で不利になることがあります。ここでは、プロドライバーとしての実力を正しく伝え、希望する会社への転職を成功させるための最適なフォーマットと、書き方の鉄則について解説します。
運送業に最適なのは「逆編年体式」のフォーマット
運送業の職務経歴書では、直近の経歴から過去に遡って記載する**「逆編年体式」**のフォーマットを選ぶのが基本です。
運送業界は、扱う車両のサイズや荷物の種類によって業務内容が全く異なります。採用担当者は「直近で何トンの車に乗っていたか」「即戦力としてどのルートを任せられるか」を最優先で確認するため、最新のキャリアが冒頭に来るこの形式がベストです。
パソコン作成か、手書きか
以前は手書きも多かった業界ですが、現在はパソコン(Word)作成が推奨されます。特に大手物流企業や、日報をタブレット端末で入力するような企業では、PCで作成された書類の方が「新しい機器(デジタコや専用端末)への適応力がある」と判断され、好印象につながります。
採用担当者が必ずチェックする4つの「運行スペック」
単に「配送業務に従事」と書くだけでは不十分です。採用担当者が知りたいのは、あなたの運転技術と経験の詳細です。勤務先ごとに、以下の4つの情報を必ず記載してください。
1. 乗務した車種とサイズ
「トラック」ではなく、具体的なサイズと形状を書きます。これがないと、配車担当者はあなたのスキルを判断できません。
- サイズ:2t、4t、大型(10t)、トレーラー、軽バン
- 形状:ウィング車、平ボディ、冷凍冷蔵車、ユニック車、パッカー車、ゲート車
- 旅客の場合:大型バス(観光・路線)、タクシー(法人・個人)、ハイヤー
2. 運んだもの(荷質)と積み降ろし方法
何を運んでいたかで、求められる慎重さや体力が分かります。
- 荷物:食品(温度管理必須)、精密機器(振動厳禁)、建材、危険物、雑貨(EC)
- 荷役方法:ここが非常に重要です。「手積み手降ろし」「パレット輸送(フォークリフト使用)」「カゴ台車」など、身体的負担が伝わるように明記します。これが書かれていると、ミスマッチを防げます。
3. 配送エリアと件数
長距離か地場かで、生活リズムや体力の使い方が異なります。
- エリア:長距離(関東〜九州)、中距離、地場ルート配送
- 件数:1日1件のセンター間輸送、1日100件の個宅配送など
- 道路:高速道路利用がメインか、下道(市街地)メインか
4. 無事故・無違反の実績
ドライバーにとって最大の勲章であり、企業が最も欲しがる情報です。
- 「5年間無事故・無違反」「優良運転者表彰を受賞」など、期間と事実を数字で記載します。ゴールド免許であれば、資格欄だけでなく自己PRでも強調すべきです。
「ただ運ぶだけ」ではない実績のアピール方法
「運転していただけなので、書く実績がない」と悩む必要はありません。プロドライバーとしての工夫を言語化すれば、立派な自己PRになります。
効率化と燃費向上
「デジタコ(デジタルタコグラフ)の点数を意識し、急発進・急ブレーキを抑制。営業所内で燃費向上率1位を達成した」
「渋滞予測に基づきルートを工夫し、遅延ゼロを継続した」
品質管理と丁寧さ
「荷崩れ防止のためにラッシング(固定)を徹底し、3年間貨物事故ゼロを達成」
「食品配送において温度管理を徹底し、鮮度を落とさずに納品した」
接客・コミュニケーション(宅配・引越し・旅客)
「配送時の明るい挨拶を心がけ、納品先のお客様から指名をいただいた」
「乗客への丁寧なアナウンスを行い、接客評価で月間MVPを受賞した」
資格欄は「フル装備」で書く
運転免許以外にも、業務に関連する資格はすべて正式名称で記載してください。多ければ多いほど、配車の幅が広がるため有利です。
- 運転免許:大型自動車第一種免許、牽引免許など(取得年月も記載)
- 作業免許:フォークリフト運転技能講習、小型移動式クレーン、玉掛け
- 管理者系:運行管理者(貨物・旅客)、整備士資格
- その他:危険物取扱者、高圧ガス移動監視者
自己PRで伝えるべき「安全」と「健康」
フォーマットの最後にある自己PR欄では、スキル以外の「ドライバーとしての資質」を伝えます。
- 安全意識の高さ「『だろう運転』を排除し、KYT(危険予知トレーニング)を実践している」「始業前点検を欠かさず行っている」など、安全への執着心。
- 健康管理「不規則なシフトでも体調を崩さないよう、睡眠管理と食事に気を使っている」という点は、長く働いてほしい企業にとって非常に安心できる要素です。
運送業の職務経歴書は、あなたの「腕」と「信頼」を証明する書類です。
「車種」「荷物」「無事故歴」を具体的な言葉で埋めたフォーマットを作成することで、採用担当者に「この人に任せれば、荷物(またはお客様)を安全に届けてくれる」と確信させてください。





