SESエンジニアの職務経歴書は「案件の羅列」では通らない。プロジェクト形式で実力を証明する書き方
客先常駐(SES)で働くエンジニアが転職活動をする際、職務経歴書の作成で最も頭を悩ませるのは「プロジェクト数の多さ」と「守秘義務」です。短い案件を繰り返していると経歴書が分厚くなりすぎたり、逆に単純作業ばかりでアピールポイントがないと感じたりすることもあります。
しかし、SESエンジニアには多様な現場で培った「適応力」と「幅広い技術経験」という武器があります。それを正しく伝えるためには、一般的な時系列のフォーマットではなく、エンジニア特有の「プロジェクト形式(キャリア式)」を選ぶことが重要です。ここでは、SESエンジニアが書類選考を突破するために選ぶべきフォーマットと、実力をアピールする書き方のコツを解説します。
SESに最適なのは「プロジェクト形式(キャリア式)」
SESエンジニアの場合、所属企業(雇用主)は1社でも、常駐先が変わるたびに「職場」が変わります。そのため、一般的な「編年体式(入社順に書く形式)」で書くと、所属企業の説明ばかりになり、肝心の技術経験が埋もれてしまいます。
推奨フォーマット:プロジェクト形式
所属企業ごとではなく、参画した「プロジェクト単位」でブロックを分けて記述する形式です。
これにより、直近の案件や、アピールしたい大規模案件を詳しく書き、重要度の低い案件を簡潔にまとめるというメリハリが可能になります。
ExcelかWordか
SES業界内での案件マッチング(営業資料)として使う「スキルシート」はExcelが主流ですが、転職活動(正社員採用)で提出する「職務経歴書」は**Word(ワード)**で作成するのが一般的です。Wordの方が、志望動機や自己PRといった文章情報を読みやすくレイアウトできるからです。
採用担当者が必ずチェックする4つの技術要件
自社開発企業やSIerの採用担当者は、あなたが「即戦力として開発に携われるか」を見ています。各プロジェクトの欄には、以下の4要素を必ず盛り込んでください。
1. 開発環境(技術スタック)
使用した技術を詳細に記載します。
- 言語:Java, PHP, Python, TypeScriptなど(バージョンも必須)
- フレームワーク:Spring Boot, Laravel, Reactなど
- DB・インフラ:AWS, Docker, Oracle, MySQL
- ツール:Git, Jenkins, JIRA, Slack
2. 担当工程(フェーズ)
「開発」とひとくくりにせず、どこを担当したかを明確にします。
- 要件定義
- 基本設計・詳細設計
- 実装(製造)
- テスト(単体・結合)
- 運用保守
SESの場合、下流工程(テストや運用)が多いと懸念されがちですが、「テスト仕様書の作成から担当した」「運用中にツールを作成して効率化した」など、能動的な動きを書くことで評価が変わります。
3. チーム体制と役割
「PM、PL、メンバー」という役割と、チームの人数を記載します。「メンバー」であっても、新人教育やコードレビューを担当していれば、それは立派なリーダーシップ経験としてアピールできます。
4. プロジェクトの規模と期間
「期間:2023年4月~2023年9月(6ヶ月)」のように期間を明記し、「人月」や「ユーザー数」で規模感を示します。
案件が多すぎる・短すぎる場合の対処法
SESエンジニアによくある悩みへの対処法です。
案件数が多くて書ききれない場合
全ての案件を詳細に書く必要はありません。応募先の技術要件にマッチする重要なプロジェクト(3つ程度)をピックアップして詳細に書き、それ以外の似たような案件や小規模な案件は、「その他、Javaを用いたWebシステム改修案件など計5件に従事」のように数行でまとめます。
期間が短い・単純作業の場合
「3ヶ月で終了した」「テスターのみだった」という場合でも、その中で「何を学んだか」「どう効率化したか」を書きます。また、短期間で現場が変わることは「キャッチアップの早さ」や「環境適応能力」の証明でもあります。「短期間で現場のルールを把握し、即座に戦力として稼働した」という点を自己PRにつなげます。
守秘義務(NDA)への配慮と書き方
SESでは常駐先の企業名を公表できないケースがほとんどです。その場合は、以下のように業界やシステムの種類で表現します。
- NG:「株式会社〇〇(具体的すぎる社名)」
- OK:「大手通信キャリア向け」「メガバンク向け」「官公庁向け」
社名は伏せつつ、「どのようなシステムか(顧客管理システム、ECサイトなど)」を具体的に書くことで、業務の難易度やイメージを伝えます。
「スキルシート」と「職務経歴書」の違いを意識する
最後に重要なのが、普段SESの現場面談で使っている「スキルシート」をそのまま転職活動に使わないことです。
- スキルシート:技術のマッチングを見るための「スペック表」。
- 職務経歴書:社員として採用するための「プレゼン資料」。
職務経歴書には、スキルシートにはない「職務要約(キャリアのあらすじ)」と「自己PR(仕事へのスタンス)」が必要です。技術力だけでなく、「なぜその技術を選んだか」「チームのためにどう動いたか」という人間性や思考プロセスを記述することで、単なる作業者(オペレーター)ではなく、一緒に働く仲間としての魅力を伝えてください。





