理学療法士の職務経歴書は「臨床の解像度」で決まる。採用担当者が会いたくなるフォーマットと書き方
理学療法士(PT)の転職活動において、職務経歴書は免許証の代わりではなく、あなたの「臨床家としての腕前」を証明するカルテのようなものです。
多くの応募者が集まる人気病院や訪問看護ステーションでは、資格を持っていることは前提条件にすぎません。採用担当者(リハビリテーション科長や事務長)が知りたいのは「どのような疾患の患者様を、どれくらいの数、どのようなアプローチで担当してきたか」という具体的な臨床実績です。
ここでは、理学療法士の専門性を最大限にアピールするためのフォーマット選びと、書類選考を通過する書き方のポイントについて解説します。
理学療法士に最適なのは「逆編年体式」のフォーマット
理学療法士の職務経歴書では、直近の経歴から過去に遡って記載する**「逆編年体式」**のフォーマットを選ぶのが鉄則です。
医療技術やリハビリテーションの手法は日々進歩しています。そのため、採用担当者が最も重視するのは「直近でどのような臨床経験を積んでいるか(即戦力性)」です。回復期リハビリテーション病棟での在宅復帰支援なのか、急性期でのリスク管理なのか、訪問リハでの環境調整なのか。現在のスキルセットが最初に目に入る構成にすることで、強力なアピールが可能になります。
作成ツールは**Word(ワード)**が一般的ですが、学会発表歴や保有資格、経験した疾患別症例数を一覧で見せたい場合は、Excelを活用して表形式で整理するのも有効です。
採用担当者が必ずチェックする4つの必須項目
採用側が知りたいのは「うちの病院(施設)に来て、すぐに動けるか」です。どのフォーマットを使う場合でも、以下の4つの項目は必ず数字や専門用語を用いて具体的に記載してください。
1. 施設形態と規模
勤務先がどのステージにあるかを明確にします。
- 形態:急性期、回復期、療養型、クリニック、老健、訪問リハなど。
- 規模:病床数(全体〇床/リハビリ対象〇床)、リハビリテーション科のスタッフ数(PT・OT・STの内訳)。これにより、組織内での立ち位置や、多職種連携の規模感が伝わります。
2. 対象疾患と臨床実績
「脳血管疾患」「運動器疾患」「呼吸器疾患」「廃用症候群」「難病」など、対応した疾患の内訳を記載します。
さらに、「担当患者数:月平均20名」「1日平均取得単位数:18単位」といった数字を添えることで、業務の処理能力とタフさを証明します。
3. 具体的な手技・アプローチ
単に「理学療法業務」と書くのではなく、得意とする分野や手技を記載します。
- 徒手療法(ボバース、PNF、AKAなど ※流派にこだわりすぎない範囲で)
- 装具療法(下肢装具の選定・作成経験)
- 呼吸リハビリテーション
- 心臓リハビリテーション
4. チーム医療と役割
カンファレンスへの参加頻度、家屋評価の実施件数、医師や看護師、ケアマネジャーとの連携実績を記載します。また、新人指導(バイザー)や実習生指導、リーダー業務などの役割があれば、マネジメント能力として高く評価されます。
【領域別】評価を上げる書き方のポイント
理学療法士の活躍の場は多岐にわたります。それぞれの領域に合わせてアピールポイントを調整してください。
急性期・総合病院の場合
「リスク管理能力」と「早期離床」を強調します。
術後早期からの介入実績や、人工呼吸器装着患者への対応、医師・看護師との密な連携による安全管理の実績を具体的に記述します。
回復期リハビリテーション病棟の場合
「実績指数」と「在宅復帰」を強調します。
FIM(機能的自立度評価表)利得の向上実績や、在宅復帰率への貢献、家屋調査や退院前指導の件数などを記載し、「結果を出せるPT」であることをアピールします。
訪問リハビリ・生活期の場合
「環境調整」と「生活の質(QOL)向上」を強調します。
実際の生活環境に合わせた福祉用具の選定・提案、住宅改修のアドバイス、ご家族への介助指導など、生活に密着した支援スキルを伝えます。
資格・学会活動で専門性を補強する
国家資格以外にも、専門性を証明する資格や活動があれば必ず記載します。
- 認定理学療法士・専門理学療法士(分野も明記)
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 心臓リハビリテーション指導士
- 介護支援専門員(ケアマネジャー)
- 学会発表・論文投稿の実績テーマ、発表年、学会名をリスト化します。勉強熱心な姿勢は、どの施設でも好印象を与えます。
自己PRで伝えるべき「PTとしての信念」
フォーマットの最後にある自己PR欄では、技術面だけでなく「患者様への向き合い方」を伝えます。
- コミュニケーション能力拒否のある患者様への動機づけや、不安を抱えるご家族への精神的サポートなど、信頼関係を築くための工夫。
- 向上心・探究心院内勉強会の主催や、外部研修への積極的な参加など、常に最新の知識を取り入れようとする姿勢。
理学療法士の職務経歴書は、専門用語が多くなりがちですが、それが「共通言語」として通じる相手(同職種の採用担当者)に送るものです。
遠慮せずに具体的な評価スケールや手技の名前を出し、あなたの臨床能力の解像度を高めた書類を作成してください。それが、即戦力として評価されるための最短ルートです。





