経理の職務経歴書は「実務能力」の証明書。採用担当者が評価するフォーマットと書き方
経理職の転職活動において、職務経歴書は単なる経歴の記録ではなく、あなたの会計知識と実務能力を証明する重要な書類です。一般的な事務職とは異なり、経理は専門性が高く、企業の規模や会計基準によって求められるスキルが大きく異なります。そのため、汎用的なフォーマットをそのまま使うだけでは、あなたの本当の価値が伝わらず、書類選考で不採用になってしまうリスクがあります。ここでは、経理職としての市場価値を最大化するためのフォーマット選びと、採用担当者が重視する具体的な記載項目について解説します。
経理に最適なのはWordかExcelか
経理職の方は日頃からExcelを使い慣れているため、「職務経歴書もExcelで作った方がスキルアピールになるのでは?」と考える方が多くいます。結論から言えば、基本的には「Word(ワード)」での作成をおすすめします。
理由は、職務経歴書が「読むための書類」だからです。経理業務には報告書作成や他部署との調整業務も含まれるため、論理的で読みやすい文章を作成する能力も評価対象になります。Wordであれば、職務要約や自己PRなどの長文をきれいにレイアウトでき、印刷時のトラブルも少なくなります。
ただし、Excelでの作成が完全にNGというわけではありません。複雑な実務経験を表形式で整理したい場合や、関数を用いた高度な管理資料作成能力をアピールしたい場合は、Excelで作成することも有効です。その場合は、印刷範囲の設定を厳密に行い、必ずPDF化してレイアウト崩れを防ぐ配慮が必須です。
フォーマットの形式は、直近の業務経験を強調できる**「逆編年体式」**を選んでください。経理の世界では、最新の会計基準や税制に対応した実務経験が最も高く評価されるからです。
経理の採用担当者が必ずチェックする4つの必須項目
経理の職務経歴書では、「何ができるか」を判断するための判断材料として、以下の4つの項目が不可欠です。これらが抜けていると、スキルのレベル感が伝わりません。
1. 勤務先の企業規模と業種
経理業務の難易度は、会社の規模によって全く異なります。
- 資本金・売上高:取り扱う金額の規模感を示します。
- 従業員数:給与計算や経費精算のボリュームを示します。
- 上場・非上場の別:開示業務や内部統制対応の有無に関わります。
- 業種:建設業や製造業なら原価計算、商社なら外貨建て取引など、特有の会計処理経験を示します。
2. 担当業務の範囲と深さ
「経理全般」という書き方は避け、業務を細分化して記載します。
- 日次業務:仕訳入力、現金出納、経費精算
- 月次業務:売掛・買掛管理、月次決算(単体・連結)
- 年次業務:年次決算、税務申告書作成(補助か完結か)、有価証券報告書作成
- その他:監査法人対応、税務調査対応、資金繰り管理
自分が「主担当」として完結できるのか、「補助」として関わったのかを明確にすることが重要です。
3. 使用可能な会計ソフトとPCスキル
使用経験のある会計ソフト(勘定奉行、弥生会計、SAP、Oracleなど)を記載します。応募先のシステムと同じであれば即戦力として有利になります。
また、Excelスキルは具体的に記載してください。「VLOOKUP関数によるデータ突合」「ピボットテーブルによる分析」「マクロ(VBA)による自動化」など、どのレベルの操作が可能かを書くことで、業務効率性が伝わります。
4. 業務改善の実績
「正確に処理しました」は経理として当たり前です。プラスアルファの評価を得るためには、「決算早期化のために業務フローを見直し、月次決算を5営業日から3営業日に短縮した」「経費精算システムを導入し、入力工数を20パーセント削減した」といった、業務改善の実績を定量的に記載します。
経験年数別のアピールポイント
【若手・実務経験が浅い場合】
簿記2級などの資格取得はもちろんですが、「正確性」と「スピード」への意識を強調します。大量の伝票処理をミスなく行った実績や、先輩社員をサポートするために自らマニュアルを作成した経験など、基礎力とポテンシャルをアピールしてください。
【中堅・リーダー候補の場合】
単体決算だけでなく、連結決算や開示書類(短信・有報)作成、税務申告の実務経験が強みになります。また、後輩の指導育成やチームマネジメントの経験があれば、人数と共に記載し、プレイングマネージャーとしての資質を示します。
自己PRで伝えるべき「経理としての資質」
フォーマットの最後にある自己PR欄では、スキル以外の専門性を補完します。
- コミュニケーション能力:経理は現場部門からの情報収集が欠かせません。他部署と円滑に連携し、数字の根拠を正確に把握する力をアピールします。
- 学習意欲:頻繁に改正される税法や会計基準を常にキャッチアップし、実務に反映させる姿勢を示します。
- 経営視点:単なる集計屋ではなく、数字から経営課題を発見し、経営層へ提案・報告ができる視座の高さを伝えます。
経理職の職務経歴書は、「正確性」が命です。誤字脱字や数字の間違いは致命的なマイナス評価につながります。作成後は入念にチェックを行い、あなたの実務能力が正しく伝わる、プロフェッショナルな書類を完成させてください。





