銀行員の職務経歴書は「堅実さ」と「数字」で信頼を勝ち取る。採用担当者が評価するフォーマットと書き方の鉄則
銀行業界の転職市場は、フィンテックの台頭や異業種への人材流動により活発化しています。しかし、銀行という組織の性質上、採用選考における「書類の基準」は依然として厳格です。
「銀行員ならきちんとした書類を作って当たり前」という無言のプレッシャーがある中で、一般的なテンプレートをただ埋めるだけでは、あなたの実務能力も信頼性も伝わりません。採用担当者は、緻密さ、数字への強さ、そしてコンプライアンス意識を書類の端々から読み取ろうとしています。
ここでは、銀行出身者(または銀行を目指す方)が、その堅実なスキルを正しくアピールし、書類選考を突破するための最適なフォーマット選びと、書き方の鉄則について解説します。
銀行業界に最適なのは「逆編年体式」のWordフォーマット
銀行業界の職務経歴書において、奇をてらったデザインや独自性は不要です。最も評価されるのは、**「逆編年体式」**のオーソドックスなフォーマットです。
なぜ逆編年体式か
直近のキャリアから過去へと遡る形式です。銀行業務は年次によって役割(窓口→渉外→役席など)が大きく変わるため、採用担当者は「現在の役職と権限」を最優先で確認します。直近の実績が冒頭に来るこの形式が、最も合理的で好まれます。
ExcelではなくWordを選ぶ理由
銀行員は数字を扱うためExcelを好む傾向にありますが、職務経歴書は**Word(ワード)**で作成してください。
稟議書や企画書など、行内の重要書類は文章構成力が問われます。見出しを整え、インデントを揃え、誤字脱字のない美しいWord文書を作成すること自体が、「行内文書作成能力(=事務処理能力の高さ)」の証明となります。
採用担当者が必ずチェックする4つの「銀行員スペック」
「融資業務全般」「投資信託の販売」といった業務内容の羅列では不十分です。あなたがどのような環境で、どれくらいの規模の数字を背負っていたか、以下の4つの項目を具体的な数値で記載してください。
1. 担当顧客とエリア特性
法人営業(RM)か個人営業(リテール)かを明確にした上で、顧客の属性を書きます。
- 法人:「年商10億~50億円の中堅・中小企業を担当」「担当社数50社」
- 個人:「富裕層向け(預かり資産1億円以上)を担当」「相続案件中心」
- エリア:「都心オフィス街」「地方のベッドタウン」など、市場特性も併記すると営業難易度が伝わります。
2. 取扱商品と実績(トータルでの貢献)
銀行員はノルマ(目標)の項目が多岐にわたります。単に「目標達成」と書くのではなく、内訳を示します。
- 融資:実行額、融資残高の純増額
- 預かり資産:投資信託、保険商品の販売額、手数料収益
- その他:ビジネスマッチング成約件数、事業承継案件数、クレジットカード獲得数
3. 与信判断・稟議書作成能力(法人営業の場合)
融資案件において、どこまで自分で判断し、稟議を通したかは重要なスキル指標です。
- 「プロパー融資の稟議書作成(月平均○件)」
- 「財務分析に基づいた格付け対応」
- 「リスケジュール(条件変更)や経営改善計画策定の支援実績」
4. 事務処理能力と正確性(バックオフィスの場合)
後方事務や融資事務の場合、営業店か本部かによって規模感が異なります。
- 「1日平均〇件の入出金処理」「オペレーションミスの撲滅(過誤ゼロ継続期間〇年)」
- 「新人行員への事務指導・検印業務」
コンプライアンス意識を「強み」に変える
近年、銀行業界の採用で極めて重視されているのが「コンプライアンス(法令遵守)意識」です。
実績をアピールする際、「強引に数字を作った」と思われないよう、以下のような記述を加えることで、銀行員としての品格と安全性をアピールできます。
- 「FD(フィデューシャリー・デューティー:顧客本位の業務運営)を徹底し、顧客のライフプランに即した提案を行うことで、解約率を支店平均の半分に抑えた」
- 「コンプライアンス遵守をチーム内で徹底し、事務事故ゼロを2年間継続した」
「稼ぐ力」と「守る力」の両立をアピールすることが、採用担当者に安心感を与えます。
異業界へ転職する場合の「翻訳」テクニック
銀行からメーカーやIT、コンサルティングファームなど異業界へ転職する場合、銀行用語(ジャーゴン)を一般的なビジネス用語に翻訳して記載する必要があります。
- 「渉外・RM」→「法人営業・コンサルティング営業」単なる御用聞きではなく、経営課題を解決する提案営業であることを強調します。
- 「稟議書作成」→「論理的思考力・ドキュメンテーション能力」複雑な情報を整理し、決裁者を説得する文書作成能力は、どの業界でも通用するポータブルスキルです。
- 「預金・為替業務」→「正確な事務処理能力・遂行力」1円のミスも許されない環境で業務を完遂する力は、管理部門などで高く評価されます。
自己PRで伝えるべき「信頼」の構築プロセス
フォーマットの最後にある自己PR欄では、数字以外の「人間力」を伝えます。
- 関係構築力「経営者と膝を突き合わせて対話し、潜在的な資金ニーズを引き出したエピソード」や「二世経営者との信頼関係構築」など。
- ストレス耐性・誠実さ「厳しい目標数値に対しても粘り強く行動管理を行い、達成に導いた」「クレーム対応において迅速かつ誠実に対応し、再取引につなげた」など。
銀行業界の職務経歴書は、あなたの「銀行員としての履歴」であると同時に、「信頼の証書」でもあります。
堅実なフォーマットを選び、実績の裏にある正確性と誠実さを伝えることで、採用担当者に「この人になら大切な業務を任せられる」と確信させる書類を作成してください。





