ゲーム業界の職務経歴書は「担当タイトル」が命。採用担当者が会いたくなるフォーマットと書き方
ゲーム業界の転職市場は、クリエイティビティと技術力の両方がシビアに問われる世界です。「ゲームが好き」という熱意だけでは、書類選考の壁は突破できません。
一般的なビジネス職向けの職務経歴書フォーマットを使っていませんか? それでは、ゲーム開発において最も重要な「どのタイトルの、どの部分を作ったか」という情報が埋もれてしまいます。採用担当者(プロデューサーやディレクター)が知りたいのは、具体的な開発実績と使用ツールです。
ここでは、プランナー、エンジニア、デザイナー(アーティスト)など、ゲーム業界を目指す方が選ぶべき最適なフォーマットと、書類選考を通過するための書き方の鉄則について解説します。
ゲーム業界に最適なのは「プロジェクト形式(キャリア式)」
ゲーム業界の職務経歴書において、時系列で会社名を並べるだけの「編年体式」は不向きです。ゲームクリエイターの評価は、在籍期間の長さではなく「携わった作品(プロジェクト)」で決まるからです。
そのため、タイトルごとに詳細を記述できる**「プロジェクト形式(キャリア式)」**のフォーマットを選ぶのが鉄則です。
職務経歴書のメイン部分を「開発実績一覧」として、タイトルごとにブロックを分けて記載します。Wordで作成するのが一般的ですが、ポートフォリオ(作品集)との連携を意識して、リンクを見やすく配置するレイアウトが好まれます。
採用担当者が必ずチェックする「5つの作品スペック」
採用担当者は、あなたが即戦力かどうかを判断するために、以下の5つの情報を必ずチェックします。これらが抜けていると、スキルの解像度が低いとみなされてしまいます。
1. タイトル名とジャンル
「RPG」「アクション」「ソーシャルゲーム」といったジャンルと、可能であれば具体的なタイトル名を記載します。
※守秘義務でタイトル名が出せない場合の対処法は後述します。
2. プラットフォーム
「PS5 / Switch」「iOS / Android」「Steam (PC)」など、どのハードウェア向けに開発したかを明記します。コンシューマー(家庭用)とスマホアプリでは開発フローが異なるため、必須の情報です。
3. 使用ツール・エンジン・言語
開発環境を詳細に記載します。
- エンジン:Unity, Unreal Engine 4/5, Cocos2d-x, 自社エンジン
- 言語:C#, C++, Python, JavaScript
- ツール:Photoshop, Maya, Blender, Git, Jenkins, JIRA, Slack
4. チーム規模と役割
「全体100名(うちプランナー10名)」のように規模感を数字で示し、その中で「リード」「メイン担当」「アシスタント」のどのポジションだったかを明確にします。
5. 具体的な担当箇所
「バトルシステムの仕様作成」「3Dキャラクターのモーション作成」「サーバーサイドのAPI実装」など、ゲームのどの部分を作ったかを具体的に書きます。「運営・運用」の場合は、イベント運用の頻度やKPI改善の実績も記載します。
【職種別】評価を上げる書き方のポイント
ゲームプランナー(企画)の場合
「論理性」と「数字」を強調します。
- 新規開発:「なぜその企画を通したか」というコンセプト立案の意図や、仕様書作成の正確さ。
- 運営:「DAUを110%向上させた施策」「課金率(ARPPU)改善のためのUI改修」など、KPIに基づいた改善実績。
ゲームエンジニア(プログラマー)の場合
「技術の深さ」と「最適化」を強調します。
- 使用した言語やエンジンのバージョンまで記載。
- 「描画負荷の軽減(60fps維持のための最適化)」「通信量の削減」「ビルド時間の短縮」など、技術的な課題解決エピソード。
デザイナー(2D/3D/UI/エフェクト)の場合
「表現の幅」と「ツールスキル」を強調します。
- 職務経歴書:使用できるツール(Maya, Spine, After Effectsなど)と担当アセットの量。
- ポートフォリオ:職務経歴書とは別に、必ずビジュアルで見せる作品集を用意し、URLを記載します。職務経歴書はあくまで「文字情報の補足」という位置づけになることも多いです。
タイトル名が出せない(NDA)場合の書き方
ゲーム業界では、リリース前のタイトルや、契約(NDA)によりタイトル名を公表できないケースが多々あります。その場合は、以下のように「規模」と「特徴」で表現します。
- NG:「某有名RPG」
- OK:「大手パブリッシャー向け ファンタジーRPG(コンシューマー・PS5向け)」
- OK:「IPもの育成シミュレーションゲーム(累計〇〇万DL規模)」
固有名詞を伏せつつ、採用担当者が「ああ、あのあたりのタイトルかな」と想像できるレベルの情報を(守秘義務に反しない範囲で)記載するのがテクニックです。
自己PRで伝えるべき「ゲーマー視点」と「クリエイター視点」
「ゲームが大好きです」というアピールは、業界では当たり前すぎて強みになりません。フォーマットの最後にある自己PR欄では、以下のように視座を高めて記述します。
- クリエイターとしての分析力「流行っているゲームをただ遊ぶのではなく、なぜヒットしているのか、UIの配置や課金導線を分析し、自社の企画に活かしている」
- コミュニケーション能力「職種の異なるエンジニアやデザイナーの間に入り、専門用語を翻訳しながら仕様を調整し、プロジェクトを円滑に進めた」
ポートフォリオへのリンクは「一等地」に
デザイナーはもちろん、プランナー(企画書)やエンジニア(GitHubや個人制作ゲーム)も、ポートフォリオがある場合は職務経歴書の**「氏名欄の直下」**など、目立つ場所にURLを記載してください。
クリック一つで作品に飛べるようにしておくことは、Web提出が基本のゲーム業界における最低限のマナーです。
ゲーム業界の職務経歴書は、あなたの「開発ログ」です。
プロジェクトごとに環境と担当箇所を詳細に記述できるフォーマットを選び、「何を作れるクリエイターなのか」を明確に伝えることで、希望するスタジオへの切符を掴み取ってください。





