在庫管理の職務経歴書ガイド!コスト意識と改善力をアピールする書き方
物流倉庫、小売店、製造現場など、あらゆる業界で発生する「在庫管理」の業務。転職活動において、この経験を単なる「数のカウント」や「入出荷作業」として伝えてしまうのは非常にもったいないことです。
企業にとって在庫とは「現金そのもの」であり、在庫管理の精度は会社の利益に直結する重要な経営課題です。そのため、職務経歴書において適切なアピールができれば、コスト感覚の鋭い実務家として高く評価されます。
ここでは、採用担当者の視点を踏まえ、在庫管理の経験を魅力的なスキルとして職務経歴書に落とし込むための書き方やポイントを解説します。
在庫管理経験が持つビジネス価値とは
職務経歴書を書く前に、ご自身の業務が持つ価値を再定義することが重要です。企業が在庫管理担当者に求めているのは、以下の3つの成果です。
- キャッシュフローの改善(過剰在庫の削減)
- 販売機会損失の防止(欠品の防止)
- 業務効率化とコスト削減(作業工数や廃棄ロスの削減)
単に「棚卸しをしていました」と書くのではなく、「在庫の精度を高めることで、会社の利益を守っていた」という視点で業務を振り返り、文章を構成することが書類選考通過の鍵となります。
採用担当者に響く3つの具体的アピール要素
具体的な書き方として、抽象的な表現を避け、客観的な事実と数字を用いることが鉄則です。以下の3つの要素を盛り込むように意識してください。
1. 扱っていた商材と規模感の数値化
まずは、どのような環境で管理を行っていたかを数字で示します。
- 商品点数(SKU数):約5,000点
- 在庫金額規模:月間平均約3,000万円
- 拠点規模:300坪の物流倉庫
- 1日の入出荷件数:平均500件
これらの数字があることで、採用担当者はあなたがどれくらいの情報量を処理していたか、その業務の複雑さを具体的にイメージできます。
2. 使用ツールと管理システム
Excelやシステムの使用経験は、即戦力性の証明になります。
- 管理手法:Excel(VLOOKUP関数、ピボットテーブルを使用したデータ集計)、Access
- 使用システム:自社基幹システム、WMS(倉庫管理システム)、SAP、勘定奉行など
- ハンディターミナルやバーコード管理の導入経験
特にExcelスキルは重宝されます。「マクロを組んで集計作業を自動化した」などの実績があれば、事務処理能力の高さとして強力なアピールになります。
3. 「改善(カイゼン)」の実績エピソード
ここが最も重要な差別化ポイントです。現状の課題に対して、どのようなアクションを起こし、どう結果が出たかを「Before・After」で記載します。
- 在庫差異の改善:棚番管理を徹底し、棚卸差異率を0.5%から0.01%へ改善した
- ロス削減:先入れ先出しのルールを徹底し、廃棄ロスを月間10万円削減した
- 作業効率化:ロケーション(商品の配置)を見直し、ピッキング時間を20%短縮した
職種・業界別の書き方テクニック
在庫管理と一口に言っても、業界によって重視されるポイントが異なります。応募先や経験した業界に合わせて強調するポイントを調整します。
物流・倉庫業界の場合
「正確性」と「スピード」が最優先されます。誤出荷ゼロの継続期間や、パート・アルバイトスタッフへの指導経験(マネジメント能力)、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)活動の推進経験などを中心に記載します。フォークリフト免許などの資格も忘れずに記載します。
小売・販売業界の場合
「適正在庫の維持」と「売上への貢献」がキーワードです。「発注精度の向上により欠品を防ぎ、売上昨対比110%に貢献した」や「デッドストック(滞留在庫)の早期発見と値引き販売の提案により、在庫回転率を向上させた」といった、攻めの在庫管理をアピールします。
製造・メーカーの場合
「生産計画との連動」や「部品調達」の視点が求められます。ジャストインタイム(必要なものを必要な時に必要なだけ)の考え方に基づき、資材の納期管理や、製造部門との調整業務をどのように円滑に進めたかを記述します。
職務経歴書の具体的記載例
実際に職務経歴書の「職務内容」欄に記載する際の例文を紹介します。
記載例:物流倉庫での在庫管理
【担当業務】
- アパレル商品の入出荷管理および在庫管理(約3,000SKU)
- パートスタッフ10名のシフト管理および作業指導
- WMS(倉庫管理システム)を使用した在庫データ照合
- 定期的な棚卸し業務の統括
【実績・取り組み】
- 誤出荷率の改善以前は月間10件程度の誤出荷が発生していましたが、バーコード検品のダブルチェック体制を導入し、マニュアルを作成・周知徹底しました。その結果、誤出荷を月間0〜1件にまで減少させ、顧客クレームの削減に貢献しました。
- 保管効率の向上商品の回転率(ABC分析)に基づき、高頻度商品を出し入れしやすいエリアへ配置変更(ロケーション管理)を行いました。これによりピッキング作業の動線が短縮され、作業時間を1日あたり約1時間削減しました。
自己PRで伝えるべき「管理能力」と「調整力」
最後に、自己PR欄ではスキルに加えて「仕事へのスタンス」を伝えます。
在庫管理は、営業、製造、経理など、多くの部署と関わる仕事です。「営業担当者と密に連携を取り、販売予測を聞き出すことで過剰発注を防いだ」といったエピソードは、コミュニケーション能力と調整力の高さを示します。
また、「数字のズレを見逃さない几帳面さ」や「常に効率的な方法を模索する探究心」も、在庫管理担当者としての適性を裏付ける重要な要素です。
在庫管理は、地味な作業の積み重ねに見えますが、企業の利益構造を支える要の業務です。あなたの経験が、いかに会社の「お金」と「時間」を大切にしてきたかという実績として職務経歴書に表現し、採用担当者にその価値を伝えてください。





