Webデザイナーの書類選考を突破する職務経歴書の書き方とアピール戦略

ポートフォリオだけでなく職務経歴書が合否を分ける重要な理由

Webデザイナーの転職活動において、自身の作品集であるポートフォリオが最重要視されることは言うまでもありません。しかし、採用担当者はポートフォリオだけで合否を決めているわけではありません。実は、職務経歴書の質が書類選考の通過率を大きく左右する重要な要素となっています。ポートフォリオがクリエイターとしての「技術力」や「センス」を可視化するものであるのに対し、職務経歴書はビジネスパーソンとしての「課題解決能力」や「プロジェクト推進力」、そして「コミュニケーション能力」を証明する書類だからです。

Webデザインの仕事は、単にきれいなグラフィックを作ることだけではありません。クライアントや自社の課題を理解し、それを解決するためのデザインを設計し、エンジニアやディレクターと連携して形にするプロセスが求められます。職務経歴書では、ポートフォリオに掲載されている作品がどのような背景で作られ、どのような意図を持ち、結果としてビジネスにどう貢献したかというストーリーを言語化して伝える必要があります。デザインスキルとビジネススキルの両輪をアピールして初めて、即戦力として信頼されるWebデザイナーとして評価されます。

制作実績はプロジェクトの規模と担当フェーズを詳細に記述する

Webデザイナーの職務経歴書でメインとなるのは、これまでに携わった制作実績の記述です。ここでは、単にサイト名やURLを載せるだけでなく、プロジェクトの全体像と自身の役割を詳細に記載することが重要です。採用担当者は、応募者が制作フローのどの部分を任せられる人材なのかを見極めようとしています。

記述する際は、まずサイトの種類（コーポレートサイト、ECサイト、LP、バナー広告など）とターゲット層、そしてプロジェクトの規模（ページ数、期間、チーム人数）を明記します。その上で、自身が担当したフェーズを具体的に記します。ヒアリングや要件定義といった上流工程から関わったのか、ワイヤーフレームの作成から担当したのか、あるいはデザインカンプの作成のみか、コーディング（HTML・CSS・JavaScript）まで実装したのかを明確にします。担当範囲を正確に伝えることで、採用後の配属や業務イメージとのミスマッチを防ぐことができます。ディレクション経験や、後輩の指導経験がある場合は、マネジメント能力として高く評価されるため、必ず記載するようにしてください。

使用ツールと技術スタックはバージョンまで正確に記載する

Web業界は技術の移り変わりが早いため、使用できるツールや言語に関する情報は、採用担当者が最も注目するポイントの一つです。職務経歴書には、使用可能なアプリケーション（Adobe Photoshop、Illustrator、XD、Figmaなど）や、コーディング言語（HTML5、CSS3、Sass、JavaScript、jQuery、PHPなど）、使用しているエディタやバージョン管理ツール（Gitなど）を網羅的に記載します。

この際、単にソフト名を書くだけでなく、使用歴や習熟度、そしてバージョンまで記載すると親切です。例えば、Photoshopであれば「実務使用5年、画像加工およびWebデザインカンプ作成が可能」といった具合です。また、使用しているOS（MacまたはWindows）についても触れておくと、環境適応能力の目安になります。さらに、WordPressなどのCMS構築経験や、ShopifyなどのECプラットフォームの使用経験がある場合は、強力なアピール材料になるため、カスタマイズのレベル感と合わせて記述してください。

デザインの意図とビジネス上の成果を数値でアピールする

Webデザイナーとしての価値を証明するためには、感覚的なデザインの良さだけでなく、客観的な成果を数値で示すことが効果的です。ビジネスにおけるデザインは、問題を解決するための手段です。そのため、制作したWebサイトやバナーがどのような結果をもたらしたかを記載することで、マーケティング視点を持ったデザイナーであることをアピールできます。

具体的には、コンバージョン率（CVR）の改善率、クリック率（CTR）の向上、ページビュー（PV）数や滞在時間の変化、売上の増加率などを数字で示します。もし詳細な数値が公開できない場合や分からない場合でも、クライアントからの評価や、制作によって解決した課題（例：問い合わせフォームの離脱率を改善するためにUIを見直した等）をプロセスとして記述します。デザインの意図を論理的に説明し、それが結果にどう結びついたかを語れることは、Webデザイナーとして非常に重要な資質です。

未経験からWebデザイナーを目指す場合のポータブルスキルの活かし方

異業種から未経験でWebデザイナーを目指す場合、実務での制作実績がないため、書き方に悩むことが多いでしょう。この場合、職業訓練校やスクール、独学で制作した架空のサイトや模写コーディングなどの作品をポートフォリオとしてまとめることは必須ですが、職務経歴書では前職で培った「ポータブルスキル（持ち運び可能なスキル）」をWebデザイナーの業務に変換してアピールします。

例えば、営業職や接客業の経験があれば、顧客の要望を汲み取るヒアリング能力や提案力としてアピールできます。事務職の経験があれば、正確な作業遂行能力やスケジュール管理能力が、コーディングや納期管理に活かせると伝えられます。また、学習意欲の高さも重要なポイントです。現在習得中のスキルや、自ら課題を設定してサイトを制作したプロセスなどを自己PR欄に記載し、未経験であっても早期に戦力になれる素地があることを熱意を持って伝えてください。

読みやすさとデザイン性を両立させたレイアウトでセンスを証明する

Webデザイナーの応募書類は、その書類自体のレイアウトや文字組みが、デザインセンスを測る最初のテストであると言っても過言ではありません。WordやExcelで作成する場合でも、余白の取り方、フォントの選び方、見出しのあしらい、情報のグルーピングなどに気を配り、読み手にとってストレスのない美しい書類を作成することが求められます。

ただし、過度な装飾は避けるべきです。職務経歴書はあくまでビジネス文書であり、情報の伝達が最優先されます。シンプルで見やすく、かつ洗練されたレイアウトを心がけることで、情報の整理整頓能力やユーザー視点（読み手への配慮）があることを証明できます。ポートフォリオへのリンクやQRコードを分かりやすい位置に配置するなど、採用担当者が次のアクションに移りやすい導線を設計することも、Webデザイナーらしい気配りの一つです。細部までこだわり抜いた職務経歴書で、あなたのプロフェッショナルとしての姿勢を伝えてください。

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人材会社で15年間、転職・中途採用市場における営業職・企画職・調査職の仕事を経験。
社団法人人材サービス産業協議会「転職賃金相場」研究会の元メンバー
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