図書館職員の転職を成功させる職務経歴書の書き方とアピール戦略
図書館の職務経歴書は専門性とサービスマインドのバランスが評価の鍵です
図書館での勤務経験は、司書資格に基づく専門的な知識と、多様な利用者に対応する高い接客スキルを併せ持つ貴重なキャリアです。しかし、一般的に図書館の仕事は本の貸し出しと返却をする静かな仕事というイメージを持たれがちであり、職務経歴書に単に図書館司書として勤務と書くだけでは、その業務の多忙さや専門性は十分に伝わりません。採用担当者は、応募者がどのような種類の図書館で、どの程度の規模の蔵書や利用者を相手に、どのようなサービスを提供してきたかを知りたいと考えています。
書類選考を通過するためには、職務経歴書を単なる業務リストにするのではなく、自身のスキルを証明するプレゼンテーション資料として活用する必要があります。レファレンス(調査相談)業務で培った検索能力や課題解決力、イベント企画による集客実績、あるいは正確な配架作業で培った体力と根気強さなど、具体的なエピソードと数値を盛り込むことで、即戦力としての価値を証明できます。ここでは、図書館職員ならではの職務経歴書の書き方と、採用担当者に響くアピールポイントについて解説します。
勤務していた図書館の種類と規模を数字で明確に記載する
職務経歴書を作成する際、最初に行うべきは前職の環境情報を正確に伝えることです。一口に図書館といっても、公共図書館、大学図書館、学校図書館、企業の専門図書館など、その種類によって求められる役割や利用者層は大きく異なります。まずは、勤務先の名称とともに、図書館の種類を明記します。
さらに、施設の規模感を伝えるために、蔵書数、1日の平均貸出冊数、1日の平均来館者数、職員数(司書有資格者の人数など)を具体的な数字で記載します。例えば、蔵書数30万冊、1日平均来館者数1000名の公共図書館にて、窓口業務および児童サービスを担当といった記述です。これらの数字があることで、採用担当者はあなたがどの程度の業務量をこなし、どのようなスピード感で仕事をしていたかを具体的にイメージできるようになります。また、指定管理者制度による民間企業への委託なのか、自治体直営なのかといった運営形態についても触れておくと、雇用関係や業務範囲がより明確になります。
レファレンスや選書業務で検索能力と専門知識をアピールする
図書館業務の中で最も専門性が問われるのが、レファレンスサービス(調査相談)と選書業務です。これらの経験がある場合は、職務経歴書の中心的なアピール材料として詳細に記述します。レファレンス業務であれば、単に質問に答えたというだけでなく、利用者の曖昧な質問から真のニーズを引き出すヒアリング能力や、データベースや参考図書を駆使して的確な情報にたどり着く検索スキルを強調します。解決した事例の件数や、利用者からの感謝の言葉などを添えると効果的です。
選書業務については、担当していた分野(児童書、一般書、専門書など)や予算規模を記載し、どのような基準で資料を選定していたかを説明します。地域の特性や利用者のリクエストを分析し、貸出実績の向上につなげたエピソードなどがあれば、マーケティング感覚や計数管理能力の証明になります。これらのスキルは、情報収集能力や分析力が求められる異業種への転職においても高く評価されるポータブルスキルです。
イベント企画や展示作成で企画力と発信力を証明する
近年の図書館では、利用者を増やすためのイベントや展示(特集コーナー作成)に力を入れています。おはなし会、映画会、館内ツアー、ビブリオバトルなどのイベントを企画・運営した経験は、企画力やプレゼンテーション能力、調整力の証明になります。職務経歴書では、企画の意図、集客数、参加者の反応などを具体的に記述します。
また、テーマ展示やPOP作成などの経験は、利用者の興味を惹きつけるための発信力やVMD(視覚的マーチャンダイジング)のスキルとしてアピールできます。手書きのPOP作成が得意であれば、その旨を記載することで、書店や小売業などへの転職でも有利に働きます。静かに待っているだけでなく、能動的に利用者へ働きかけ、図書館の活性化に貢献してきた姿勢を示すことが大切です。
雇用形態に関わらず責任感を持って業務を遂行した姿勢を示す
図書館業界では、非常勤職員(会計年度任用職員)や派遣社員、委託スタッフなど、非正規雇用のスタッフが多く活躍しています。正職員を目指す転職活動において、これらの雇用形態を引け目に感じる必要はありません。職務経歴書には雇用形態を正確に記載した上で、雇用形態に関わらず責任ある業務を任されていたことを強調します。
例えば、非常勤職員であってもカウンターリーダーを任されていたり、特定のコレクション管理を一人で担当していたりした場合は、その実績を大きく記載します。また、開館から閉館までの鍵開け・施錠管理や、金銭管理(コピー機や延滞金など)を行っていた経験は、高い信頼性と責任感の証拠となります。どのような立場であっても、プロ意識を持って図書館運営を支えてきた事実を伝えることが、採用担当者の信頼獲得につながります。
異業種へ転職する場合の図書館スキルの翻訳テクニック
図書館から事務職や営業職、IT業界など、全く異なる業界へ転職を目指す場合でも、図書館での経験は強力な武器になります。この場合、図書館専門用語を一般的なビジネススキルに翻訳して伝える意識が重要です。例えば、レファレンスサービスは高い課題解決能力やリサーチ能力と言い換えることができます。カウンターでの利用者対応は、老若男女問わず対応できるコミュニケーション能力や接遇スキルとしてアピールできます。
また、膨大な資料を分類・整理する配架や書架整理の業務は、正確な事務処理能力や整理整頓スキル、そして体力や根気強さの証明になります。職務経歴書の自己PR欄などで、図書館で培った、膨大な情報の中から必要なものを迅速に見つけ出す検索能力と、利用者一人ひとりに寄り添うホスピタリティは、御社のカスタマーサポート業務においても貢献できると確信していますといったように、過去の経験を未来の業務に接続させる表現を工夫します。図書館員として培った知見とサービス精神は、自信を持って語れる立派なキャリアです。その価値を正しく言語化し、書類選考を突破してください。





