障害者雇用の書類選考を突破する職務経歴書の書き方と配慮事項の伝え方
障害者雇用における職務経歴書の役割と重要性
障害者枠での転職活動において、職務経歴書は自身のスキルや経験をアピールするだけでなく、障害の特性や必要な配慮を企業側に正しく伝えるための極めて重要なツールです。一般枠の採用とは異なり、採用担当者は応募者がどのような業務遂行能力を持っているかに加えて、自社の環境で安定して就業できるか、どのようなサポートがあれば力を発揮できるかという点を慎重に判断します。
そのため、職務経歴書を作成する際には、単に過去の職歴を羅列するのではなく、自身の障害特性を客観的に理解し、それを言語化する能力が求められます。自分ができること、できないこと、そして配慮があればできることを明確に区分し、企業側が受け入れ体制をイメージしやすいように情報を整理して提示することが、書類選考を突破するための第一歩となります。ここでは、障害者雇用ならではの視点を取り入れた職務経歴書の書き方と、採用担当者に安心感を与えるアピール術について解説します。
障害の内容と就業上の配慮事項を専用項目で記載する
一般的な職務経歴書と障害者雇用用の職務経歴書の最大の違いは、障害に関する情報の記載が必要であるという点です。職務経歴書の中に障害特性と就業上の配慮事項という専用の項目を設け、詳細を記述することをお勧めします。ここでは、単に病名や障害者手帳の等級を書くだけでは不十分です。その障害が業務や職場生活において具体的にどのような影響を与える可能性があるのか、そしてどのような配慮があれば支障なく業務を行えるのかを、ビジネスライクな表現で説明する必要があります。
例えば、聴覚障害がある場合は、電話応対が難しいことや、口頭での指示に加えて筆談やメールでの指示があればスムーズに業務が可能であることを記載します。精神障害の場合は、服薬管理ができていることや、定期的な通院が必要であること、業務量や対人関係においてストレスを感じやすい状況などを具体的に伝えます。ここで重要なのは、配慮を求めることはわがままではなく、安定して長く働くために必要な環境調整であるというスタンスで書くことです。企業側も具体的な要望がわかれば、対応可能かどうかを検討しやすくなり、ミスマッチを防ぐことができます。
自身の障害受容とセルフマネジメント能力をアピールする
採用担当者が障害者雇用において最も懸念するのは、体調の安定性と勤怠の維持です。そのため、自身の障害を正しく理解し、適切に対処できるセルフマネジメント能力があることをアピールすることは非常に有効です。体調が悪化しそうな時のサインを把握しているか、その際にどのような対処を行っているか、医師との連携は取れているかなどを記述します。
例えば、疲労が溜まった際には早めに休憩を取ることで回復できる、あるいは服薬と睡眠管理を徹底することで〇年間安定して就労しているといった実績を記載します。自身の状態を客観的にモニタリングし、コントロールできる能力を示せれば、企業側は安心して業務を任せることができます。障害があることを隠したり過小評価したりせず、また過度に悲観的になることもなく、事実に基づいて自身の取扱説明書を提示するような意識で作成することが大切です。
職歴の空白期間は回復と準備の期間としてポジティブに説明する
障害や病気の治療のために、職歴にブランク(空白期間)が生じている方も少なくありません。この空白期間を履歴書や職務経歴書でどのように扱うかは悩みどころですが、基本的には隠さずに記載し、その期間をどのように過ごし、現在はいかに就労可能な状態まで回復したかを説明することが重要です。
単に療養していたと書くだけでなく、主治医と相談しながら生活リズムを整えたことや、就労移行支援事業所に通ってビジネスマナーやPCスキルを習得したことなど、復職に向けた具体的な取り組みを記述します。空白期間はマイナス要素ではなく、働くための土台を固めるために必要な準備期間であったと定義づけることで、就労意欲の高さをアピールできます。現在は週5日のフルタイム勤務が可能である、あるいは医師から就労許可が出ているといった客観的な事実を添えることで、採用担当者の不安を払拭することができます。
できること(Can)に焦点を当てた自己PRを作成する
配慮事項を伝えることは重要ですが、職務経歴書の本来の目的は、自身の能力を売り込むことにあります。障害によってできないことばかりを強調してしまうと、戦力としての魅力が伝わりません。配慮事項を記載した後は、配慮があればできること、そして自身の強みや得意分野に焦点を当てた自己PRを展開します。
事務職希望であれば正確なデータ入力や文書作成能力、集中力の高さをアピールし、軽作業希望であれば手先の器用さや手順を遵守する真面目さを強調します。過去の職歴で培った経験やスキルは、障害の有無に関わらず評価されるべき資産です。障害を負う前の経験であっても、現在の業務に活かせる知識やノウハウがあれば積極的に記載します。また、障害と向き合う中で培った忍耐力や、相手の立場に立って考える力なども、立派なポータブルスキルとしてアピール材料になります。
支援機関の利用状況を記載してサポート体制があることを伝える
障害者雇用においては、就労移行支援事業所や障害者就業・生活支援センターなどの支援機関を利用しているかどうかも、企業にとっては安心材料の一つになります。もし支援機関を利用している場合は、職務経歴書や備考欄にその旨を記載し、定着支援(就職後のフォローアップ)を受けられる体制が整っていることを伝えます。
企業側だけで全てのサポートを行うことは難しいため、外部の専門家によるバックアップがあることは、採用のハードルを下げる要因となります。支援担当者と連携が取れていることや、困ったときに相談できる相手がいることを示すことで、職場定着の可能性が高い人材であると判断されやすくなります。支援機関の担当者と相談しながら職務経歴書を作成し、第三者の視点を取り入れることも、完成度を高めるための有効な手段です。
読みやすさと正確さで実務能力を証明する
最後に、職務経歴書自体の見た目にも配慮が必要です。障害の特性によっては、文章を書くことやレイアウトを整えることが苦手な場合もあるかもしれませんが、パソコン作成ツールや支援者のサポートを活用して、読みやすく整った書類を作成することを心がけます。誤字脱字がなく、情報が整理された職務経歴書は、それだけで基本的なPCスキルや事務処理能力、相手への配慮ができることの証明になります。
障害者雇用の職務経歴書は、自分の障害を開示し、必要な配慮を求め、その上で戦力として貢献したいという意思を伝えるための手紙のようなものです。企業側が知りたい情報を過不足なく、誠実に伝えることで、相互理解に基づいた良いマッチングを実現することができます。自信を持って自身のキャリアと可能性を書き記し、書類選考を突破してください。





