業務委託(フリーランス)の期間を武器にする職務経歴書の書き方
フリーランスや個人事業主として業務委託契約で働いていた期間は、会社員とは異なる「プロフェッショナルとしての実力」を証明する絶好の材料です。しかし、書き方を間違えると「職歴が安定しない」「組織に馴染めないのではないか」といった懸念を抱かれるリスクもあります。
業務委託での経験を効果的にアピールし、企業の即戦力として評価されるための職務経歴書の書き方と、正社員への転職時にも有効なテクニックを解説します。
業務委託契約は「立派なキャリア」として堂々と書く
まず大前提として、業務委託での活動期間は空白期間ではありません。自らの腕一本で仕事を受注し、成果を出してきた経験は、ビジネスパーソンとしての逞しさや専門性の高さを裏付けるものです。
職務経歴書においては、正社員の経歴と同様、あるいはそれ以上に詳細に記載する必要があります。遠慮して簡素に書くのではなく、担当したプロジェクトの規模や、クライアントからの評価を具体的に記すことで、実務能力の高さをアピールしてください。
雇用形態の記載方法と注意点
会社員時代の経歴と区別がつくよう、雇用形態を明確に記載します。
履歴書や職務経歴書の社名欄(または屋号欄)の横に、以下のように記載するのが一般的です。
- 記載例1(特定の企業と契約していた場合):株式会社〇〇(雇用形態:業務委託契約)
- 記載例2(個人事業主として複数の案件を受けていた場合):個人事業主として開業(屋号:〇〇デザイン)
このように明記することで、採用担当者は「この期間は自律的に動いていたのだな」と前提条件を理解して読み進めることができます。
プロジェクト単位でまとめる「キャリア式」での構成
業務委託の場合、短期間の案件や複数のクライアントを同時並行で担当することが多いため、時系列(編年体式)で書くと情報が細切れになり、読みづらくなる傾向があります。
そのため、業務委託の期間については「プロジェクト単位」や「業務内容単位」でまとめる「キャリア式(プロジェクト形式)」の構成をおすすめします。
案件をカテゴライズして見やすくする
例えば、Webデザイナーであれば「ECサイト制作案件」「コーポレートサイト・リニューアル案件」「バナー・LP制作案件」といったカテゴリを設け、その中に代表的な実績を記載します。これにより、読み手はあなたの得意分野やスキルの幅を一目で把握できます。
具体的な記載項目
各プロジェクトについては、以下の要素を盛り込みます。
- プロジェクト名・期間: 〇〇社向け顧客管理システム開発(2023年4月~2023年10月)
- クライアントの業種・規模: 大手通信事業会社(従業員数約1,000名)
- 担当業務・役割: 要件定義から実装までを単独で担当、またはチームリーダーとして3名を管理
- 使用ツール・言語: Photoshop, Illustrator, HTML, CSS, JavaScriptなど
- 成果・実績: サイトへの流入数が前年比150%アップ、納期を2週間短縮して納品など
守秘義務(NDA)に配慮したクライアント名の書き方
業務委託契約では、秘密保持契約(NDA)を結んでいるケースが多く、職務経歴書であっても具体的な社名やプロジェクト名を公開できない場合があります。
その際は、具体的な社名は伏せつつ、プロジェクトの規模感や重要性が伝わる書き方を工夫します。
- 書き換えの例:
- 「株式会社〇〇」→「東証プライム上場の大手総合商社」
- 「〇〇アプリの開発」→「月間100万PVを有するニュースアプリのUI改修」
このように、社名を出さずとも「どのレベルの仕事を任されていたか」が伝わる表現を選んでください。
「即戦力」と「組織適応力」の2つをアピールする
業務委託経験者が正社員への転職を目指す場合、採用担当者は「スキルはあるだろうが、チームワークは大丈夫か?」「上司の指示に従えるか?」という点を懸念します。この不安を払拭する書き方が重要です。
専門スキルと納品責任(即戦力)
まずは、プロとして納期を守り、期待以上の成果を出してきた実績を数字で示します。「リピート率〇%」「契約継続期間〇年」といった数字は、クライアントからの信頼の証であり、即戦力としての説得力を強めます。
協調性とコミュニケーション(組織適応力)
ここが差別化のポイントです。一人で作業を完結させるだけでなく、クライアントの担当者や、他のフリーランス、社内スタッフと円滑に連携したエピソードを盛り込みます。
「週1回の定例ミーティングを主導した」「チャットツールを用いて密に報告・連絡・相談を行い、認識のズレを防いだ」など、組織の一員としても問題なく機能することをアピールしてください。
自己PRで伝えるべき「経営者視点」
業務委託の経験を通じて得られる最大の強みは、「経営者視点」や「コスト意識」です。会社員のように与えられた仕事をするだけでなく、自ら仕事を取り、経費を管理し、利益を出してきた経験は貴重です。
自己PRでは、以下のような「個人事業主マインド」を企業への貢献意欲に変換して伝えます。
- コスト意識: 自分の時間単価を意識し、効率的に業務を遂行する習慣がある。
- 交渉力: 契約内容や報酬、納期について、相手とWin-Winになるよう交渉できる。
- 自律性: 管理されなくても、自ら課題を見つけ、スケジュールを管理して完遂できる。
業務委託の期間は、決して「組織から離れていた期間」ではなく、「個の力を高めていた期間」です。その経験を自信を持って伝え、今度はその力を組織のために活かしたいという熱意を職務経歴書に込めてください。





