意匠設計の転職で採用を勝ち取るポートフォリオ作成の戦略と構成術
意匠設計者としての思考プロセスとデザインセンスを視覚的に証明する
意匠設計の転職活動においてポートフォリオは職務経歴書以上に合否を左右する極めて重要なツールです。採用担当者がポートフォリオを通じて見極めようとしているのは単なる完成した建物の美しさだけではありません。そのデザインに至るまでにどのような課題を発見しどのようなコンセプトを立案しそれをどう形に落とし込んだかという思考のプロセスそのものです。そのためポートフォリオには完成写真やパースだけでなく初期段階のエスキスやスタディ模型の写真そしてアイデアの変遷を示すダイアグラムなどを積極的に盛り込んで下さい。論理的な思考に基づいてデザインを導き出す能力があることを示すことで感性だけでなく実務的な課題解決能力も兼ね備えた設計者であることをアピールできます。
綺麗な写真だけでなく実施図面やディテールで実務能力をアピールする
多くの応募者が陥りがちな失敗としてポートフォリオが単なる美しい写真集になってしまっているケースが挙げられます。意匠設計の現場では美しいパースを描くこと以上に法的な整合性の取れた図面を作成し現場で施工可能な詳細図を描く能力が求められます。そのため実務経験者のポートフォリオには平面図や断面図だけでなく矩計図や階段詳細図といった実施設計レベルの図面を必ず掲載して下さい。また自分でこだわった納まりや素材の選定理由などを文章で補足することでデザインを実現するための技術的な裏付けがあることを証明します。図面の密度と正確さは即戦力としての評価に直結するためCADやBIMのスキルを示す意味でも質の高い図面を見せることは不可欠です。
チームプロジェクトにおける自分の役割と貢献度を明確に記述する
組織設計事務所やゼネコンの設計部などでの経験がある場合掲載するプロジェクトの多くはチームで取り組んだものになります。この際そのプロジェクトの全てを自分が設計したかのように見せてしまうと面接で詳しく突っ込まれた際に答えられず不信感を与える原因となります。重要なのはそのプロジェクトにおいて自分がどのフェーズを担当しどのような役割を果たしたのかを正直かつ具体的に記述することです。基本設計のボリュームスタディを担当したのか実施設計での法規チェックを主導したのかあるいは現場監理で施工者との調整を行ったのかといった詳細を明記して下さい。チームの中での立ち回りや貢献度を正確に伝えることは組織の一員として協調性を持って働ける人材であるという評価につながります。
読み手の視点に立ったレイアウトでプレゼンテーション能力を示す
ポートフォリオのレイアウトや構成そのものが設計者としてのプレゼンテーション能力の証明となります。情報が整理されておらず文字が読みづらいポートフォリオは相手に伝える配慮が欠けていると判断されマイナス評価となります。採用担当者は多忙な業務の合間を縫って多くの応募書類に目を通すため一目で要点が伝わるような視認性の高いレイアウトを心がけて下さい。余白の取り方やフォントの選び方そして写真と図面の配置バランスなど細部にまで気を配り独自の美意識を表現します。また目次を作成したりプロジェクトごとに概要をまとめたりすることで読み手がストレスなく情報を取得できるように工夫することはクライアントに対しても分かりやすい資料を作成できる能力があるという信頼感につながります。
応募する事務所の特性に合わせて作品の選定と順序を最適化する
意匠設計事務所と一口に言っても作家性を重視するアトリエ系から組織力と効率を重視する大手組織設計事務所までそのカラーは千差万別です。全ての応募先に同じポートフォリオを使い回すのではなく応募する企業の特性に合わせて掲載する作品の選定や掲載順序をカスタマイズすることが戦略として有効です。デザイン重視の事務所であればコンペ案や個人的な作品を冒頭に配置して個性を強調し実務重視の事務所であれば大規模案件の実績や技術的な図面を厚くして即戦力性をアピールします。相手が何を求めているかをリサーチしそれに呼応する形でポートフォリオを最適化することでこの人は自社にマッチする人材だと直感させることができます。
デジタルデータと紙媒体の特性を理解し両方の形式を準備する
近年の転職活動では応募段階でPDF形式のポートフォリオを提出し面接時に紙のポートフォリオを持参するという流れが一般的です。デジタルデータの場合はメールで送付可能なファイルサイズに圧縮しつつも図面の線が潰れないような画質調整が必要となります。また閲覧環境によって色味が変わる可能性も考慮して下さい。一方で紙のポートフォリオは紙質の選び方や製本の方法でこだわりを表現できるため面接の場での会話のきっかけ作りにもなります。見開きで見せる際の迫力や手触りなど紙ならではの特性を活かしたプレゼンテーションを行うことでデジタルだけでは伝わらない熱意や物質への感性をアピールして下さい。状況に応じて適切な形式で自分を売り込める準備をしておくことが内定への近道となります。





